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俺が居ない俺の町……  作者: 澤田慶次
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解決してはいけない依頼……其の5

厄介な仕事も、やっと解決へ……

守人と剛、地下室から出て来た。先程、純也がスパーリングをした時代と殆ど変わらない時期である。あのスパーリングが終わった後といった所だろうか。

「守人、甲斐拳人は何処に居るんだ?」

「西田拳闘会だろうが……1人で居るといいんだけどな~……」

「……会長って、あの馬鹿か?」

「おう、あの馬鹿だ」

「か~……何でレジェンドが、あの馬鹿の元で……」

「世界七不思議の1つだよな?」

「本当にそうだよ~!カレーのおっさんだぜ?」

「……運だけは、人外なのかもな?」

「あ~……有り得るな……」

2人は西田会長の文句を言いながら、西田拳闘会を目指した。


ジムに着いた2人、鍵は開いている。

「あの~……」

「入会希望?」

「あ、甲斐拳人!」

「剛~……」

「……さん……」

「……入会じゃないの?」

「……何だか、活気が無くないか?」

「本当に、レジェンド甲斐なのかな?」

「あのさ~、レジェンドだの何だのと、俺は頼んでないんだが?」

「……池本さんが、心配する筈だよな~……」

「待て!何でお前等が池本さんを知ってんだよ?」

「……今のこいつには、話したくないな~……」

「剛、大正解!今のこいつじゃ、池本さんもがっかりだよな?」

「だからさ!池本さんを何で知ってんだよ!」

「会ったからに決まってんだろ?」

「それで、頼まれた事をやりに来たの!」

「会ったって……嘘は辞めろよ、笑えねぇぞ?」

「……本当に、池本さんが弟の様に思ってた男なのか?」

「……俺も、自信失くすな……ダメな親父だもんな?」

「……馬鹿にしてるのか?ダメたの何だのと、池本さんに会ったなんて言い出すし……」

「……とりあえず、これを見ろよ」

「こっちもな」

守人と剛、バッグから純也から貰ったベルトを出した。

「……世界チャンピオンのベルトか?……珍しくもねぇ……」

「そりゃあさ、あんたは10本以上持ってるもんな?……でも、良く見てみろよ」

「……いくら見ても……」

拳人の目が止まった。WBAのチャンピオンベルト、明らかに何かで引っ掛けた様な傷が有る。

「これ……俺が付けた傷……」

「やっと分かった?」

「……池本さん、失くしたって言ってたけど……お前等が盗んだのか?」

「何でそうなるんだよ?」

「西田菌に侵食されてんじゃねぇの?」

「……じゃあ、これどうしたんだ?」

「貰ったんだよ」

「本人にさ、仕事の依頼料として」

「……どんな依頼だ?」

「甲斐拳人に、俺が死んだくらいで人生を狂わせるなと伝えて欲しいってさ」

「まさか……いくら何でも……」

「守人、もう1度確認するが……本当に池本さんが、弟の様に思ってた男なんだろうな?」

「……間違いかもな?……見た物を信じねぇんだもんな~……」

「……池本さんは、信じたのか?」

「そりゃあ勿論!あの人は、西田級の馬鹿じゃなかったら、本当の事を言ってると言ってくれた。ありのままをそのままに、受け入れてくれたよ」

「自分の死さえ、受け入れて真っ直ぐに進む決意をしてた」

「……自分の死?……池本さんは、知ってたってのか?」

「細かくは知らないが、この時代に自分が居ない事は分かってた。その上で、自分らしく自分を貫く事にしたみたいだった……誰にも真似出来ない、凄い男だった……」

「育て甲斐の有る2人を育てると言ってたっけ……お前と佐伯昴の事じゃないのか?……育てて貰って、恩を返さないのか?」

「池本さんの愛したボクシング、あんたが引っ張るんじゃないのか?」

「……お前等は知らねぇんだよ……ボクシングなんてやらなければ……池本さんは死なずに済んだんだ……俺を庇わなければ……」

「それだけ、あんたが池本さんには大事だったんだろ?……そもそも、ボクシングが無ければ今のあんたも池本さんも居ねぇ……それくらい、分かってるんだろ?」

「現実を受け止め、真っ直ぐ進むんじゃねぇの?」

「………………………………」

「これじゃあ……池本さんも浮かばれねぇや……」

「……好き勝手言いやがって……ちょ~っと休んでただけじゃねぇか?大体だな、池本さんに心配されなくても、俺は1人で大丈夫なんだよ!」

「へ~、隼人の責任放棄してるくせに?」

「馬鹿だな~、ライオンは、自分の子供を千尋の谷に落として這い上がって来た者だけを育てるんだ!隼人はこれから、しっかりと俺が育てる!」

「言ったな~?知ってるか?言った言葉は飲み込めないんだぜ?」

「飲み込まないよな~?」

「飲み込む訳ねぇだろ!俺は池本純也の弟だ!」

「……それを聞いて安心した」

「池本さんの分も、お願いします」

守人と剛、頭を下げてから西田拳闘会を後にした。

この日の夜、拳人は隼人と話をした。それは、自分のこれまでのボクシング人生と兄と言える存在の男の話である。そして、改めて世界チャンピオンを目指し、自分を超えて欲しい事を隼人に伝えた。


現代に戻った2人、事務所に戻った。

剛はコーヒーを入れ、守人はパソコンを開いてインターネットで隼人の事を調べた。剛がコーヒーを守人の所に置く。

「剛、これ」

守人はパソコンの画面を剛に向けた。


親子鷹、甲斐隼人と甲斐拳人!

親子2世代で世界チャンピオンなるか!


甲斐拳人といえば、3階級を制覇した無敗のボクサーであり、日本が誇る最高傑作のボクサーとの呼び声も高い。

そんな拳人が、その才能に惚れ込んだのが子供の甲斐隼人である。父親譲りの強打と父親に無い当て勘を持ち合わせ、遂に世界初挑戦となる。偉大なる父親を超える最初の一歩、見事勝利で飾る事が出来るのか?

遂に明後日、11/7に運命のゴングが鳴る!


「……絶対勝つな!」

「ああ、負けねぇな!」

「あれだけ仲が悪かったのに……」

「変われば変わるもんさ……」

「……そういえば、金メダルは?」

「俺の手元から消えたよ」

「……あのメダルは、あの親子の所が良く似合うからな……」

「解決したのは池本さんだし、後は勝手にやってる結果……俺達は関係無い……池本さんから貰ったベルトも有るしな!」

「……宝物だよな~!」

「おう、流石に売る訳にはいかねぇな?」

「当たり前だ!お前は金にがめつ過ぎるんだよ!」

「一攫千金を目指すお前に、言われたかねぇな?」

いつもの日常である。今回の依頼、守人と剛が解決してはいけない物であった。もしかしたら、この事を1番理解していたのは、池本純也だったのかもしれない。

熱い男達でした……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 熱い親子ですよね! 隼人がどう成長していくか、これはじっくりとみたいですね! 池本魂、確実に拳と共に受け継いでほしいです。
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