新生解決屋、初めての仕事!……其の5
解決!……となるかな?
地下室に着いた2人、後は解決となる筈なのだが、
「剛、寄り道な」
「……危険は無いよな?」
「オフコース!」
「……本当か?」
「疑り深いね~」
「当たり前だ!何回騙されたと……」
「俺を信じろよ!」
「……それが1番不安だ……」
守人は、まだ寄りたい所が有る様だ。
剛にいつもの目眩が起き、守人は笑顔で外に出て行く。どうやら、目的地に着いた様である。
守人の後を着いて行く剛、またも電気屋の前を通る。
[さぁ、霧島が最終回のマウンドへ……ルーキー1年目、初めての先発。8回までに許したヒットは当たり損ないの1本のみ!……この開幕戦、ルーキー霧島は完封でプロ初勝利をもぎ取る事が出来るのか!]
剛はテレビに釘付けになった。
「おい、霧島航がプロになってるよ!」
「その様だ。さて、このまま勝てるかな?」
「1-0……痺れる展開だな~……少し見てようぜ」
「おう、構わねぇぞ」
守人と剛は電気屋のテレビに注目する。
試合はセリーグの試合、霧島航はセリーグの広島県のチームに入団した様だ。9回裏のマウンドも、小気味良い投球を見せる航。最後の打者を三振に打ち取り、見事にプロ初先発を完封勝利で飾った。
[それでは、今日のヒーローはこの人!…霧島航投手です!]
[ありがとうございます]
[ナイスピッチング!]
[はい、両親が来てますので……張り切りました~!]
『ワァ~~~~~~~~!』
スタジアム、物凄い熱気である。
「やったよな~!立派立派!」
「本当にな……さて、帰るか?」
「はい?……用事はこれ?」
「おう、どうなったか見たいだろ?」
「そりゃあ……守人、結構人情深い所有るんじゃねぇの?」
「何言ってんだよ、俺は元々優しいぞ」
「本当かな~?」
「何だよ、この時代に残してくぞ」
「それは無しだろ!」
守人も航の事が気になっていたらしい。どうやら、納得の結末の様である。2人はそのまま、改めて地下室に向かった。
現代に戻った。2人は事務所に行く。
「……やっぱり……血の跡がねぇな」
「ああ、未来は変わった」
「そうか……どうやら、解決だな?」
「いや、まだ仕事が有る。剛、これを売って来てくれ」
「この時計?……勿体なくねぇか?」
「売らないと金がねぇだろ?」
「でも……」
「いいから!…新宿にルノアールって喫茶店が有る。そこの7番テーブル、そこに客が来る。500万、分かったな?」
「がめついな~……300だろ?」
「プレミアが付いたんだよ」
「……分かったよ~……五分五分な」
「7:3」
「6:4」
「……乗った!」
「勿論俺が……」
「4に決まってるだろ!」
「やっぱり?」
剛は守人の依頼通り、新宿の喫茶店に向かった。
喫茶店の指定されたテーブルに座る剛、ホットコーヒーのブラックを頼んだ。
「しかし……どんな奴が来るのかな?」
剛は運ばれて来たコーヒーを飲みながら、ボソッと呟いた。
「すいません、お待たせ致しました」
言葉の方を向いた剛、
「あ、お、霧島……航……」
「はい、霧島です……あれ?人違いでした?」
「いや、俺は依頼されただけだから……時計で間違いは?」
「はい、間違い有りません」
航は剛の向かいに座った。
「……以前……何処かで会いました?」
「まさか……気のせいでしょう……」
「お名前は?」
「あ、な……長澤です」
「長澤さんですか……昔、私に野球を教えてくれた人に、何となく似てた様に思って……そうですよね、あなたは私よりも若い」
「そうですね……」
「しかし、お礼も言えなかったな~……プロになって、メジャーに行って……日米で通算448勝、メジャー通算254勝……色々な関係者を使って探したけど……中澤剛は見付からなかったな~……」
「……まぁ、そんな事も有るんじゃないですかね?……それより、どうしてこの時計を?」
剛はロレックスの腕時計を箱と鑑定証と一緒にテーブルに置いた。鑑定証を航は持ち、満面の笑顔で喋り出す。
「これこれ!親父が付けてた時計!……いつしか、俺も付けたいと思ってたんだよな~……お世話になった人に上げたって言ってたっけ……この持ち主は?」
「さて……それは知りません」
「そうですか~……親父の変わりに、お礼を言いたかったな~……」
「……失礼ですけど、ご両親は?」
「母親は元気ですよ。今も、色々と趣味をやってます。父親は……5年前、肺炎を拗らせて……」
「そうですか……」
「それでも、幸せだったって、いつも言ってましたっけね~……一緒に住んで良かった」
「工務店は?」
「知り合いに譲りました。今も頑張ってますよ」
「そうですか、それは良かった」
「これ……本当に500でいいんですか?」
「はい、そうらしいです」
「では、これで……」
航は紙袋を出した。中には100万円の束が5つ有る。
「確かに!……では、こちらを……」
「ありがとうございます!」
航はすぐに、ロレックスの腕時計を右腕に嵌めた。
「……やっとだな~……」
「では、私はこれで……」
「あ、ちょっと!……どうやって手に入れたの?」
「……企業秘密です」
「そうだよね……兎に角、本当にありがとうございました!」
「いえいえ……それでは……」
剛は立ち上がり、軽く頭を下げた。コーヒー代を払おうとしたが、航が持つとの事で剛は改めて頭を下げた。
事務所に帰って来た剛、
「守人、これ!」
「おう、ご苦労さん」
「ああいう事ね、なかなかやるな?」
「お褒めの言葉、痛み入ります。これ、お前の取り分な」
「おう、悪いな!……よしよし、これを貯金して……」
「貯金して、どうすんだ?」
「馬鹿だな~、お前と仕事して未来に行ったら……競馬で大儲けだ~!」
「剛、今日の第11レース……連勝単式9-1……347.8倍……」
「な·ん·だ·と~!…よし、200万全部突っ込むぞ~!」
剛は慌てて事務所を出て行った。
「……来る訳ねぇだろ、バ~カ!あ~はっはっはっは~!」
この後、剛は一瞬にして200万円を失くした。物凄い形相で事務所に帰って来たのだが、
「そんな簡単に金を稼がせると思ってるのか?」
守人の一言で撃沈した。とはいえ、守人は人生の勉強代として、改めて50万円を剛に渡した。剛はその50万円を、今度はしっかりと貯金した。
色々と有ったが、新生解決屋の最初の仕事、見事に解決である。この2人、色々とやってくれる……様な気がする。
一件落着!
迷コンビ誕生!名コンビになるといいな!




