解決法は前代未聞!……其の3
色々と分かって来ました。
剛は守人の後に着いて行く。
「こっちで合ってんの?」
「多分……こっちだったと……あ、あそこあそこ」
守人は走り出し、剛も釣られて走り出した。着いた所は、とあるアパートである。
「ここか?」
「静かに……」
物陰に隠れ、剛は守人の指差す方を見る。そこには、剛が助けた女性がスーツを着た男の人から封筒を受け取っていた。剛はスマホを構え、それをしっかりと撮影した。
「……言葉が聞こえないな……」
「それはしょうがない……お?話は終わったみたいだな……剛、ここで待ってろよ」
守人はスーツの男が帰るのを確認すると、物陰から出て女性の部屋のインターフォンを鳴らす。剛は気になり、見付からない様に守人の言葉が聞こえる場所に移動した。
[ピンポーン]
「は~い」
「すいません、私は戸張と言う者なんですが……」
「はい、お待ち下さい」
アパートのドアが開く。
「どの様なご用件で?」
「はい、さっきのスーツの男……」
「あ、あれは……お知り合いですか?」
「少し……余り良い噂を聞かない男だった物ですから……差し支えが無ければ、どんな用事だったかを教えて頂けると……」
「そうですか……大した事は無いです。前に住んでいた人の事を……」
「前に住んでいた人ですか……成る程、それで厚みの有る封筒を受け取るんですね?」
「……何を見たか知りませんが、そんな物は受け取ってません!」
「構いませんけど、それで1人のお人好しの人生が狂うかもしれないですよ?」
「お人好しじゃ、この世の中は生きていけません!」
「……あなたの言い分は分かりました。ありがとうございました。1つだけ……この先、あなたが困った時に助けてくれる人が欲しいなら、それはあなたが誠実に生きないと現れません。どうか、誠実に生きて下さい」
守人は頭を下げて、その場を離れた。女性は怪訝な表情を浮かべ、アパートのドアを閉めた。
守人は真っ直ぐに剛の所に来た。
「なぁ、剛……」
「待て待て待て、何で俺の居場所が分かるんだ?」
「お前は単純だからな。それでな……」
「答えになってないだろ?」
「……場所を変えよう、公園に行くぞ」
「おう、そうだな」
2人は公園に場所を移した。
途中でジュースを買った2人、公園のベンチに座りジュースを飲み始めた。
「守人、どうして俺の行動が分かるんだ?」
「さっきも言っただろ?お前は単純なの!」
「納得出来ないぞ?」
「そのうち分かる。それよりだが、あの女性だが……」
「そうだ、戸張って誰だよ?」
「そこ?……偽名を使う時の1人……あの女性だが、どうしたい?」
「そうだな~……俺は間違った事はしてないけど……どうして裏切ったのかな?……多分だけど、あの封筒は金だろ?金で人を貶める様な人には見えなかったけどな~……」
「金の魔力だな。最も、その魔力の元になる出来事が有る訳だがな」
「受け取った理由、何なんだろうな?」
「……大した事は無い、母親が病気なのさ。入院費が掛かるし、父親の稼ぎだけじゃどうにもならない。あの金は、喉から手が出るくらい欲しかったんじゃないか?」
「そうか~、そりゃ欲しいわな……納得納得」
「納得するなよ、お前はピンチなんだろ?」
「中澤、人生最大のピ~ンチ!」
「……嬉しそうだな?」
「そうか?結構悩んでんだぞ?……でもさ、間違った事をしてないのに、ピンチってのもおかしくないか?」
「それはな……しかし、現実そうだろ?」
「何でだろうな?……おかしな事をしてる奴が、やっぱり上手く生きてるんだよな…………何でだろう♪何でだろう♪何でだ·何でだろう♪」
「悩んでる様には見えんぞ?……これからどうする?」
「とりあえずはだな、俺の無実は証明出来そうだ」
「その後は?」
「そこはだな……一応、考えが有る。とりあえず、元の時間に帰ろう」
「……解決になったのか?」
「おう、多分な」
「……変な事、考えてないか?」
「考えてねぇよ、失礼な!」
2人はベンチから立ち上がり、どうやら元の時間に戻る事にしたらしい。
元の時間に戻った2人、事務所に戻り守人がコーヒーを入れた。
「まぁ、飲んでけよ」
「ゴチッ!気が利くな!」
「……これからどうすんだ?」
「おう、明日、あっちの会社に行ってみるよ。社長も、会わない訳にはいかんだろうしな」
「休日出勤か?」
「馬鹿だな~、俺は謹慎中だよ」
「謹慎中でも、休日出勤だろ?」
「それはそうなんだけどな……まぁ、成る様に成るさ」
「少し気になるな」
「だろ?終わったら、ここに来るからな」
「……来てもいいけど、クレーム言うなよ」
「言わないよ~、なかなか楽しい経験したし!」
「不安だな~……」
「……さて、コーヒーご馳走様な!…じゃあ、また明日な」
「はいはい、よろしく」
剛は解決屋の事務所から出て行った。
剛は自分のアパートに戻る途中、新しい取引先になる予定だった会社の社長に連絡をした。元々は契約する予定であり、かなり大きな仕事の為に社長とも名刺の交換をしていたのである。
「はい、渡邉です」
「すいません、中澤です」
「こんなに遅くに、失礼ではないですか?」
「失礼を承知で連絡をしています。この間の私についてですが、やはり間違いです」
「わざわざそんな話ですか?」
「そんな事ではありません。私のプライドと人格が掛かっています」
「……しかし、証人も……」
「もし、間違った決定を下しているとしたら……会社も危なくなるんじゃないですか?」
「……証拠が有る……そうなんだね?」
「はい」
「分かった、明日の10時でいいかな?」
「はい、確実に伺います。それでは、失礼致します」
剛はアパートの前で電話を切り、部屋に入るとシャワーを浴びて軽く夕食を食べて布団に入った。
(……えらく長い1日だったな…………あれ?まだ10時?……うん?……そうか、時間を戻ってはいるけど……そうか)
妙に納得し、剛は眠りに着いた。明日、剛にとっては大切な1日となりそうである。
後は……どう解決するかです。