解決法は前代未聞!……其の1
本当の意味で、本編がスタートです。
さて、守人はどんな仕事をしてるんでしょうかね。
守人に連れられ、とある事務所に案内された剛。ドアには貼り紙がしてある。
[解決屋]
どんなお困り事でも必ず解決致します。
報酬は前金、お金はお断り。
注意
嘘はお断り。
「……解決屋?」
「そう、俺の仕事」
「……何でも解決するの?」
「勿論!解決率は100%!……でも、客は選ぶけどね」
「……本当に、どんな困り事でも?」
「疑ってるな?」
「そりゃあ……報酬は、お金じゃないの?」
「そう、物だね」
「……例えば、この時計とか?」
剛は腕時計を見せた。海外の有名な時計という訳ではなかったが、それでも20万円した腕時計である。剛のお気に入りではあったのだが、それを渡してでも今回の事は解決したい様である。
「……なかなかいい時計だね?……今回の件なら、それでいいよ」
「今回の件て……話してないけど?」
「助けた女に裏切られ、会社での立場もヤバければ訴えられるかもしれない。大きな契約をなんとか成立させたいんだろ?」
「な、何で分かるんだよ……マジックか?」
「さぁて、どうかな……それで、依頼はどうするんだ?」
「……この時計で頼む!」
「引き受けた。しかし……問題が有る」
「何だ?」
「つよっちゃん、身長178cmもないよね?……俺が170cmだから、いい所175cmじゃないの?」
「んな事ねぇ!俺は178cmだ!」
「頑固だね~……それと、つよっちゃんて面倒だから、剛でいいよね?」
「……つよっちゃんも許してないんだけど……」
守人、なかなか馴れ馴れしい奴の様である。
とりあえず、剛は守人に仕事を依頼した。前金として、腕時計を剛は守人に渡した。守人は1度、剛を会社に戻らせた。その上で、本日の21時に事務所に来る様に話した。どうやら、その時間から守人は剛からの依頼を遂行する様である。
(……大丈夫なのか?……胡散臭ぇ……)
剛は頭を掻きながら、一旦会社に戻った。
21時15分前、剛は守人の事務所に向かって歩いていた。
「くそ、何だよ全く……大体、何でも俺が悪いのかよ……」
剛は今もブツブツと言っていた。
昼間、会社に戻った剛を待っていたのは、事の顛末を新しい取引先になる筈だった会社から連絡を貰った上司であった。
「部長室に行きなさい」
上司に言われた剛、部長室にすぐに行ったのだが、
「明日から自宅謹慎、処罰は追って連絡します」
との事だった。剛が今回の事を全て責任を取らされる様である。納得のいかない剛ではあるのだが、日中よりも随分マシである。一人言が周りに聞こえていない。少しは落ち着いたという事だろうか。
21時5分前、剛は守人の事務所に着いた。
「お~い、来たぞ」
剛はノックをし、少し大きく声を出した。
「待ってたよ、どうぞ」
守人が笑顔で出迎える。
「こっちに来て、これに着替えて」
守人が差し出したのは、黒のパーカーである。守人は日中もそうだったが、上下黒で統一されている。そして、左手には黒の手袋をしている。最も、手袋は指の部分は無く、手の甲をマジックで止める物である。
「……着替えるの?」
「目立たない様にね」
「……サイズ合うかな~?……あれ?ぴったり!」
「ちゃんと選んだからね……ズボンは黒で良かったよ」
「??……何だか分かんねぇけど、それなら良かった……所で時さん……」
「守人でいいよ。これからどうするかって疑問かな?」
「そうだけど……」
「まぁ、信用してよ」
「……そうするしかねぇかんな」
「はっはっは、剛はやっぱり優しいな」
「やっぱりって何だよ?」
「さて、何だかな……着いて来て」
守人は事務所から出ると、足早に路地裏を歩いて行く。その後ろを剛は着いて行く。少しすると、小さな建物に入って行った。その建物の地下に守人は向かう。余り大きくない部屋に入る守人と剛、入った瞬間に剛は少し目眩がした。
「さて、これから依頼を遂行するとしよう」
「ちょっと待て、ここでどうするんだ?」
「それは、これから分かるよ……大丈夫?ふらふらしてるよ?」
「少し目眩がな……」
「まぁ、ここは結界が張って有るからね」
「結界?」
「まあまあ、話は後で……こっち来て」
「おう……どうすんだ?」
「俺の横に立っててね……さて、始めるか……」
守人は左手の手袋を筈し、目を閉じた。少しすると、左手の甲に六芒星が浮かび上がり、七色に輝き始めた。
「す、凄ぇ……スロットなら、大当たりだ」
「あのねぇ……何でここでパチスロなのさ」
「いや、何となく……」
「いつもこれだよ……」
「初めましてだよね?」
「話は終わり、行くよ」
守人の六芒星の輝きが増し、それと同時に守人と剛を中心に地面に六芒星が七色に浮かび輝き出した。一瞬、剛の目に映る風景が揺らいだ様に感じた。
「さて、終わり……とりあえず、問題解決しに行こう」
「は?……解決しに行こうって……」
「はいはい、話は後々……着いて来て」
守人は部屋から出て行く。
「ま、待てよ!」
剛は慌てて着いて行く。
外に出た2人、
「剛、何処で揉めたの?」
「揉めた?…何を?」
「飲み過ぎて、揉めたんだろ?その場所!」
「あ~、あっちの公園」
「よし、案内して」
「おう……意味有るの?」
「かなりね」
剛は守人を公園に案内した。本日も金曜日、この間の剛と一緒で酔った人達も多く居る。
「ここがその公え……ん?」
「静かに!…少し様子見るよ、剛はスマホで録画」
「お、おう……しかし、またあいつ等……」
剛の目の前には、先週助けた女性とそれに絡むこれたま先週投げ飛ばした男2人が居た。何故か、男達は怪我をしていない様である。
「お姉さ~ん、遊ぼうよ~!」
「可愛がって上げるからさ~!」
「嫌です、辞めて下さい!」
「いいじゃないか、付き合えよ!」
「一緒に遊ぼうぜ!」
女性は明らかに2人を嫌がっていた。
そこに現れたのは……何と、酔っ払った剛である。
「お、おいあれ……俺か?」
「そうだね、間違いなく剛だ」
「な、何で?」
剛は頭がこんがらがっていた。自分がここに居るのに、何故か自分がまたあの女性を助けている。
「ど、どうした俺?…あっちに俺が居て、ここにも俺が居て……そうなると……俺は俺で俺が……俺か?」
「……阿呆に見えるよ」
守人の言葉も届かないくらい、剛は混乱している。剛の悩み事、解決の前に一大事を迎える事になった。
剛、頭が混乱!
誰でも混乱するよね?