真に怖いは人間……其の4
遂に解決!
地下室に戻った守人と剛、
「現代に帰る前に……」
「桑門さんの未来を見る……だろ?」
「おう、行くぞ」
「がってん承知!」
守人と剛、桑門の未来を見に行く事にした。
剛の目眩が治まり、2人は外に出た。
「どっちだ?」
「こっちだ、着いて来い」
「おう、よろしくな!」
2人は山の奥に歩いて行く。
暫く歩く2人。かなり歩いているが、どちらも文句を言っていない。それだけ、桑門の未来が気になる様である。
更に2時間程歩き、とある村に着いた。
「剛、こっちだ」
「おう」
守人に連れられ、剛は小高い丘に案内された。2人はそこで腹這いで横になり、見付からない様にして村を見ていた。
「守人、ここは大丈夫なのか?」
「ここはな、龍神様を祀ってる村だ。変な事は起きねぇさ」
「龍神様か……確かに協力そうだな」
「お!桑門だ!」
「本当だ!」
桑門が家から出て来た。村人と色々と話をしている様だ。桑門の表情は穏やかであり、何処と無く優しさが溢れている。
「どうやら、終の棲家を見付けたらしいな」
「そうだな……守人、何か有るんだろ?」
「察しがいいね!……少し見てろよ」
「やっぱりな!だと思ったよ」
2人が暫く見ていると、1人の女性が村を訪れた。それを桑門が迎え、色々と話をしている。桑門の顔が一層優しくなり、そのまま村に女性を迎え入れた。
「守人、あれは?」
「五行さんの先祖の1人。やっと、桑門と会えた訳だ」
「……五行さんの先祖、どうしてここに?」
「五行薫が話してただろ?何処の村も受け入れてくれなかったのさ」
「そうか……何だか、寂しいな」
「どうして、桑門の呪いが強くなったか分かるか?」
「??……どうしてだ?」
「自分に縁の有る人間が、自分達を貶めた人間達に付いている。桑門がどれだけ怒り狂うか……少し考えただけで、ゾッとしないか?」
「成る程……納得だな」
「さて、帰るか?」
「おう、満足だ」
守人と剛、満足の様である。
帰り道、剛は遠いと不満を言っていたが、顔は笑顔であった。守人は剛に文句を言っていたが、こちらも笑顔である。
現代に帰って来た守人と剛、そのまま事務所でコーヒーを飲んでいた。
「剛、今回も頼むな」
「おう……ルノアールか?」
「そうだ、7番テーブルな」
「……誰が来るんだ?」
「それは……会ってのお楽しみだな」
「……怖い人じゃないよな?」
「それは大丈夫だ……500だからな」
「はいはい、そこはがめついな」
「お前の取り分が有るからだよ!」
「はい!頑張らさせて頂きます!」
剛はコーヒーを飲み干すと、水晶を入れたリュックを背負って事務所を出て行った。
喫茶店ルノアールに着いた剛、7番テーブルには先にサングラスを掛けた女性が座っている。
「すいません、依頼者の方でしょうか?」
「はい、そうです!」
「では、相席を失礼します」
剛はテーブルに着くと、ブラックのホットコーヒーを頼んだ。すぐにコーヒーが来る。剛はそのコーヒーを飲んだ。
「それで、水晶の方は……」
剛の前に座っている女性が、サングラスを外しながら喋った。
「……五行…薫……」
「はい、そうですけど……どうしました?」
「いや、ちょっとね……」
剛は驚いていた。五行薫が物凄く綺麗だった。タイムワープ前、左目を潰され、右の口を裂かれた顔の記憶しかない。改めて未来は変わった、剛はそう思った。
「あの~、五行薫さんですよね?…握手とサインをお願い出来ますか?」
「はい、私で良ければ」
近くのテーブルに座っていた女性が薫に話し掛け、薫は笑顔で対応した。この事で、本日ルノアールには数人の客しか居なかったが、その誰もが薫のサインを貰う為に声を掛けて来た。
「……大人気ですね」
「……一応、色々とドラマや映画に出てるんだけど……私もまだまだ、頑張りが足りないみたいね」
