どうでもいい依頼!……其の1
いつもと趣向が違う様で……
いつもの様に、剛は事務所に居る。守人とコーヒーを飲んでいるのだが、
「剛、俺はこれから出掛けるんだが……留守番、大丈夫か?」
「小学生でも出来るわ!」
「……変な依頼、引き受けるなよ」
「大丈夫だよ!簡単な依頼なら、俺が解決するから!」
「……それが心配だ……看板に、傷を付けるなよ」
「任せとけって!」
コーヒーを飲んで出掛けた守人、本日は剛1人で事務所に居る事となった。
1人になった剛、最初こそ掃除をして書類の整理をしてと色々とやってはいたのだが、元々荷物の少ない事務所、すぐにやる事は終わってしまう。
(暇なんだよな~……)
剛はインターネットを開き、特に何を見るでもなくネットサーフィンをしていた。
[トントン]
ドアがノックされ、剛はドアを開ける。中年から初老といった感じの男が立っていた。
「解決屋かな?」
「はい……まぁ、どうぞ」
「悪いね」
剛は男をテーブルに案内し、コーヒーを出した。
「カフェオレが良かったんだけど?」
「贅沢言わないで下さい。出されただけで有難いでしょ?」
「……客だよ?」
「だから?」
暫く、剛と男はお互いの顔を見合った。
「それで、どんな依頼ですか?」
「それなんだけどな~……絶対内緒だぞ?」
「内緒って……守秘義務は守りますけど……」
「俺な……結婚したいんだよ!可愛い彼女欲しいんだ!」
「……結婚相談所行けよ」
「これでも、ボクシングジムの会長なんだよ!堂々と行けないだろ?」
「……マッチングアプリ使えば?」
「マッチング?……それ、怖くないの?」
「知らない。使った事ないから」
「おい!俺は真剣なんだぞ!」
「……どうなると解決なんです?」
「とりあえず……可愛い娘と知り合いになりたい!」
「……一応聞きますけど、名前と報酬は?」
「西田拳闘会会長の西田だ!報酬は1ヶ月間のカレーの無料券!」
「……却下!お帰りを」
「待て、何だったら2ヶ月間にするぞ?」
「……馬鹿過ぎる……」
「頼むよ~、大盛りもサービスするからさ~……」
「……解決出来ないかもですよ」
「構わないよ、協力してくれ!周りは冷たいんだよ~……」
「……ここまで馬鹿だと、誰も協力しないな……はぁ、分かりました、協力します」
「本当か?ありがとう!……俺な、新○結○みたいのがタイプでさ~!」
「阿呆か!身の程をわきまえろ!協力するだけだ!」
「分かってるよ~、そんなに怒るなよ~……短気は損気だぞ?」
疲れる客である。剛、本日は外れの依頼の様である。
剛はとりあえず、集団見合いが出来る所はないか問い合わせてみた。何と、そのうちの1つに空きが有り、本日に集団見合いが開催されるという。
〔2人空きが出ましたので、お2人なら受け付けします〕
「……2人か……」
剛が呟くと、西田が隣から割って入って来た。
「参加します!丁度2人です!」
〔そうですか!では、現地でお待ちしております。よろしくお願い致します!〕
電話は切れてしまった。
「誰が参加するんだよ~?」
「勿論、俺と君!」
「はぁ?俺も?」
「当たり前!俺をもり立ててくれ!頼むぞ!」
何と、剛も集団見合いに参加決定である。
電車にて、現地に向かう2人。
「車のが良くないか?」
「渋滞で遅れるわ!」
「おお、そうか!考えてるな~!」
「……何でこんなに馬鹿なんだよ……」
剛の呟きと曇った表情は西田には伝わらない様である。
目的地に着いた剛と西田、すぐに受け付けを済ませる。
「では、プロフィールを作りますので……」
「俺から!ボクシングジムの会長で、結構稼いでますんで!」
「年収はどれくらい?」
「年収……大体……1500くらい……かな?」
「あら!いい感じですね!……そっちの方は?」
「俺ですか?え~と……先月が400だったし……5000は下らないのか?……凄ぇ稼いでんな……」
「5000!……何で来たんですか?来なくても……」
「一応、この西田さんの付き添い」
「成る程……では、年収500くらいにしときますか?」
「そうですね、お願いします」
「職業は?」
「……自営で……」
結局、剛は自営で年収500万円とした。西田はジム経営、年収1500万円である。
広いスペースに案内された剛と西田、少しすると女性陣が入って来た。男性20人女性20人、なかなか大きなイベントである。
最初にそれぞれ自己紹介し、それから一通り話す機会が設けられた。自己紹介で、意外に西田に人気が集まる。年収が確かに良いので、有り得る話では有る。
1人1人と短時間だが話をしている。西田も意外にちゃんと答えている。こういう事は、案外しっかりしている。
「あの、ジム経営ってどんな……」
「ああ、ボクシングジムを経営してるんです!世界チャンピオン、甲斐拳人は俺の教え子でして!」
口もなかなか上手い。褒めていいのかは分からない所ではあるが。
「あの~、自営って何を?」
「そうだな~……便利屋…みたいな……物?」
「どんな仕事が多いですか?」
「……厄介事……西田さんみたいに……」
「大変そうですね~……パートナーは欲しくないですか?」
「……欲しくない……と言ったらまずいかな……」
剛は呟いて、苦笑いをしながら頭を掻いた。剛としては、特に自分の事をどうにかしようとは思っていない。西田からの依頼の為に、仕方なしに参加している。
どうやら、西田は気合い充分の様である。果たして、この依頼はしっかりと解決となるのだろうか。
あ、すいません……
この話、続くみたいです……




