どうでもいい依頼!……其の2
遂に解決!
……しなくてもいいや……
短いお話タイムが終わり、フリータイムとなった。この後、カップリングが成立するかどうかとなる。この時間は、誰もが好きな行動を取れる。告白前の最後のアピールタイムとなる。
「なあなあ中澤君」
「何ですか?」
「絶対に俺と被らないでくれよ」
「……一応聞きますけど、どうしてですか?」
「俺が選ばれるけど、君、ショックだろ?」
「……馬鹿に付ける薬は無さそうだな……」
剛は深い溜め息を吐いた。西田、何処からその自信が来るのだろうか。
フリータイムが終わり、少しの休憩を挟んで告白タイムとなる。剛は西田と少し話していたのだが、
「……俺はここで消えます。では……」
との事で、剛はスタッフに話をし、どうしても対応しなくてはいけない用事が出来たと言ってこの見合いから抜ける事にした。
この見合いだが、最後の告白は男性陣から行われる。昔のテレビ番組の様なシステムである。細かい事は割愛するが、西田はここで見事にカップルとなる。相手は乙見麗子と言い、容姿は参加者の中では頭抜けていた。勿論、1番人気である。そんな麗子を西田は見事にゲットしたのだ。
最後に西田は、麗子と連絡先の交換をして本日は終了となった。
大満足な表情で会場から出て来る西田、
「どうでした?」
「うわぁ!…何だ、中澤君か?」
「……その顔なら、上手くいきましたね?」
「もうバッチリさ!」
「では、報酬の方を」
「おう、そうだな!これな!」
渡されたカード、[拳カレー1週間無料券]と書いてある。
「……2ヵ月だったでしょ?」
「意地汚いな~、そもそも、おれの魅力の結果だよ?」
「あのねぇ……」
「俺の実力なのに、報酬が貰えるだけ有難いんじゃないの?」
「……こいつ……」
「あーあー、1日1食だからね!トッピングと大盛りは別料金!じゃあ!」
西田は嬉しそうに帰って行った。
「……な~んとなく気に入らん!……クソッ!」
剛は不満そうな表情で事務所に戻った。
事務所でコーヒーを飲む剛、パソコンで西田拳闘会の事を調べていた。なかなかいいジムであり、評判も上々である。オリンピックで金メダルを獲得し、プロの世界でチャンピオンにもなった甲斐拳人の所属していたジムでもある。ちなみにだが、甲斐拳人は既に引退している。
「な~んか納得出来ねぇんだよな~……」
剛は呟きながら、更に調べていく。
西田拳闘会
会長は使い物にならず、歴代のトレーナーが優秀過ぎ!
歴代トレーナー、SKT拳王ジムの篠原会長を始め激闘王と呼ばれた手塚、その後は優しきヒットマン徳井、現在は当時PFP1位だった甲斐がトレーナー!
西田会長の何処に、それだけの人が集まる魅力が有るのか?
世界7大不思議の1つだ。
「……うんうん、納得……少しだけだったが、どれだけ酷いかは良く分かった……」
剛は妙に納得し、胸のつかえが取れた気分でコーヒーを飲んだ。
その後、剛は特にやる事もなく、事務所のソファーで眠ってしまった。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
「おい、起きろ!」
守人の声で剛は起きた。
「あれ?……帰って来たのか、早かったな」
「もう7時だよ、お前は眠り過ぎ」
「だってよ~、変な客に絡まれたんだよ」
「西田会長の嫁さん探しか?」
「何で分かるんだよ?」
「図星か……なら、明日は外出するぞ」
「はぁ?何で?」
「何でも!……あの馬鹿に、仕返ししたいだろ?」
「それはそうだが……何か有るのか?」
「おう、色々有るぞ!」
「それなら付き合う!いや~、楽しみだな~!」
「……余程気に入らなかったみたいだな?」
「余程じゃねぇ!出来る事なら、あの場で1発殴っておきたかったよ!……いや、殴るだけじゃ収まらん!」
「……放送禁止用語を話しそうだ……」
剛、かなり頭に来ている様子である。確かに酷い西田の対応ではあったので、この剛の怒りは納得である。このまま何も無いと、確かに納得出来ない。
翌日、守人は剛を連れて出掛けた。出掛ける前、守人は何処かに電話をしていた。電話が終わった守人、かなり笑顔であった。