「いやいや、私は余り、テレビ等を見ないですから……これで、間違いないですか?」
剛はリュックから水晶を出した。薫は水晶を手に取る。
「ちょっと待って下さい…………これで間違いありません。ありがとうございます」
「そうですか、良かった」
「今、見ただけで何が分かるかって思いましたね?」
「いや、別に……」
「私、少しですけど霊能力が有るんです。だから、偽物か本物かくらいは分かるんです」
「……そうですか。なら、今回は安心ですね?」
「はい、ありがとうございます。では、こちらが約束の物です」
剛は差し出された紙袋の中身を確認した。
「確かに……それではこれにて……」
「今度、映画に出るんです。江戸時代中期のとある村の話……大蛇丸っていう大蛇を倒した言い伝えを元に、色々脚色付けて映画に……私はヒロイン!」
「……凄いですね」
「でも……少し弱いんですよ……化け物相手に、人間だけなんて……」
「こちらも味方に凄いのを着ければ……例えば、九尾の狐なんかね」
「それ、凄いアイデアです!監督に話してみます!」
「それでは、映画、頑張って下さいね」
「ありがとうございます。あ、コーヒーは私が払います!本当にありがとうございました」
「そうですか、それではご馳走様でした」
剛は頭を下げ、ルノアールから出て行った。
事務所に戻った剛、
「これ……俺は200だな?」
「活躍してない癖に……」
「大活躍だっただろ?」
「何処が?…それより、剛、この護符持ってろよ」
「護符なら……あれ?ボロボロ……」
「江戸時代の物だからな」
「あの狐のキーホルダーは?」
「これか?…これは秘密兵器さ」
「九尾の狐に関係有るんだろ?」
「なかなか鋭いね~、成長したね、立派立派!」
「気になる言い方だな~……所で守人、金成はどうなったんだ?」
「これ、見てみろよ」
守人は自分が使っているノートパソコンを剛の方に向けた。
金成と桑門和尚
江戸時代中期、小さな村で金塊を見付けた金成修はそれを一人占めしていた。村に疫病が流行っても、修はびた一文村の為にお金を出す事はなかった。
村の疫病が解決すると、修は村を追われる。追われて着いた先、元僧侶で村長の桑門に助けられるのだが、桑門を陥れようとする。それを村人達が未然に防ぎ、修は罰を与えられる筈だったのだが、
「人を罰した所で、戻って来るのは恨みや辛み……罪を憎んで人を憎まず」
桑門村長の言葉で、修は村からの追放のみで済んだとの事。
もう何百年も昔の事であり、龍月村と呼ばれた村の確かな伝説である。その後、桑門村長は子供達が立派に巣立ち、愛妻の死に立ち会うと寺を建て、いつまでもその教えを広めたとの事。桑門住職の寺、何処の事を言っているのか定かではないが、確かに今も健在との事である。
「納得かな?」
「ああ、満足だ!……五行薫、それ程力は無かったみたいだな?」
「必要がねぇのさ。危険はなくなったからな」
「成る程……本当に解決だな」
「よし、じゃあ今日の第7レース、連勝単式7-4に200万だな?」
「何でだよ!」
「楽しいだろ?剛が負けるの!」
「お前だけな!」
守人はテレビを着ける。丁度、競馬中継をしていた。
第7レース、始まると守人の言った通り、連勝単式7-4が来た。74.8倍である。
「馬鹿だよな~、折角教えてやったのに」
「おま、ずるいぞ!」
「信じないお前が悪い!フッフッフ、これ何だと思う?」
「……買ってたのか?」
「オフコース!……よし、分厚い肉でも食いに行こうっと!」
「お供します!」
「頼んでねぇよ?」
「またまた~、寂しいんでしょ?」
「特にはないな」
「そう言わずに!さぁ、肉が待っていますぞ!」
「……調子の良さは世界一だな……」
結局、守人の奢りで結構いい肉を腹一杯食べた剛であった。
兎に角、無事に一件落着である。次は、どんな仕事が待っているのか。
旨い肉!
楽しそうな2人です。