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俺が居ない俺の町……  作者: 澤田慶次
19/64

作られたヒーロー!……其の5

遂に解決!

現代に戻ると思われた守人だが、もう1つ寄る所が有るとの事。剛も付き合い、タイムワープをして、とあるキックの試合会場に向かった。

試合会場に入った2人、丁度メインイベントである。

[赤コーナー、ムエタイ無敵の王者にして現キックフェザー級チャンピオン……ラジャ·ラジャム~!]

赤コーナーのチャンピオン、右手を上げてアピールをする。

[青コーナー、不屈の闘志でここまで登り詰めた男!日本の誇る鬼!闘鬼(とうき)、黒鉄武~!]

青コーナーの武が右手を上げる。

「守人、武がやったな?」

「いや、やってない……しっかりと、最後まで見とけよ」

「お、おう……」

守人の今までに見た事のない厳しい表情に、剛は一瞬怯んだ。


試合が始まると、物凄い打撃戦となった。元々ラジャムは距離を取る選手ではない。最初からガンガンに前に出て来る。

対する武だが、こちらも打撃戦に対応する。全く引く気はない。真正面から、2人は殴り蹴って行く。

この試合、確かに互角に見えている。武は頑張っている。しかし、武とラジャムでは実力が違う。パンチの重さ、蹴りの威力等、根本的にラジャムの方がレベルが上である。互角に見えるという事は、武がそれだけ精神的に上回っているという事である。

それでも、現実というのは残酷である。試合が進むに連れ、明らかに武にダメージが残っていく。一方的に打たれる場面も有れば、ぎりぎりの所でダウンを逃れるシーンも出て来た。

最終ラウンド、武は玉砕覚悟で最後の打ち合いをする。ここでもラジャムが上回るのだが、武の右ストレートがラジャムを捉えた。次の瞬間、ラジャムの右ハイキックが武を捉え、武は大きくよろけたのだが、これを何とかクリンチをしてダウンを凌ぐ。ここでラウンド終了のゴングが鳴った。

判定となる。

[判定……3-0、赤コーナー、ラジャ·ラジャム~!]

ラジャムの左手が上げられる。それを物凄い鋭い目付きで横目に見た武、そのままリングに前のめりに倒れた。

場内騒然となり、すぐに救急車がやって来る。

「守人、大丈夫だよな?」

「……………………」

「おい、守人!」

「……何をやっても、変わらない事は有る。武の命は……」

「守人、そんな事ねぇだろ!」

「……帰るぞ……」

「しかし……」

「いいから、帰るんだ!」

守人は剛の手を引き、無理矢理に会場から連れ出した。そのまま無言で、2人は地下室に向かった。


地下室に入る2人。

「……守人、武は……」

「どうにもならん事は有る……しかし、惇の目には、きっと武の勇姿が映っただろう……」

「……そうか、確かに惇には……そうだな、うん……」

「よし、帰るぞ」

「おう……」

2人は現代に戻った。

「……所で、ダイヤの原石は?」

「これか?……バッチリだろ?」

「何で消えないんだ?」

「服部会長が飲んでた所……そこに有ってな」

「まさか」

「嫌だな~、いつの間にかポケットに有ったんだよ~」

「泥棒だぞ!」

「不可抗力だな、しょうがない……さて、これを処理するか」

「どうやって?……惇はそんな依頼しないだろ?」

「まぁ、付いて来いよ」

守人は剛を連れて、とあるジムに向かった。


ジムに着いた2人、[黒鉄キックボクシングジム]と書かれている。

「おい、これ……」

「入るぞ」

「待てよ」

守人と剛はジムに入った。

「入会希望の方?」

「いや、これからオープンて事で……これを渡そうと思って」

守人はダイヤの原石をポケットから取り出した。

「おお!これ……かなりデカイ……凄ぇな……」

「これから、ダイヤの原石を本物のダイヤしていくあんたには、これはお似合いだろ?」

「……確かに、俺にはぴったりかもな」

「やるよ」

「いや、こんな高価な物……」

「……なら、買い取ってくれ。俺には必要ない」

「分かった」

惇は一旦その場を離れ、紙袋を持ってすぐに戻って来た。

「手持ちはこれだけだが、どうた?」

紙袋の中には、100万円の札束が5つ有る。

「本当にいいのか?」

「これくらいの価値は有る!俺はそう思う!」

「……後悔するなよ」

「しないさ!……いいのか?」

「よし、売った!」

「ありがとう、大切にするよ」

「おう、よろしくな」

「あの~……黒鉄惇さん。黒鉄武さんは……」

「お?親父を知ってるのか?嬉しいね~!……親父に笑われない様に、俺はやって来たつもりさ」

「……きっと、お父さんも喜んでますよ!」

「そうかい?ありがとうな!」

「いやいや」

守人と剛は頭を下げて、ジムを出て行った。


事務所に戻った守人と剛。

「……黒鉄惇は引退か……」

「剛、これ見ろよ」

守人はパソコンを剛の方に向けた。


黒鉄武と黒鉄惇


黒鉄武は、当時無敵と言われたラジャムと試合をした。物凄い打撃戦の末、ラジャムが勝利して無敗のレコードを更新した。

この試合で、黒鉄武は帰らぬ人となった。日本のキックボクシング界は、貴重な人材を失った。これと同時に、世界のキック界は無敵の戦士を失う事になる。ラジャムは黒鉄武との試合の後、脳出血が発見され引退を余儀なくされる。試合が終わって尚、試合の壮絶さが伺える。

「黒鉄武、彼と拳を交えた事は、私の誇りだ」

引退したラジャムが、黒鉄武を称えた言葉である。間違いなく、ラジャムの歴史で1番の難敵であった。

それから15年、ラジャムが[私を超えた選手]と称した教え子である、ガオグン·ゲーンソトがキックの世界チャンピオンに君臨すると、これに挑戦したのが当時23歳の黒鉄惇である。黒鉄武とラジャムの試合再びと銘打たれた試合、最終ラウンドに惇の右ハイキックが決まり、見事に惇はKOで世界チャンピオンとなる。この試合より、黒鉄惇は[闘神(とうしん)]と呼ばれる様になる。

以降も勝ち星を重ねた黒鉄惇、34歳で現役引退し自分のジムを設立するという。是非とも、後継者を育てて欲しい所である。


「黒鉄の血、確かに引き継いでるだろ?」

「そうだな……やっぱり、黒鉄惇は俺のヒーローだ」

「日本キック界のヒーローだよ、黒鉄武も黒鉄惇もな」

「……感無量だな……」

「よし、寿司でも食いに行くか?」

「おう、行こうぜ!」

2人は寿司を食べる事とした。どうやら、これで本当に解決である。黒鉄武も黒鉄惇も、確かに救われた。守人と剛、本当のヒーローかもしれない。

「会計は剛な!」

「はぁ?お前が上司だろ?」

「この前、奢っただろ?」

「知りませんな~?気のせいでは?」

「阿呆か?4万円は気のせいじゃないだろ?」

「ケチ臭ぇな~、いいから奢れ!」

「それが奢られる者の言い方か?」

「うるせぇな~、器が小さいぞ」

「お前に言われたかねぇよ!よし、お前で決定な!」

「何でだよ!」

「何でもだよ!」

寿司屋で揉めている。ヒーローではない様である。

キック界のヒーロー、見事に守りました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど。 この親子の強さは本物でしたね。 そして次の依頼はどうなることやら、、、楽しみです。
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