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ふとん法案可決

作者: 谷まどか

 私は山田洋子。年齢は25歳、血液型はO型(RHマイナス)、身体は痩せていて、身長は160.35㎝、太ってもいないけど、痩せてもいない。ちょうど良いのではなかろうか。誰かに言われたわけではないのだけど。顔は昔の女優さんに似ていると祖母によく言われる。血液型以外はごく普通だ(血液型を言うと、えっ?と言われる)。性格はオヤジっぽいそうだ。なにが言いたいかというと、実は私は練習に来たのだ。

「癒し対策基本法第八十八条第三項の規定に基づき、この政令を制定する」

そうなのだ、今日国会で国の癒し対策の柱である「ふとん法」が制定されたのだ。所謂通称「ふとん法」は、布団を着て出掛けてよい、職場や学校、電車、スーパーマーケット、あらゆる場所で布団に入りながら、働き、学び、、、活動出来ると定められたものだ。近年人々はこのような不安定な社会情勢が続き、心が疲れ果て、犯罪が増えている。そのため、一人でも多くの国民が癒やされるように布団を着たまま出かけてよい、という事になった。それで今日は、布団を着ながら出かける練習をしようとしている。被るのは掛け布団だ。私が外出用に選んだのは「羽毛のようにあたたかい洗える抗菌防臭防ダニ掛け布団」だ。いざ、布団を着て出かける、というのは考えただけでも恥ずかしいものだ。

 まずは布団を着てみる。着てみる、というよりかは、頭をすっぽり覆う、ような感じだろう。すっぽり頭から布団を被り、靴を履く、玄関を出る。そして、最寄りの駅から電車に乗り、隣駅で、降り友人と待ち合わせるカフェへ向かう。「ふとん法」が適用されているため、布団を被って歩いている私を見る者はいない。しかし布団が重いし、暑い。汗だくでカフェに入った。

「洋子!久しぶり!あら、良い布団じゃない」

まちこがそう声をかけてきた。コーヒーとチーズケーキを注文した。だが、やはり布団が今度はフォークを持つ手を邪魔し、チーズケーキを上手く食べれない。それに今日着てきたかわいらしいスカートも布団のせいで全く見えない。布団に気を取られて、まちことの話もまったく集中できなかったー。「布団さえなければ」私の中に布団への憎悪が渦巻く。

その日はなんとか帰宅したものの、いつも朝目覚めてから

「布団のまま会社に出社出来たらいいのにー」

と渋々起き上がっていた私だが、なんだか今夜は布団に入りたくなかった。そのままテーブルに顔を伏せて寝てしまった。

 翌朝、私が昨日の朝のように布団を被って食卓に座ると、母が、ギョギョッという顔でこちらを見る。

「あ、あの、ふとん法案が可決されたって?」

と私が言うと母が

「あんた。何言ってるの!朝から布団が吹っ飛ぶくらいおかしいこと言わないで。それより早く布団を片付けてらっしゃい!」

よかったー!どうやら私のうたた寝ついでの夢だったらしい。私は布団をしっかり片付けて着替え、今朝もいつも通り出社した。

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