「何処に行くんだ?」
「そりゃあ……ここで、パチンコとは言わないだろ?」
「西田の所は分かってるけど、ボクシングジムの方じゃないだろ?」
「今日西田は、昨日の娘と会うんだよ」
「何?あのクソ馬鹿、調子に乗りやがって……」
「まあまあ、その馬鹿が痛い目に会うんだからさ」
守人は剛の肩を軽く叩き、電話が終わった時よりも更にご機嫌な笑顔を見せた。
「よく分からんが、その顔を見ると大丈夫そうだ。俺も楽しみだ!」
剛、少し悪い笑顔を見せている。
目的の場所に着いた守人と剛、少し離れた所では西田が笑顔で女性に右手を上げて近付いて行く。
「お待たせ!待った?」
「全然!私も今来た所!」
どうやら、昨日の見合いで知り合った女性、麗子の様である。
「さて、何処に行こうか?」
「西田さんの行きたい所なら何処でも!」
付き合いたてのカップルの様である。
「すいません、西田さんですよね?」
「はい……あなたは?」
「嫌だな~、彼をお忘れですか?」
守人は剛の方を指差す。
「ど~も、昨日はお世話になりました」
「な~んだ、中澤君じゃない!どうしたの?」
「……この馬鹿~……」
「まあまあ剛……それより西田さん、この女性は?」
「昨日知り合って、俺の嫁さん候補!」
「嫁さん候補だ何て……恥ずかしい……」
「乙見麗子、本名·桑畑治子28歳。職業·特殊詐欺等の詐欺集団の1人。特に結婚詐欺が得意……だろ?」
「な、何を?」
「誰かは知らないが、酷い言い方じゃないか?そもそも、本名って何だよ?」
「酷い言い方?……あんたを助けてやろうとしてるのに~?……よし、助っ人に登場して貰おう!お願いしま~す!」
守人が大きな声を出すと、スーツにネクタイをした悪人面の金髪男と、同じくスーツにネクタイをしたサングラスを掛けた男が現れる。
「うちの会長を騙そうとしたって?」
金髪男が治子を睨む。
「ひっ……」
「おい、手塚……」
「西田さんは黙ってて!……どうなの?」
「返答によったら、色々と痛い目みるよ~!……お仲間もね!」
「喜多まで……」
「ご、ご、ごめんなさい!」
「え?」
「わ、私、この人に近付きませんから!」
「どういう事?」
「あ、あんた何て、元々タイプじゃなかったし……鴨がネギ背負って来たから……ごめんなさい!」
治子は頭を下げ、走って逃げてしまった。
「……………………」
「西田さん、モテる訳無いでしょ?」
「本当に馬鹿だな」
「お前等な……」
「身内の話は後でやって貰って……助けた報酬といきますか?」
「おお、その声は電話の!……よし手塚、西田さんの鞄を探せ!」
「任せろ!押さえとけよ!……有った、この紙袋だな!」
喜多が西田を羽交い締めにし、手塚は西田の鞄から紙袋を取り出す。中には100万円入っている。
「よし、これを4等分な!」
「意義無し!」
「馬鹿、俺の金だ!」
「騙されて、取られてた金でしょ?」
「救ったのは、俺達ですからね!」
「続けるなら、あのままならもっと取られてた筈ですね」
「「あんた、いい事言うね~!」」
結局、1人25万円の報酬でこの件は解決となった。
ちなみにだが、守人は詐欺集団をこのままにしては置かなかった。警察に匿名で連絡し、この詐欺集団は全員逮捕となった。
「しかし、馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど……」
「ここまで馬鹿とはね~……」
「何だよ!」
「「黙れ、馬鹿!」」
「後はそっちで……俺達はこれで……」
「どうも、失礼します」
「いやいや、うちの馬鹿がすいません」
「ジムは違うんすけどね」
守人と剛、喜多と手塚はお互いに頭を下げ、守人と剛は帰って行った。
「後で、篠原会長から説教ですからね」
「馬鹿!身の程をわきまえろ!……甲斐も苦労するよな……」
喜多と手塚から、きつい言葉を貰う西田である。この後、SKT拳王ジムの篠原会長からきついお説教があったのは言うまでもない。
「……お払いに行こう……」
西田、懲りてない様である。
……言葉が無い……




