日本を変えろ!坂本竜馬暗殺阻止!……其の4
幕末、どんな時代なのか……
勝海舟と呼ばれた男はにっこりと笑い、坂本竜馬の声と口調で話し掛けて来た。
「何処で分かっちょうた?」
「竜さんは、俺を守人殿とは言わないさ……最も、何処かよそよそしいのも気になってたがね」
「……どういう事だ?」
「剛、少し待て……分かって来るさ」
「お、おう……」
「所で竜さん、これが考えてた作戦か?」
「そうじゃき!これが、儂の作戦じゃ!」
「……見返りは?」
「一族の保証……男と男の約束ぜよ」
「……そうか……」
「しかし、問題が残うちょる……土方しゃんの事じゃき……」
「そうか、新撰組とは面識有るんだな?」
「そうじゃき……土方しゃんは、儂と同じで器用じゃなか……きっと、武士として、新撰組としての人生を全うするつもりじゃき……土方しゃんと新撰組……せめて、その生き様は全うさせたい所じゃき……」
「……伝言、伝えてやろうか?あっちの坂本竜馬、京都に行くんだろ?」
「守人が伝えてくれると?」
「報酬次第さ」
「……この刀でどうね?……儂が長年連れ添うた愛刀じゃき」
「……それ程、新撰組と土方歳三は大切かね?」
「大切じゃ!道こそ違え、その心意気や凄か物じゃ!……尊敬ばしちょる」
「……いいだろう。その依頼、しかと引き受けた。あっちの竜馬の出発の時、俺達も一緒に頼む」
「分かったぜよ……出発は明日じゃき、今日はゆっくりしてきんしゃい」
「1つ質問だが……中岡慎太郎はどうしてだ?」
「……おんし達の他となると、中岡しゃんば1番危のうごじゃる……身を切る思いじゃが、失敗は許されんぜよ」
「……全ては新時代の為……かな?」
「……本来なら、誰よりも一緒に喜びたい所じゃき……」
守人と剛、本日は勝海舟の屋敷に泊まりとなった。
夕飯を食べ、布団に入った守人と剛。剛は大分静かである。
「……守人、分からねぇぞ?」
「剛は頭の中身が少ねぇからな~……」
「んな事有るか!……そろそろ教えろ」
「……勝海舟は坂本竜馬さ。坂本竜馬の顔をした奴は、影武者だな」
「おう?……待て待て、頭が追い付かねぇぞ?……」
「これだよ……分かりやすく説明するとだな~……まず、新しい時代の要職に坂本竜馬が居ないのは何故だと思う?」
「……これからは、自由に生きたい……とかだろ?」
「違うな……死ぬ人間の役職は用意してないのさ」
「死ぬ?……決まってる様な言い方だな?」
「決まっているのさ……剛、新しい事……例えば、大きく政治なんかが変わる時、国民はどうだ?」
「そりゃあ……混乱して、治安も悪くなって……」
「世界的に見て、それは極自然な出来事だ……しかし、そうならない時が有る。どうしてだと思う?」
「それは……功労者が殺害され…て……もしかして?」
「そうだ。新時代の為に坂本竜馬の命が必要なんだ。必要では有るが、新時代を進めるのにも坂本竜馬が必要だ」
「そうか……新時代には坂本竜馬という男の命が必要で、坂本竜馬の頭脳も必要という事か!」
「付け加えるなら、勝海舟という名前……お前が言ったから残った名前さ」
「まさか!」
「あの時、縁起の良い名前だと言っていた。縁起でも何でも担ぐさ、新時代の為ならね」
「……俺も不思議に思ってたんだ……勝海舟、かなりのビッグネームだが、坂本竜馬の都合にいい登場の仕方をしてる……そうなれば、辻褄は確かに合う」
「まぁ、これで依頼はほぼ終了だな……最も、この刀の分だけ、まだ仕事が残ってるがな」
「謎が解けたら、眠くなって来た……おやすみ……」
剛はこのまま就寝となった。守人は少し考え事をしてから眠った。やっと全貌が見えて来た様である。
翌日、守人と剛は坂本竜馬(影武者)の馬車に乗り込み、一緒に京都まで同行した。影武者は、守人と剛が気が付いている事は知らない。これは、3人だけの秘密との事である。
京都に着いてすぐ、守人と剛は坂本竜馬(影武者)と別れた。新撰組の所に行く為である。
幕末の京都、歴史では聞いていたが、実際に見ると物凄く違う。[誠]の文字の入った羽織を着て、新撰組は京都の町を見回りと称して歩いているのだが、その目付きが凄い。壬生狼と言われた理由が分かる。並みの人間なら、その眼力だけで尻込みしそうである。そんな輩の後を付け、守人と剛は新撰組の根倉にたどり着いた。
「頼もう」
「……誰だ?」
「こちらに用事が有ってね」
「……斎藤も永倉も居ない。今は俺しか居ないが?」
「大丈夫、土方歳三に用事が有るんだ」
「ほう……して、俺に何の用だ?」
「坂本竜馬からの伝言だ……時代が違えば、おんしと儂はきっと分かり合えたと思うちょる。この時代で、それは叶わん事かもしれんけんど、来世という物が有れば、その時こそじゃ……最後まで、土方しゃんは土方しゃんらしく……だとさ」
「……その言葉、本当だという確証は?」
「この刀さ……坂本竜馬の愛刀、これを報酬として、伝言を頼まれた」
「……あっはっはっはっは!坂本竜馬らしいの!……これで悩みは消えた!……幕府は、絶対に負けんぞ!」
「……後は、神のみぞ知る……かな?」
「その通りじゃ!絶対に、頭は下げん!」
土方歳三、歴史で描かれた通りの清々しいくらいの武士である。
土方歳三の覚悟を見届け、守人と剛は新撰組の所から出て行った。翌日、守人と剛は事の顛末を勝海舟こと坂本竜馬に伝え、この時代を後にした。
守人と剛が去ってから数日、歴史に名高い[近江屋事件]が起きる。坂本竜馬(影武者)と中岡慎太郎は、ここで殺害された。歴史上は、坂本竜馬が殺害された事になっている。
遂に解決!
後は……この依頼の意味は……




