日本を変えろ!坂本竜馬暗殺阻止!……其の1
……歴史を変える様な依頼……
本日も守人と剛は、事務所で時間を持て余していた。暦は9月も後半となり、大分涼しくなって来ている。
「守人~、何番台が出るんだよ~?」
「自分で考えろ!」
「だってさ~、出ねぇんだも~ん!」
「も~んじゃねぇ!この馬鹿!」
「そう言うなよ~、スロットで万枚は男の浪漫だろ?」
「お前だけだ、阿呆!」
本日も、守人と剛は言い争いをしている。平和という事だろう。
結局、守人と剛は本日も人生ゲームをしていた。剛が勝つと、翌日のスロットで大勝ち出来る台を教えて貰えるらしい。剛の目が血走っているのが怖い。
[コンコン]
ノックがされ、1人の男が入って来た。
「解決屋とは、こちらかな?」
「そうですが?」
「是非にお願いしたい事が有りまして……」
「とりあえずはこちらに……剛、お茶」
「はいはい、今出しますよ」
守人は男をテーブルに促し、剛は男にコーヒーを出した。
「すいません……本題に入ってもよろしいかな?」
男は座ると、すぐに話をしたそうである。
「節操が無いね~」
「守人、お客様だぞ?」
「客かどうかは俺が決める……要件は?」
「日本は、どうだと思う?……余り良いとは思えない……」
「だから?」
「日本を変えたい!……どうだ?」
「……で、誰からの紹介だ?」
守人の声が低く、目付きも鋭い。いつもの様な名前等を言い当てる事もしない。
「誰と言われましても……」
「嘘は分かるぞ……はっきり言え!」
「……盛事という人物です……名前しか知らないですが、ここが最適だと……」
「どう最適なんだ?」
「……歴史を変える為には……ダメですか?」
「……どうしたい?」
「坂本竜馬が生きていたら……そんな事を考えるんです……」
「……報酬は?」
「それは……その盛事という男が……」
「……暗殺を止める……それでいいのか?」
「出来る事ならば!」
「……その結果は知らんぞ?」
「構いません!」
「……伝えておけ、面倒な依頼を寄越すなとな……あ~、面倒臭ぇ……後さ、報酬は最低1000だと言っておいてくれ」
「では、引き受けて下さると?」
「分かったよ、早く帰れ」
守人はこの男を追い出す様に帰した。
「守人、今のは……」
「面倒な依頼だが、引き受けないとな~……しょうがない、剛にもいい経験になるか……」
「……今のは誰だ?」
「さぁて……分からんな」
「いつものマジックはしないのか?」
「いつもの?……名前の事か?……今回は無理だな、関わってる人間が人間だからな」
「盛事とかいう男か?」
「まぁ、そうなるな……しょうがない、動くとしよう」
守人は溜め息を吐きながら事務所を出た。剛は急いでその後を追った。
地下室に着いた2人、とりあえずは着替えを行った。坂本竜馬という名前が出た以上、格好は江戸の頃となっている。
「……大掛かりな仕事になりそうだな?」
「史実通りならな」
「気になる言い方だな?……何か有るのか?」
「有るのか無いのか、それを見極めるのも俺達の役目……だろ?」
「確かにな~……大変だよな~……」
「顔……にやけてるぞ?」
「だってさ~、坂本竜馬に会えるんだぜ!しかも、生だよ生!」
「……お前、置いてくぞ?」
「何でだよ~、お前はどうか知らんけど、楽しみなんだよ~!」
「……本当に馬鹿!」
守人は舌打ちし、剛は遠足に行く子供の様な顔をしていた。
地下室から出ると、そこは時代劇で見た様な風景である。某江戸村の様な感じであり、初めてという感覚は無いみたいである。
「守人、何故か見慣れた感じなんだが……」
「時代劇やってるしな。あれはリアルだよ」
「そうか~……もっとこう、感動を期待したんだけどな~……」
「剛、[馬鹿し]に名前変えたら?」
「どういう意味だよ?」
「そういう意味だよ」
話をしながら、守人はとある店に寄る。
「いらっしゃい」
「この刀と木刀でいくら?」
「丁度2両です」
「この手甲は?」
「5分ですね」
「……合わせて2両2分でどうだ?」
「敵いませんね~、いいですよ」
守人は袖から2両2分を出し、店主に渡した。腰に刀と木刀を指す守人、
「剛、これ着けとけよ」
「……俺も刀がいいな~!」
「お前、剣術出来ねぇだろ?」
「それはお前もだろ?」
「馬鹿だな~、俺は武芸一般なんでも来いだよ」
「……嘘付け!」
「失礼な!本当だぞ!」
「はいはい、そうしとく」
何だかんだと言いながら、剛は手甲を装備して守人の後を付いて行く。
とある道場の前に着いた2人、[千葉道場]と看板が掛かっている。
「守人、俺も金は有るのか?」
「袖に入ってるだろ?」
「おう、これか!……これ……」
「3文だ!」
「早起きはのあれだな?……何が買える?」
「そうだな~……みんなの同情かな?」
「役に立たねぇじゃねぇか!」
「おう、気にするな」
「気にするわ!」
話をしながら、その道場に入って行った。
「頼もう」
「おう?……おんしゃ、誰とね?」
「誰かはそのうち……坂本さんかな?」
「ほう、儂を知っちょるき?興味深いお人ね……後ろの人は?強くなりそうじゃき」
「俺ですか?……俺は……」
「こいつは刀は使わない」
「誰ですか?」
話をしていると、奥から防具を着けた女性が出て来た。
「我が道場に、何のご用でしょうか?」
「道場には別に……坂本竜馬に用事が有ってね」
「儂も、おんしゃに興味が有るとよ」
「この穀潰しにですか?変わった方ですね?」
「どうだろう?一手、手合わせは?」
「ほう、更に面白か人やね……おんしには、儂はどう映っとうとか?」
「どう?そのままさ……少なくとも、この辺では敵う者が居ない剣豪……かな?」
「な、何を?この道楽者がそんな訳……」
「……抜け目のなかお人よ……目的はなんね?」
「お主の真意……かな?……どうかね?」
「結構、相手になるとよ」
「待った!父が留守な以上、この道場の主は私!……私に勝たない限り、それは認めません!」
「……後ろのお方が最適じゃき」
「気が合うね~……剛、よろしく」
「はぁ?俺?」
「馬鹿にしてるわね……覚悟なさい!」
守人と剛はこの女性の後を付いて行く。その後ろから、頭を掻きながら坂本竜馬が付いて来る。少し汚れた着物に身を包み、無精髭も生やしている。
守人は何を考えているのだろう。
何やら裏が有りそうな……