現実離れした依頼……其の3
鷲尾勲、只者ではない……
地下室に着いた2人、とりあえずは死神が失敗した辺りに向かう事にした。いつもの事が終わり外に出る。少し風景が古く感じる。守人は目的の場所が分かっているらしく、早足で歩きを進める。剛はその後を黙って付いて行った。
とある工場に着いた。もう動いていないらしく、廃工場といった所だろうか。少し不気味に見えるその場所に、守人は黙って入って行く。勿論、剛も黙って後を付いて行く。
中に入ると、数人の声が聞こえた。
「今度の仕事だが……辞めておこう……」
「勲さん、どうしたんすか?」
「弱気ですね?」
「……悪い予感がする……当たるんだよ……」
「億の仕事ですよ?」
「俺達に、怖い物なんて……」
話し合いをしている途中、守人は思いっ切り空気を読まず、剛の腕を引っ張って勲達に話し掛けた。
「あの~、肝試しの方達ですか?」
『!?』
「誰だお前?」
「何しに来た?」
「いや、肝試しなんですけど……もしかして、本当に出るんすか?」
「あ、あの……俺、幽霊苦手でして……」
「何を言っている?」
「こ、今度ですね。女の子達とここに来ようと思っていて……」
「大丈夫っすよね?出ないっすよね?」
「……取り込み中だ、出て行け!」
「まぁ待て……どうして声を掛けた?」
「いや……思ったより怖くて……」
「人が見えたんで、嬉しくてつい!」
「……足音が聞こえなかったが?」
「あれ?言いません?足音立てると、幽霊に見付かるって?……な?」
「俺も言われました。だから、必死で足音立てずにここまで……物凄く怖くて……」
「……怖いなら、入らなければいいだろう?」
「そうもいきません!女の子が掛かってますから!」
「……女の子で命を落とすぞ?」
「え~……だったら、考え直します……な?」
「うん……本物出たら、逆に俺達逃げそうだしな……」
「「では、失礼します!」」
守人と剛は頭を下げ、ここから離れ様とした。
「待て……そう急ぐ事もないだろう?……本当は何で来た?」
「本当って?……理由は言いましたが?」
「俺達が普通じゃない事は見て分かるだろ?そっちの男の様に、多少は恐怖が滲み出る物だ……お前に恐怖は無い。どうしてだ?」
「そりゃあ……本物の幽霊より……」
「幽霊のが怖くないだろう?」
「……いや、本当に幽霊が怖い……」
「ちょっと黙れ!」
勲が急に大声を出した。誰もが静かになった。
「……誰か居やがる……それも、面倒な奴が……おい、帰るぞ。お前達、余りお痛はするんじゃないぞ」
言い終わると、勲は仲間達に声を掛け、その場からすぐに立ち去った。勲達が居なくなって数分後、
「……危なかったね、守人」
「やっぱり死神か。あいつ、お前の気配を感じてただろ?」
「その様です。こちらは?」
「剛だ。お前としては、初めましてだな?」
「はい」
「……守人の事は承知してるんですか?」
「まぁね、時一族だしね……それで、どんな依頼?」
「守秘義務が有るのでね……鷲尾勲、なかなか鋭いな?」
「そうなんですよ。何故かは知りませんが、人外の気配が分かるんです。私の気配が分かるのは、時一族以外だとあの男くらいしか……」
「……何か有るな?」
「確かに……でも、私には分かりません」
「俺なら、調べる事は可能かな?」
「でしょうね。この時代に居るのがバグの様な存在ですからね」
「あの~、俺から質問なんですけど~……」
「どうしました?構いませんよ?」
「それでは……どうして守人は、そんな偉そうに話してんですか?」
「?……俺は偉いぞ?」
「まぁまぁ、剛君は知りませんか?守人は、人外からの依頼も受けるんですよ?……依頼料は法外だし、依頼すると脅す事も有りますけどね」
「おいおい、人聞き悪ぃな~、お得に面倒な依頼を解決してるだろ?」
「そうしときますか?」
「人外って……守人、今までどんな奴が来た?」
「今まで~?……毘沙門天だろ~、アゼルだろ~……後は~……」
「閻魔様を忘れずに」
「!?……神様や悪魔、閻魔様もか……」
「どうだ?偉いだろ?」
「あのな~……だからってそんな偉そうにしなくていいだろ?」
「折角だしさ~!」
「成る程、剛君が居るといい感じですね」
「死神、目が悪くなったんじゃないか?」
「そんな事は有りませんよ。では、私はこれで……」
死神は頭を下げると、そのまま消えていった。死神が消えるのを見届け、守人と剛はその場から離れ、地下室に移動した。
地下室に移動中に缶コーヒーを買い、2人は缶コーヒーを飲みながら話をしていた。
「しかし……鷲尾勲はなかなか鋭いな?」
「そうだな~……死神が気を利かせなかったら、危なかったかもな?」
「……かなり疑ってたもんな……」
「剛、人は疑う生き物だ。それ自体は大した事じゃない。しかし……鷲尾勲は確実に俺達が嘘を言っていると思ってた……」
「ああ、ボロを出させ様としてたよな?」
「問題はそこだ。どうして嘘だと確信出来たか……普通なら、話を何処まで聞いてたかを確認するだろ?」
「確かに!……確認、しなかったな?」
「しなかったんじゃねぇ……全部聞いてたと分かってたんだ……その上で、殺すかどうかを見定めていた……勿論、俺達がどのくらいの力が有るかも探ってな」
「……一概には言えないが、簡単にはいかなそうだな?」
「思ったよりも厄介だ……死神め、追加報酬を絶対貰うからな!」
「……それで、次は何処へ?」
「死神の失敗を確認だな」
缶コーヒーを飲み終えた2人、次の所へタイムワープした。
ナイスな死神!
それでも不気味な鷲尾勲……