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乙女ゲームの主人公の消えた弟は色々と大変です  作者: 猫屋敷
第一部 乙女ゲームの世界
2/2

STORY1 剣術で痛い思いするのはもう懲り懲り

アッシュ・シュラック(五歳)から、だいぶ時間が過ぎる。俺もついに十歳となった。とても喜ばしいものなのだが、俺の家は大して裕福でもなく、貧乏でもない。そのため、普通の家で、普通の子供として生まれ育っている。


だが、父さんが騎士団に所属しているため、毎日のように剣術の腕を鍛えられている。初めて剣を持った時は、


え、マジか。子供にそんなん持たせる?


とか、思ったが、郷に入っては郷に従え。この世界では常識のようだ。父さんの教えのもと、剣術を磨き、ある程度は成長できた。あとは、魔法だ。


姉であるシーシェルは魔力に恵まれており、十一歳でありながら、とてつもない魔法の才能に恵まれていた。と言うのは、ゲーム通り。


ゲームのスタートではこのような、幼少期時代は描かれていなかったが、回想や、キャラエピソードで見れる。と言っても一部だけだ。


シーシェルに婚約の話だとか、シーシェルの可愛らしいエピソードだとか。もちろん、コンプリート済み。


貴公子の中にたしかに推しはいたが、どっちかって言うと主人公プレイヤーが好きだった。ゲームの主人公というと、シーシェルの事ではあるが、あの可愛らしい顔にすべすべの肌。それはまさに“女の子”だと思った。


(それはいいんだけど、まさかそんな憧れ的な存在であるシーシェルの弟とか…。せめて、兄か姉がよかった)


とか、思うも実際に兄姉の存在は元々ない。そのため、おそらく転生も出来なかっただろう。


(そう考えると、マシ……なのか?)


多少モヤモヤはある。というより、ある意味弟で良かったと思っている自分が居るのは、確かであった。


「アッシュ、しっかり相手の動きをよく見るんだ。いいな?」

「はい、父さん」


今は父さんと一騎討ちという状況だ。毎日であるこの状況には、だいぶ慣れる。剣と言っても木刀だ。その為、当たるとガチで痛い。


特にすねに当たると泣きたくなるぐらいだ。


(次こそは………絶対勝つ!!)


剣術を鍛えられたとしても、一回も父さんに勝った覚えはない。だから今度こそは!と、燃えたぎっている。


今俺の目は、炎でバチバチに燃えているだろう。


木刀の握る部分を持ち、そこはつかと言うらしい。


「さ、行くぞ!」

「はい!」


父さんの掛け声で、俺は足踏みをする。背を低くし、父さんの下から一気に持っていこうと言う、魂胆だ。


「だから言っただろ?この前も。相手の動きをよく見ろって」


(———なっ!?)


横を見ると、そこには横へ流そうとする木刀が迫ってきている。

まずい、負ける。とかじゃなく、


(あ、絶対痛いの来る…)


だった。


(いやぁ!!あれ絶対痛い!横腹来る!!何度も体験してきたよ!!)


心のうちで叫び散らす。それはもう悲痛な叫び。と言うより、もう辞めたいだった。

木刀での攻撃は、前世を思い出させられる。それは、俺——いや、今は私でいい。私のお父さんが鬼怒った時は木刀で血相を変えながら、振り下ろそうとしてくる。


それは虐待ですか?と、言いたくなるほどだ。でも、一度も振り降ろした事はない為、怪我をしたことは無いが、この世界ではばり怪我する!!


(ぐっ、もう怪我するのは嫌だ…!)


必死に今の体勢から避け、手先を変える。持っている木刀で父さんが持っている木刀を、跳ね返す。


「………!?」


無我夢中だった為、何が起こったのかは整理が追いつかなかったが、父さんには勝っていた。


(え、やった)

「………よくやったな!アッシュ!」

「ありがとうございます。父さん」


父さんの大きな手で頭を撫でられた。それはそれはもう嬉しいものだった。


その後は、後から来た母さんとシーシェルが嘉賞かしょうした。


家の外にある庭にて、母さんとシーシェルが用意してくれた紅茶と、洋菓子を食べる。ガーデニングテーブルにティーカップとクッキーが入っている皿を、テーブルの上に置き、ガーデニングチェアに座り、口の中にクッキーやら紅茶やらを運び入れた。


口の中にはバターの風味が広がり、紅茶は苦くもなく甘ったるくもない。


「母さん、この紅茶は?」

「それは、ローズヒップよ。どう?美味しい?」

「はい!とても!」


ローズヒップがこのゲームの世界にあるのは、初めて知った。


「ねぇ、アッシュ。後で魔法の練習に付き合って」

「あ、待って。シーシェル。シーシェルに縁談の話が来ているわ。どうする?」

「えー、嫌だよ。私は好きな人と結婚するの!」


微笑ましいと思えばいいのか、早すぎないかと思えばいいのか、複雑だ。どうやら、この世界では年齢など関係ないらしい。


「ちなみに相手は、子爵家の人よ?」

「嫌だ」


むすっとした顔で、プイッと母さんの顔を見ない。十一歳ならまだ仕方ないのかと思う。まだ子供であるシーシェルにそんなこと言っても、無駄だと俺は思う。


(俺はこのゲーム世界で青春をするんだ)


紅茶をズビーと飲み、口の中にローズヒップの味が広がる。


(早く五年後になってくれ)


十五歳になった時、王国の学校に通える為、シーシェルと一年遅れてと言う風になるが、成績が良ければ、飛び級が可能である。


(猛烈に勉強するしかないな…)


前世の俺だったら、もう勉強は嫌だー!なんて言ってただろうが、未だに一応原作はスタートしていない。



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