クリスマスに降る雪……其の1
剛、本日も買い物中!
剛は今日も買い物をしている。暦は12月の半ば、冬の真っ只中である。
「寒いと、コーヒーが美味いんだよな〜!」
剛はお気に入りのコーヒーが手に入ったらしく、ニコニコしながら買い物を続けている。更に、お気に入りのバームクーヘンも手に入り、更に剛はニコニコである。
事務所に戻ろうとすると、1人の男とぶつかった。
「あ、すいません」
「いや、こっちこそ」
ぶつかった男、表情が冴えない。着ている物からすると、お金は有ると思われる。それでも、その表情はかなり優れない。不幸のど真ん中といった感じである。
「あの〜……悩み事でも?」
「いや、そんな事は……」
「多分ですけど、力になれると思いますよ?」
「……まさか…そんな……」
「その言い方だと、何か有るんですね?」
「………………………………」
「悪い様にはしません。1度、事務所に行きませんか?」
「事務所?…探偵か何か?」
「いえ、もっと便利な物です。責任者は厄介な奴ですけどね」
「……騙されてないですよね?」
「それは約束します」
剛はこの男を連れて、事務所に戻った。
事務所に着いた2人、
「解決屋?……不思議な職業だね?」
「ええ、仕事の仕方も不思議ですけどね!」
「……大丈夫なの?」
「まぁ、それは保証しますよ」
剛はこの男を中に入れた。
「は〜……今度は亡くなった彼女との約束かよ〜……」
「ど、どうしてそれを……」
「雪が降るクリスマスに、一緒に教会で誓いを立てたいんだろ?……しかし、その彼女は今年の始めに死んだ。病気で仕方ねぇんだが、タイミングが悪い事に今年のクリスマスは雪が降るんだよな?」
「……………………………」
「どう?何とかなりそうでしょ?」
「分かったからって……」
「それで、今年のクリスマスに彼女と会えれば満足なのか?」
「会えるんですか?」
「出来なくも無いが……お前、それで終われるのか?」
「……どういう……」
「会えたとして、その先は無いぞ。それは守れるのか?このまま一緒に、何て事は考えねぇと約束出来るのか?」
「それは……会ってみないと……」
「剛、お引き取り願え!」
「おい守人、少し酷いんじゃねぇの?」
「酷い?……それは、その彼女の方が辛いんだぞ?」
「意味が分からんぞ?」
「お前はいいや。それより森野司、お前は彼女の為に、どんなに辛かろうとしっかりと別れの挨拶が出来るのか?」
「それが……彼女の為なんですか?」
「そうだ。どうなんだ?」
「……彼女が望むなら、俺はそれに従います」
「守らなかったら、そのまま地獄に行くぞ?」
「はい、結構です」
「……しょうがない。剛、報酬の説明」
「お、おう。報酬はお金以外で、その価値で守人が決める」
「……このブレスレットとネックレスでどうかな?……それなりに、価値は有ると思うんだ」
「……特注品か。よし、交渉成立だ。後はこちらに任せて頂こう」
「では、お願いします……1つだけ、どうして俺の名前が……」
「企業秘密だ。では、クリスマスに丘の上の教会で……20時といった所かな?」
「……期待しています。では……」
司は頭を下げて、事務所から出て行った。
「守人、どうして彼女が辛いんだ?」
「彼女は知ってんのさ。自分が死ぬ事をな……だから、そんな人とずっと一緒なんて……彼女が司を心配しちまうだろ?……振り切る為の依頼という事さ」
「……やけに詳しいな?」
「おう、お節介な死神がな……」
「あ〜、成る程!……あの死神ね〜、有り得るな」
「さて、過去に行くぞ」
「おう、何にしても解決しねぇとな!」
2人は地下室に向かった。
地下室から出て来る2人、現代から数年前といった所だろうか。
「何年前なんだ?」
「3年前」
「……どうしてここに?」
「病院に行けば分かるさ。確か〜……回生病院だったんだけど〜……有った、ここだ。入るぞ」
「お、おう……司さんの彼女が居るのか?」
「ああ、葵茜が居る。丁度、検査も終わった所の筈だ」
守人と剛は中に入って行った。
病院の待合室に入ると、奥の方に暗い雰囲気を出した女性が居た。
「葵茜さんだね?」
「??……あなた達は?」
「俺は守人、こっちは剛。3年後の司の知り合いさ」
「3年後?……言ってる意味が分かんないんだけど?」
「平たく言うと、未来から来たのさ」
「……馬鹿にしてます?それとも、頭おかしいんですか?」
「分かり易い言葉だったと思うんだけどな〜……剛、どう?」
「いきなり過ぎんだよ!……まずは、どうしてこうなったかをだな……」
「それ、酷じゃないか?」
「……だな……どうする?」
「あの、いいなら帰るんで、退いてくれますか?」
「良くは無い。まぁまぁ、その辺でお茶でもしながら話をしよう」
「軟派ですか?私、彼氏居ますので!」
「軟派なら、もっと気楽に出来るよ。難しいんだよな〜……」
「こう考えると、池本さんは物分かりが良かったな?」
「確かに〜!」
「池本さんて誰ですか?警察呼びますよ?」
「分かった、しょうがない……飯でも奢るから、話だけでもしよう。剛がぜ〜んぶ奢るからさ!」
「……変な事、しませんか?」
「しませんしません。な、剛?」
「……質問なんだが、どうして俺が奢るんだ?」
「それは……成り行きだ」
「お前が奢れはいいだろ?」
「お前が好きに買い物したから、降ろさないと無いんだよ!」
「あの〜……行くんですか?行かないんですか?」
「「勿論行く!」」
結局、剛の奢りで食事に行く事になった。さて、どんな解決を見るのやら。
色々な方が居ます。




