日本を変えろ!坂本竜馬暗殺阻止!……其の2
坂本料理、どんな人物なのか……
道場奥に通された守人と剛、
「ほら、これを貸してやるわ!」
女性は、剛に竹刀を渡して来た。
「いや……俺は剣術は……」
「そいつは無手、手甲を付けてるだろ?」
「……素手で、この千葉さな子に勝てると?……絶対に許さないわ!」
さな子の目付きが変わった。
「アッハッハ、そんなに怒らんでも良かろう?……さな子殿は短気やき」
「うるさい!あんたは黙ってなさい!……さぁ、いざ尋常に勝負よ!」
「……守人~……」
「大丈夫、手甲で受けて……後は上手くやれ」
結局、剛とさな子は手合わせする事となった。
勝負は意外と早く着いた。さな子が竹刀を振り回すのだが、剛は手甲を使いながら実に上手く避けている。元々合気道をやっており力の流れを学んでいる剛、腕の延長と捉えれば、受けるだけなら問題は無さそうである。
「ふぅ~……」
攻め疲れから、さな子が一瞬息を着いた瞬間、剛は造作もなくさな子と間合いを詰める。
「……引き分けでどうでしょう?」
「…………あなたに利益が無いわ」
「元々、利益は有りませんよ」
ここで手合わせは終わりとなる。
「良か良か、では儂とあんたやき」
「その様だ」
竜馬と守人は立ち上がる。
「儂は、竹刀はどうも得意じゃないき」
「木刀でどうだ?俺も、その方が好ましい」
「話が合うとね?……名前は?」
「時守人……では……いざ!」
「尋常に!」
「「勝負!」」
竜馬の鋭い打ち込みに対し、守人も見事な防御を見せる。周りの人達の顔色が変わる。それだけ見事な坂本竜馬の北辰一刀流であり、それを防ぐ守人の見事な剣捌きといった所だろう。
「チェスト~!」
「フンヌッ!」
[バキィッッ!]
竜馬と守人の一刀はお互いの木刀に当たり、その破壊力によって木刀は折れてしまった。
「ふ~……これじゃあ、引き分けるしかなかとね?」
「うむ。ここまでの様だ」
「……おんし、強かね?」
「あなた程じゃない……本身じゃないと、手の内はさらけ出せないかな?」
「そりゃあ、おんしも同じじゃき……気に入った!わしゃあ、おんしが気に入ったぞ!」
「それは光栄だな。よろしくな、坂本さん」
「竜馬じゃ!守人で良かろう?」
「構いませんよ。では、竜さん?」
「何じゃき?」
「酒でも飲みますか?」
「話が分かるとね!そちらの……」
「剛です」
「そうそう、剛も酒は飲めるのじゃろ?」
「それなりに……」
「良か良か、これから飲むとしよう!さな子殿、そういう訳じゃき!」
「……どういう了見ですか?」
「まあまあ、竜さん外に行きましょう」
「そうするきね。さな子殿は、お堅くていけん」
「はぁ?あなたが不真面目なんです!」
「……そういう事にしちゃる」
結局、竜馬と酒を飲む事になった。時間は14時程度であろうか、まだまだ昼である。
昼の酒は効くと聞いた事がある。どうやらそれは、確かな情報の様である。昼間から酒を飲み、大の男が酔っ払っている。
「守人~、この国をどう思うかね?」
「この国~?……どうだろうな~?」
「剛はどうかね?」
「……俺には、難し過ぎますね」
「もっと広い世界を見て、この国を良くしたいんじゃ!儂は、間違ってるかの?」
「いや、そもそも考え自体に間違いなんてねぇのかもな?」
「そうなると……勝海舟の出番ですね?」
「勝海舟?……誰とね?」
「え?勝海舟ですよ?…ほら、船の……」
「???……そんな奴、おるんか?……なかなか、縁起のいい名前じゃのう?」
「守人、どういう事だ?」
「いずれ分かるんじゃないか?……それより、千葉さな子は評判通りのじゃじゃ馬だな?」
「分かるかね?なかなか大変じゃき!……まぁ、剣の腕もまだまだじゃけどね」
この後も、守人達は飲み続けた。そのまま千葉道場に守人達も泊まる事となり、夜中まで大いに騒ぐ事となった。
翌朝、3人は深く眠っている。
「ほら、起きなさい!」
さな子が入って来て、3人を叩き起こした。
「……頭が痛いき……飲み過ぎじゃき……」
「う~ん……気持ち悪い……」
「流石に堪えるな~……汗でも掻いて、酒を抜くか?」
守人の言葉で、3人は道場に移動した。朝早く誰も居ない道場で、3人は酒が抜けるまで汗を流した。
ここから3日間、守人と剛は千葉道場に泊まる事となる。
「おんし達を気に入り申した。暫く、ここにおると良か」
竜馬の一言で、守人と剛の居候が決まった。
「全く、穀潰しが2人も……」
さな子はぶっきらぼうに呟いていたが、そこは守人である。殆ど気にしていない。剛のみ、少し表情が雲っていた。
3日間泊まり、守人と剛はさな子と道場主の定時、竜馬に挨拶をして道場を後にした。竜馬は少し、守人達と一緒に町中を歩いていた。
「……どうかね?新時代を作る際、おんし達にも加勢願いたいとよ」
「……新時代を築くという事は、それだけ血が流れるぞ?」
「しょうがなか……儂の血が流れても、この国が良くなるならば、儂は本望じゃき」
「確かに竜さんはそれでいいかもだが、翻弄されるのは何も知らない者達だぞ?」
「……だからこそ、おんし達の助けが必要ぜよ」
「……少しは気に掛けておくさ」
「頼むき」
「……竜馬さん、気を付けて下さいよ」
「??……まぁ、気を付けるき」
竜馬は軽く手を振って、守人達と別れた。
「どうやら、整理する事が必要だな?」
「そうだな……どうも、な~んか引っ掛かるんだよな~……」
「剛が引っ掛かるんなら、それは大問題だな?剛程度でも気付くんだからな!」
「……いつも思うが……」
「何だ?俺はイケメンか?」
「俺の扱いが酷いだろ!」
「そうか?自分の胸に聞いてみろよ」
坂本竜馬、なかなか喰えない男である。それにしても、ここからどんな動きを見せるのか。まだまだ先が見えない、今回の依頼である。
まだまだ、何か有る様子……




