真に怖いは人間……其の1
作品の順番を間違えました。
すいません、これから気を付けます。
本日も剛は事務所で守人とコーヒーを飲んでいる。
「参ったな~……スロットが7連チャンしたんだけどさ~……」
「結局呑まれたんだろ?」
「そうなんだよ~!20万くらい勝つつもりだったんだけどな~……」
「お前、欲望の塊じゃねぇのか?」
「何言ってんだ?俺はパチンコとスロットにしか貪欲じゃねぇぞ?」
「……この前競馬……」
「あれは、ただの気まぐれだ!」
「……そうしとく……」
「気まぐれオ○ンジ○ー○!」
「……一応、分からなくしとくからな」
くだらない話をしていると、
[コンコン]
ノックの音がした。
「はい、どうぞ」
「すいません……」
そこには、マスクとサングラスをした女性が立っていた。静かに事務所に入り、守人と剛の座るテーブルの前に座る。
「依頼は何?」
「守人、依頼じゃないかもしれないぞ?」
「……解決屋で、間違いないですか?」
「依頼だったね、剛」
「はいはい、そうですね……コーヒー入れますね」
剛はコーヒーを入れ、女性の前に置いて改めてテーブルに着いた。
「……私達一族を助けて下さい」
「助けるとは?」
「はい……私達一族は呪われています。私は構いませんが……息子をどうにか救いたい……」
「呪いとは……これまた、大分特殊な……」
「はい……」
「ちょっと待って下さい。呪いって……今西暦、何年だと思ってるんですか?」
「剛、科学じゃ説明出来ない事も有るんだよ」
「科学では説明出来ない事が、あなたにも明日……ってな訳有るか!」
「……すいません、これで信じて貰えますか?」
女性はマスクとサングラスを外した。左目は火傷の様な傷が有り、瞼が完全に閉じている。口は右側が裂けており、とても直視出来ない。剛は言葉を失った。
「私達一族は、とある富豪をある呪いから守っています。何代も何代も……もう数百年になります……ある時、その一族にとても力の有る者が生まれました。これで、呪縛から放たれると思ってました……全く違いました……呪いをしている者の力が強くなっていたんです。もう、私達の力では太刀打ち出来なく……このままでは、私の息子も…………どうか、息子を助けて下さい!」
「……呪い、なかなか厄介なんだよね~……どうして呪われたのか、それが問題だ」
「はい……誰にも公言しないで下さい……」
女性は話し出した。
時代は遡り、江戸時代も中盤の頃である。とある村に、一人の修行僧が立ち寄った所から話は始まる。
立ち寄った村は色々な問題を抱えていた。疫病や天災としか言い様がない災い等、酷く村人は苦しんでいた。村の立地条件は悪くなく、江戸から発展の為に何人もの役人等が村を訪れた。
それでも、災いは全く止まずに結局、その村は呪われている村と認定されてしまった。そうなると、村からおいそれと引っ越す訳にもいかない。他の村が、呪われた村の住人を受け入れる事は難しい。その村は、誰もが苦しんでいた。
そんな所に現れた修行僧、村人から温かいもてなしをされ、何とかこの村を救おうとした。修行僧は村に腰を据え、呪いの原因を探った。
そして、遂に呪いの元凶が分かった。修行僧は己の危険も返り見ず、その元凶を見事になくす事に成功した。村人は喜び、いつまでも修行僧に村に残る様に話をした。結果、修行僧も村を気に入り、その村に修行僧は住む事にした。
それから何年か時が経ち、修行僧は家族を持つ事になった。この頃になると、この修行僧を良く思わない者も出て来る。その筆頭は、村一番の富豪である。修行僧に、自分の権力を取られると思ったのだろう。そして、事件は起こる。
あらぬ疑いを掛けられた修行僧、罠に嵌められ家族もろとも捕まる事になった。無実を訴えたのだが、富豪はこれを聞く訳がない。富豪は修行僧の前で、ゆっくりと子供、妻と処刑して行った。
遂に修行僧の番となった。
「何かの間違えだ!もう一度……」
「間違えな物か、お前は何もやってないよ。儂の地位を脅かす以外はね!」
「……己の私利私欲の為……」
「そういう事だ、死ね」
「…………この怨み……末代まで呪ってやる……」
修行僧は首を跳ねられたのだが、その首は富豪の所まで飛んで行き富豪の手を噛んだという。世にも恐ろしい、嫉妬の話である。
「……この富豪が、自分達を守る為に雇ったのが、私達の一族です……」
「そんなとこだよね~……妬みや嫉妬、それが全部の引き金」
「ちょっと待て、そんな富豪なら、見捨てればいいんじゃないか?」
「見捨てる事が出来ればね」
「出来ないのか?」
「私達一族は……この類い稀な力から、色々な所で忌み嫌われました……唯一、私達一族を受け入れてくれたのが……」
「金成一族なんだろ?」
「はい……」
「だそうだよ、剛」
「……色々と面倒だな……」
「依頼、引き受けて……」
「報酬は?」
「これ……私達一族の宝……水晶……」
「いいね~、5·600万てとこかな?……引き受けましょう」
「ありがとうございます」
「守人、大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ!……所で、今日は帰るの?」
「はい、最終電車に乗れば……まだ間に合いますから」
「そう、ならこれ……暫くは安息が約束されるよ」
「こ、この護符……」
女性の右目が大きく開く。
「後これね」
「狐の……キーホルダーか?…守人、それでどうする?」
「まぁ、少しは役に立つ物さ……いいかい、自分達の身だけを守るんだよ。分かったね、五行薫さん」
「何で私の名前を……」
「それはいいから、分かったね?」
「……はい、分かりました」
薫は頭を下げて出て行った。
「剛、買い物お願い」
「はぁ?買い物だぁ?」
「必要なんだよ!」
「……で、結局は引き受けたのか?」
「報酬貰ったしな!」
「……胸糞悪い話だったぞ」
「それでも、五行一族には関係無い事だとは思わないか?」
「そりゃあ……」
「という事で、買い物よろしく!このメモの所で買って来いな」
「……分かったよ……このメモ細けぇよ、面倒だな」
「いいから買って来る!」
「はいはい……」
剛は守人に頼まれた買い物に出掛けた。話を聞く限り、かなり厄介な仕事である。
暑くなって来ましたので、こんな話でどうでしょう。涼しくなると、いいんですがね……




