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暁の歌、響け世界に 《地の巻》  作者: John B. Rabitan
第8部 文化祭準備
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1 新学期 

 どうにか夏休み最後の二週間を八回も繰り返すことなく、無事に八月の月末に二学期が始まった。

 始業式も終えてすぐに超古代文明研の部室へと急ぐ。

 入口のドアを開けると皆一斉に振り向いて、思い切りの笑顔で明るく元気に「こんにちは」と叫ぶ様子はなんだか懐かしくもあった。

 俺が座るとすぐに、島村先輩はさらににこにこして俺を見た。


「康生、部員になってくれないか」


 は、はあ? 


「俺、部員じゃなかったんですか? ってか、ここって部員だとかそうじゃないとかの区別ってないはずじゃ」


「いや、そういうことじゃなくて」


 島村先輩の説明によると、三年生は学校の規定では一学期いっぱいでどの部でも引退ということになるらしい。だから島村先輩も、他の部と同様に引退しなければいけないようだ。


「形の上だけだよ。僕は引退なんかする気はないし、今までと同じように毎日顔出すけどね。それで」


 つまり学校への正式部員の名簿登録から島村先輩は形式上は消えるわけで、そうすると部としての最低人員の三人というのを下回ってしまう。だから誰かもう一人の名前を学校へ届けないといけないということらしい。


「じゃあ、ここにいる全員、正式部員にしたらいいじゃないですか」


「いや、そうすると」


 いつもいるこのメンバーを全員部員として登録してしまうとそれで固定してしまい、部員であるとかないとかの境目はつけないという部のモットーが崩れるということだ。

 島村先輩のほかには学校に部員として登録しているのは、今のところチャコと悟だ。


「僕より先にここに来ている美貴でも」


「うん、いいんだよ。あくまで形の上でのことだからどっちでもいいんだけど、どっちにするにせよ一応君の承諾を得てと思ってね」


「俺はかまいませんよ。でも、美貴もいいんなら別に三人じゃなくてもいいはずだから、俺と美貴の両方とも登録したら」


「んだな、じゃあ、そうすっか」


 俺は美貴を見た。美貴もうなずいた。


「私もいいよ」


「じゃあ、決定」


 島村先輩もうれしそうだ。


「部長も交代で、これも形の上だけだけど悟でいいかな?」


「いや、チャコの方が先にここに来ていたのだから」


 悟が言うと、また島村先輩は笑った。


「あくまで形の上だから」


 そう言われて、悟も納得した。



「さて、一つ決まったら次だ」


 島村先輩が全員を見回した。


 一年生でまだ来ていない人たちもいたけれど、部員の話をしている間にいつものメンバーはほぼそろっていた。


「もうすぐに南高祭なんこうさいだけど」


 南高祭というのは、この学校の文化祭の名称だ。


「出し物は去年と同じでいいかな?」


「待って、去年って?」


「そう、説明しないと康ちゃんや一年生はわかりませんよ」


 笑いながらチャコがフォローしてくれた。


「だよね」


 一つ咳払いをしてから、島村先輩は話し始めた。


「この部としては去年はピラミッドパワーの展示を行って、ピラミッドの関する話とか、不思議なパワーの紹介とかで回復魔法の実演とかもやったんだ」


「俺らはあくまで部の名前に即した研究成果発表という形にしたいんだ」


 悟はそう言うけれど、俺はおかしくなって笑った。


「そんな、研究なんてしてないじゃん」


 たしかに、普段は皆なんとなく来てわちゃわちゃとだべっているだけの部だ。


「でも、研究発表のネタなら事欠かないし」


 それはチャコの言う通りだ。


「とにかく」


 島村先輩は言う。


「この部は去年も実行員からは評判が良かった。クラス単位の出し物はどうしてもお化け屋敷とか喫茶店とかゲームイベントとかになってしまうし、部活までもがそんなのばかりじゃ困るっていうんだ。特に文化系の『何々研究会』という名称の部はその『何々』の内容に沿った展示をしてほしいということで、この部の展示内容は実行員会の理想にかなっているということだったんだよ」


 とにかく俺は初めてだし、決まったとおりにやるだけだ。同じく初めての一年生たちも異論はないようだった。

 そうなると今日からはただの雑談部ではなく、もうすぐにやってくる文化祭の日程に合わせて内容を練って、作業を進めていかなければならないことになる。


「じゃ、そういうことで、文化祭に向けて発進!」


 島村先輩の掛け声で、みんな一斉にこぶしを挙げた。


「「「「「おう!!」」」」」

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