現実離れした依頼……其の4
死神からの仕事、厄介極まりないな……
地下室から出て行く守人と剛。外は暗く、既に夜中といった所だろうか。そのまま守人は足早に進んで行く。剛もその後を付いて行くのだが、2人の間に会話が無い。それだけ、今回の依頼については慎重という事だろうか。
とある廃病院に着いた。2人は無言で中に入る。そのまま、廃病院の地下に足を進める。何とも説明し辛い臭いが立ち込める。
「やりましたね!これで1億ですよ!」
「勲さん、楽勝でしたね!」
「仕事はな……」
数人の男達が話している。暗闇に目が慣れ、守人と剛の目には勲とその仲間達が見えていた。何かの液体を浴びたらしく、服が濡れている。一瞬だけ月明かりが差し込み、その液体が血である事が確認出来た。
「……そろそろ、姿を現したらどうだ?」
勲が強めに言葉を発すると、勲達の前の空間が歪んだ。
「私の事を気付いていましたか……まぁ、それでも運命は変わりませんけどね」
その歪んだ空間から、死神が姿を表した。しかも、仮面を付けていない。一目で死神と分かる出で立ちである。
「ば、化物……」
「お、お前は何だ?」
「……1人、大分落ち着いてる方が居ますね?」
「俺の事か?……俺は、このくらいは予想済みさ」
「そうですか……では、この世とのお別れも予想済みですね!……それでは!」
死神は右腕を振り上げ、そのまま下に振り下ろした。次の瞬間、勲を残して男達はそのまま倒れた。
「さて、あなたの番ですね?」
「そう上手く行くかな?……まぁ、やってみればいいさ」
勲が言葉を発すると、少しだけ空間が歪んだ。次の瞬間には、死神は先程と同じ所作を行い、勲はその場に倒れた。
「……私に強がりを言っても、所詮は戯れ言ですね……」
死神は不気味にニコッと笑い、姿を消した。
一部始終を見ていた守人と剛、言葉を発したのは剛である。
「……勲、死んだな?」
「……な~るほど、これが答えか……」
「??……何が分かったんだ?」
「まぁ、近付いてみれば分かるさ」
守人は倒れている者達の元に向かった。気は乗らないが、剛も近付く。
「見てみろよ。勲じゃねぇだろ?」
守人は倒れている勲の顔を髪を掴んで持ち上げた。その顔は、剛の知っている顔ではなかった。
「おう?…………どうなってる?……確かに、あの時勲は……」
「しょうがないさ。死神さえも騙したんだからな」
「騙した?……どういう事だ?」
「一瞬、空間が歪んだだろ?」
「おう、死神が右手を振り上げた時な」
「……あれで入れ代わった。あの時に俺達の知ってる勲は消えたんだ」
「??……居ただろ?」
「居たのはこいつさ」
「???……私、日本語分かりませ~ん!」
「あのな~……勲は、あの時に死神の目をも欺いた。見た目も死神特有の目もな」
「死神特有?」
「死神は、そいつの名前が分かるのさ。だから、普通は間違えない。しかし、勲はあの瞬間に、自分と同性同名の他人とすり変わった。見た目は魔術で誤魔化してな」
「魔術?……勲、そんな事も出来んのか?」
「勲は出来ないさ。勲はな……」
「……分かる様に話してくれ」
「簡単だ。悪魔と契約してやがった。しかも……なかなか上級の奴とな……」
「上級悪魔!?……凄いのか?」
「死神を騙すんだ、なかなかの奴さ」
「……死神を殺せばいいんじゃないか?」
「馬鹿だな~、死神を殺すのは無理だろ~……死神は、天界でも魔界でも、最上位クラスの力の持ち主だからな」
「そうなのか?死神、凄ぇな?」
「今更か?……しかし、そうとしても厄介だな……今回は悪魔か……」
「それでも、野放しには出来ないだろ?」
「オフコース!……さて、策を打つとするか?」
「策は有るのか?」
「有るさ……最高の奴がね!」
守人が悪い笑みを見せた。
「……その顔を見ると、凄く安心する」
「さて、次の場所に行くぞ」
守人と剛、地下室に向かった。
地下室から出た2人、どうやら前の時代から10年以上も後の様だ。
「守人、悪魔をどうやって攻略するんだ?」
「な~に、大した事じゃねぇさ……さて、死神に会うとするか?」
「何処に居るのか分かるのか?」
「おう、こっちだ」
守人は剛を引っ張る様に、近くの公園に向かった。
公園に着いた2人、その先には汚れた作業着の男が少し不思議な男に缶コーヒーを渡していた。
「元気出して!悪い事ばっかりじゃないからさ!」
作業着の男、そんな言葉を不思議な男に掛け、そのまま帰って行った。
「死神、人間に慰められるなよ」
「守人……見てたんですか?」
「おう!しっかりとな!」
「……今の時代のあなたではないですね?」
「まぁな!……お前に頼みが有る」
「……何ですか?」
「見えない刀、あれを貸してくれ」
「……それは、いくら何でも……」
「あの男に関係有るんだ……数年後、お前が俺に依頼に来た時……刀は確かに返すからさ」
「……私は、あなたに依頼するんですね?」
「おう、面倒な奴をな」
「……剛君、信じて大丈夫ですか?」
「信じた方がいいと思いますよ」
「……剛君がそう言うのなら……」
「待て!俺を普通に信用しろ!」
「守人は……これですからね……」
「分かります!納得です!」
「おい、何2人で分かり合ってんだよ?」
「我々にしか、分からない事です。ね?」
「はい、間違いなく!」
少し守人は納得行かない顔をしているが、この後死神は何かを守人に渡した。見えない為に、守人はそれに自分の血を掛けた。守人の血を通して、その物の姿が分かる。鋭利な刃物であり、長さは60cm程有る。
「全てを切り離せる刀です……悪用無き様」
「お前の為でも有るんだよ!」
「……まぁ、今は聞かないでおきますよ……それでは……」
死神は消えて行った。
「さて、現代に戻るか?……勲退治といこう」
「お?解決するんだな?」
「オフコース!」
守人と剛、遂に現代に戻り、鷲尾勲と対決である。
どうやら、解決方法が有ったみたいですね。