困った時の解決屋?
困った困った、どうすればいいのか……そんな事を解決するのが仕事の男!変わっているのは確か……かな?
「困ったぞ~……参ったな~…………本気でどうする……」
ブツブツと言いながら、1人の男が歩いていた。すれ違う人はみんな彼を見て行くのだが、それだけ彼の一人言が大きいのである。その彼は、自分の言葉の大きさも分かっていない。頭を抱えながら、大きな一人言を言い、何処かに歩いていた。
彼の名前は中澤剛、現在23歳の独身でありサラリーマンである。本日剛は、実は会社の新しい取引先との契約の為にその取引先に訪問したのだが、そこで数日前の事で色々と厄介な事になっていた。
「本当に参ったな~…………」
…………1週間前…………
仕事終わりの金曜日、居酒屋で後輩と飲んだ剛、いつもはタクシーに乗って最寄り駅まで行くのだが、いつもより飲んだ剛は本日は酔いを覚まそうと駅まで歩く事にした。
「中澤さん、タクシー乗らないんですか?」
「おう、少し飲み過ぎたからな……気を付けて帰れよ」
後輩を見送りゆっくりと歩き出した剛、このまま何も無ければ、楽しい1日で終わったのかもしれない。
公園の前を通った剛、水でも飲もうかと公園の中に入って行った。
「嫌です、辞めて下さい!」
「いいじゃないか、付き合えよ!」
「一緒に遊ぼうぜ!」
公園の中を少し進むと、1人の女性が2人の男に絡まれていた。酒の勢いも有ったのかもしれない。元々、そういう性格なのかもしれない。剛はその男達に声を掛けた。
「嫌がってるよ~?」
「何だよおっさん!関係ねぇだろ?」
「帰れよ酔っ払い!」
「……分かりました!お嬢さん、一緒に帰りましょう」
女性の手を引いてその場から離れ様とする剛、
「おい、お前だけ帰れよ!」
「何してくれちゃってんの?」
2人の男は剛に絡んで来た。
剛は高校の頃は野球部におり、身体も大きかった。身長は178cm(自称)であり、割腹が良かった。更には、週刊少年誌の影響も有り高校卒業と同時に合気道を始めていた。剛の体格ならもっと違う格闘技の方が合っている気もするが、剛はどちらかといえば平和主義者であり、だからこその合気道なのかもしれない。
習慣とは恐ろしいもので、1人の男が剛の胸倉を掴むと次の瞬間には、その男は宙に舞っていた。酒を飲んでいる事も相まって、剛は合気道を使ってしまったのである。しかも、手加減が全く出来ていなかった。
この事に激昂したのは、もう1人の男である。その男は剛に向かって拳を突き立てた。この時、剛は酔っていた為にふらついており、結果的にそれが相手のパンチを避ける事に繋がる。そのままその男も、宙を舞う事となった。
この後、2人の男は逃げて行き女性は剛にお礼を言い、それで終了となる筈だった。本来なら、それで終了である。
それが、とても厄介な事へと発展したのである。
週が明けた月曜日、剛はとある会社に向かった。勿論、新しい取引先との契約の為である。この取引が成功すれば、剛の会社としても大幅に売上が伸びる。剛は気合いを入れて、新しい取引先に向かった。
事件はそこで起きる。
「いつもお世話になっております。本日お約束をした、中澤でございます」
受付で伝えた剛、予定時間の10分前であり、社会人として見習いたい所である。
「少々お待ち下さい」
受付に言われ、少し待つ剛。5分程で会議室に通された。
「本日はお時間を作って頂き、誠にありがとうございます」
剛は会議室のドアを開けると、頭を下げながらそんな事を言った。顔を上げるとそこには、スーツに身を包んだ2人の男と、右腕を固定している若者が1人居た。
「あの……こちらは……」
「親父、こいつだよこいつ!」
「君か?私の息子に怪我をさせたのは?」
「??…………ああ、金曜日の!…あれは……女性に……」
「嘘付くなよ、俺が楽しく女の子と話してただけだろ?そこにいきなり……」
「中澤君、本当なのかね?……こちらは専務の息子さんだ。私としては、中澤君も信じたいのだが、専務も疑いたくはない」
「社長、私は息子を信じます」
「いや、違……」
「とりあえずだね……こちらとしては事実確認してから、今後の事を考えたいと思っている……今日の所は、お引き取りをお願いする」
有無も言わさず、剛はその会社から追い出されてしまった。
会社に帰り、事の顛末を上司に伝えた。
「何をやっているんだ、土下座してでも契約して来い!」
上司の言葉はきつい物であった。確かにそれだけ大きな取引きでは有るのだが、剛の話も聞いて欲しい所である。
翌日から、剛はこの会社に何度も足を運んだ。その都度、頭を下げて事の説明をした。
しかし、世の中は金のある者に有利に出来ている。
本日も剛は会社訪問をし事情を説明したのだが、すぐに会議室に案内される。
「今日は、真実が分かったので報告します」
との事だった。剛が入るとすぐ、1人の女性が会議室に入って来る。あの日、剛が助けた女性である。
「君は、あの時の……」
剛の表情が一瞬和らいだのだが、上手くは行かなかった。
「間違いありません。この方が、私が男の人と一瞬に話していると、いきなりその男の人に暴力を振るって……」
「は?な、何を……」
「これで決まりだね……中澤君、君にはがっかりだよ……帰ってくれ!」
「あ、あの……私は……」
「ああ、ありがとう。怖かったね、気を付けて帰ってくれたまえ……中澤君だったかな?息子への慰謝料、しっかりと払って貰うからね!」
社長と専務は、その女性を庇う様に会議室を出て行った。
取り残され、呆然とする剛。会議室から出ると、受付に頭を下げて重い足取りで会社から出て行った。
…………現在…………
電車に乗らず、ただただ歩く剛。本当に困り果てた、そんな感じである。
「お兄さん、困り事かい?良かったら、解決しましょうか?」
顔を上げた剛、前には自分と同じくらいの歳と思われる男が立っていた。
「解決料は前金制、支払いはお金以外じゃないと受け付けないよ!過去でも現在でも未来でも、困った事なら何でも解決!…さぁ、どうだい?」
「未来って……本当にどんな事でも?」
「勿論!…ただし、報酬は前払い!」
「……頼もうかな……」
いつもなら、こんな人には着いて行かない剛ではあるのだが、今日は特別である。剛としては、藁にもすがりたい気持ちだったのだろう。
「これ、俺の名刺」
「ありがとう……時守人……本名ですか?」
「……信用無いね~……信用しないと、始まらないよ?…所で君は?」
「中澤剛です……」
「そうか、つよっちゃんね!よろしくよろしく!……とりあえず、事務所に行こうか?」
剛はこの守人の後に着いて行く。ここから、剛の人生は少しずつ変わって行く。多分だけど……
主人公登場!
分かって来るのは、次回からかな~……