作られたヒーロー!……其の3
まだまだ色々……
地下室に戻った守人と剛、
「守人、後は武を脅してる奴等だな?」
「……短絡的というか馬鹿というか……単純な仕組みだな、お前の頭?」
「喧嘩売ってんのか?」
「そんな簡単なら、俺達は要らねぇって事だよ……次に行くぞ」
守人と剛、次の時間に移動した。
地下室から出た2人、
「……さっきと、余り変わらないが?」
「あれから3日後だ」
「3日後!?……どうして?」
「すぐに分かるさ、着いて来い」
どうやら、着いた先は先程から3日後である。既に夜であり、今日は星空が綺麗である。
スタスタと歩く守人に、後ろから文句を言いながら着いて行く剛。守人には、何か考えが有る様である。
不意に守人は足を止めた。
「ここだ、入るぞ」
「入るって……高そうだぞ?」
「飲む訳じゃない、大丈夫さ」
守人は高級そうな飲み屋に入って行く。後ろを剛が、キョロキョロしながら着いて行く。
「いらっしゃいませ!」
「客じゃない。服部洋介、服部ジムの会長に用事が有る」
「その様な方は来ていないですが?」
「1番奥の、人目に付かない所……3人の裏社会のお偉いさんと、お付きの方が5人……かな?」
「そこまで知っていて、どうぞと通すとでも?」
「通るよ。剛、お願い」
「は?お、俺がやるのかよ?」
「助手の仕事だよ」
「おいおい……」
「ごちゃごちゃうるせぇ!」
ボーイが殴り掛かって来たのだが、剛が合気道で投げ飛ばしてしまった。
「やるね~、流石は剛!」
「びびった~……」
この騒ぎを聞き付け、服部会長が姿を表した。
「おや?奇遇ですね?」
「お前……確か戸張……」
「服部さん、こいつは知り合いですか?」
「言いたかないが、選んだ方がいい」
「ちょっとした顔見知りです……」
「そう、顔見知り!そして、あんたと暴力団の関係を知る者!」
「……痛い目、見せて構わんですか?」
「……頼むよ、二度と口を聞きたくなくなるくらいに」
「分かりました。おい、お前等!」
『はい!』
守人の前に、黒いスーツを着た5人が立つ。
「守人、大丈夫なのか?」
「まぁ、見てろよ」
守人は左手の手袋を外した。
「後は頼んだぞ」
お偉いさんの3人のうちの1人が声を掛け、服部会長を含む4人が後ろを向いた。守人の前に立つ5人は、一斉に守人に遅い掛かる。次の瞬間、守人の左手の六芒星は紫色に光った。
[ピタッ!]
「……10秒、それが限界……剛には見えないね」
守人以外の全てが止まっていた。守人は時間を止めたのである。すぐに守人は、前の5人にスパーリングで見せた右拳の突きを当てる。止まっている為、見事に決まる。
「……漫画風に言うと、時は動き出す……かな?」
[ドゥン!]
守人に遅い掛かって来た5人が吹っ飛ばされている。
「な、何が有った?」
「ど、どうしたんだ?」
「何をした?」
3人のお偉いさんは驚いている。
「……守人、俺の知らない力がまだ有ったんだな?」
「お察しが良い!偉い偉い」
「おちょくるなよ」
守人は服部会長の方に顔を向ける。
「そちらの3人も加えて、話をした方がいいかな?」
『……………………』
「剛、奥に行くぞ」
「おう、付き合うぜ」
守人と剛は店の奥に歩いて行き、服部会長を始めとする4人は後を着いて行く。
奥のテーブル、店から死角になっており誰からも見られない所、そこに6人は座った。
「さて、早速本題だが……黒幕は服部会長だね?」
「……仕方がなかったんだ……」
「仕方がないとは?」
「……俺のジムの様な弱小ジムは、こうでもしないと……」
服部会長の話の途中、剛が割って入る。
「服部会長、分からなくもないが……選手が夢を持てないですよ」
「約束する、必ず辞める!だから……」
「あっはっはっはっは!剛、本当に人がいいな?」
「話の腰を折るなよ……」
「いいか、本当に辞めたいなら……あそこで倒れてる5人、止めないか?」
「……こっちの3人が……」
「この3人、絶対に絡む筈だろ?自分達が悪いって言われてんだぜ?……どうせ、この後闇討ちか何かを考えてんだろ」
「ま、まさか……ねぇ、服部会長?」
「……幾らだね?……幾らなら、我々の味方になる?」
「服部会長?」
「ほ~らな、本性が現れた……武はチャンピオンクラスに強いんだ、普通に稼げる……しかし、武が引退したら服部ジムは儲からない。武を縛り、ジムの利益……弱みを握って言いなりにさせる。合理的だろ?」
「……生きて帰れると思うなよ」
服部会長が話すと同時に、守人の横に座っていた男が守人の喉元にドスを突き付ける。次の瞬間、守人の左手の甲に紫色に光った六芒星が浮かび上がる。
[ピタッ!]
「結構疲れんだよね~……はい、ご苦労さん」
守人は右拳の突きを服部会長以外の3人の顔面に決めた。そのままドスを奪った守人、服部会長の喉元にドスを突き付ける。
「時は動き出す」
[ドゥン!]
服部会長以外の3人、顔を潰されながら後ろに倒れた。
「な、何だ?」
「動くなよ、形勢逆転だ」
「な、何だと……」
「どうする?死ぬか?」
「ま、待ってくれ、俺が悪かった……武からは手を引く……」
「本当か?」
「ほ、本当だ……すまなかった……」
守人はドスを投げた。
[ドスン]
店の壁に、ドスは見事に刺さった。
「剛、行くぞ」
「お、おう」
守人と剛は店を出て行った。
少し歩くと、守人は公園に入って行く。勿論剛も着いて行く。すぐにベンチに座った守人、剛も隣に座る。
「は~……疲れた……」
「大丈夫か?」
「おう、時間止めんのは疲れんだ」
「時間を止めるぅ?……まさか……」
「あの店での出来事、説明出来んのか?」
「……時間が止まれば、確かに出来ます」
「よろしい」
「……服部会長、あれで引くのか?」
「お?少しは成長したな!……絶対引かねぇな」
「どうすんだ?」
「考えがある……それより、剛、ジュース買って来てくれ」
「おう、構わんぞ。何でもいいのか?」
「おう、そこに自販機有るからな」
この後、守人と剛はジュースを飲みながら、少し休んでいた。まだまだ解決とはいかない様である。
複雑……