あの夏、1番暑い日!……其の2
まずは……何処に行くの?
地下室に着いた守人と剛。
「守人、霧島航と勝負して終わり……じゃないんだろ?」
「その通りだな。そんなに簡単じゃない」
「だよな~……そうじゃなきゃ、ここまで拗れたりは……」
「確かにそうだが、少し違う」
「違う?」
「確かに拗れていて、確かに複雑では有る……しかし、霧島航と関わらなければ……」
「違っていたと?……しかし……」
「可能性の問題だ、変わってなかったかもしれん。それでも、有り得る話ではある。歴史を変えるという事は、少なからずこういうリスクが有るという事。そして、俺達にはその責任が有る」
「……責任か、確かにな……しかしだ、それにしては報酬がでかくないか?」
「折角くれるってんだ、貰っておこう」
「これだよ……とりあえず、2つ分かったな。複雑な依頼って事と、それでも霧島航との勝負を着けさせるって事」
「いや、もう1つ」
「もう1つ?」
「ああ……剛が意外に成長してるって事!」
「おい!お前は俺を何だと思ってるんだよ!」
「雑用兼お笑い担当!」
「……後で覚えてろよ……」
厄介な依頼の様だが、剛も落ち着いている。少しは慣れた様だ。
タイムワープをし、外に出る2人。
「……結構昔じゃないか?」
「そうだな~……100年くらい前かな?」
「そんなに?」
「な訳ねぇだろ!……お前、詐欺に引っ掛かるぞ」
「余計なお世話だ!……で、どのくらい前なんだ?」
「半世紀くらいか……まぁ、耕三さんのお爺ちゃんがお父さんに会社を譲る辺りだな」
「……そんなに前から必要なのか?」
「それは、これから分かるんじゃないか?」
守人は迷う事なく歩いて行き、剛はそれに付いて行った。
ソフトアンブルカンパニーの前身、株式会社·自摸電気の前に着く。
「ここは……」
「そう、高梨和興の会社……これを耕三さんの父親、昭次さんが継いで、今のソフトアンブルカンパニーになるんだ」
「しかし……この頃からデッケェな……」
「そりゃあな。この頃から、日本有数の会社になってんだ……行くぞ」
「はぁ?…おい、待てって……」
守人は自摸電気に入って行き、剛は急いで追い掛けた。
受け付けに笑顔で話し掛ける守人。
「すいません。和興社長に用事が有りまして」
「お約束は?」
「してませんけど、半也久兵衛の件でとお伝え下さい」
守人と剛は椅子に座り、受け付けが何処かに電話をする。すぐに重役と思われる男が現れ、守人と剛は社長室に案内される。社長室に入ると、橋田が立っていた。20代前半の若者であり、とても若々しい。既に執事として働いている様である。
「おい、半也久兵衛の何を知っている?」
目付きの鋭い50代の男が声を掛けて来た。和興である。その横には、20代の昭次が居る。
「おい、守人……」
「大丈夫、静かにしてろ……半也久兵衛とは……特に面識も無いし、知り合いでもない」
「……馬鹿にしているのか?」
「いや……しかし、この件は俺にしか解決出来ないと思っている」
「……理由は?」
「全貌が分かる。それだけだ」
「……信用ならんな……」
「旦那様、今は事件解決が最優先……頼んでみては……若旦那、どうですか?」
「私は……宗一が帰って来るならば……」
「橋田君、君は確かに良くやってくれている……しかし、この者達を信用するという訳には……」
「私の命を賭けます!それでどうか……」
「お取り込み中に悪いんだが、宗一君を救いたいの?救いたくないの?」
「「救いたいに決まっている!」」
「でしたら……」
「……分かった、君達に賭けてみよう……もしダメだったら……」
「はい、私の命を差し出します」
「では、我々は事件解決に動きます」
守人はさっさと出て行った。剛は頭を下げ、守人の後を追う。
自摸電気の外に出た2人、とりあえずは公園でジュースを飲む事にした。
「……守人、どういう事だ?」
「この事件で、耕三さんの兄の宗一さんが殺される……本来なら、宗一さんが跡を継ぐ筈だったんだ」
「成る程……それはそうとして、この事件ていうのは?」
「誘拐さ。身代金目的のね……しかし、残念ながら宗一さんは犯人の顔を見てしまった……ここを変えないとな」
「そうなのか……橋田さん、若かったな?」
「そうだな……成る程、段々と読めて来たな……」
「何が読めて来たんだ?」
「色々とだ!……まぁ、大人の都合なんかだな!」
「おい、教えろ!」
「ほら~、剛はお子ちゃまだろ?」
「ジェントルメンだ!」
何となくだが、守人は何かに気付いた様である。もしかしたら、この事件は意外と何かが隠されているのかもしれない。
ジュースを飲み終えると、2人は早速動いた。
剛は守人に言われ、多くの花火を購入した。お金は守人が用意し、この時代の物を使った。時代が時代なだけに、スマホは使えない。守人は剛に時間と場所を告げ、自分も何かを探しに行ってしまった。
守人が指定した倉庫に、きっかり2時間後に着いた剛。結構な量のロケット花火とネズミ花火を持っている。
「時間ピッタリだな」
「守人……ここに、宗一さんが居るのか?」
「勿論……さて、橋田さんにもお手伝い願おうかな?」
物陰から橋田が姿を現す。
「……バレてましたか……」
「オフコース……頼むね」
「はい、確かに」
「……何で2人だけ分かってんの?」
「そりゃあ……剛には分かんねぇな」
「……多分、そうでしょう」
「何だよそれ!」
「黙って……どうやら、このタイミングだな?」
「その様です」
「剛、ありったけの花火を倉庫にぶち込め」
「守人さん、ご協力致します」
「おう、よし行くぞ」
どうやら、宗一奪還の始まりの様である。橋田について、色々と疑問が沸く展開だが、今はこの奪還が成功する事を願いたい。
救出、上手く行くのか……




