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暁の歌、響け世界に 《地の巻》  作者: John B. Rabitan
第3部 夏合宿
15/68

2 バーベキュー

 着いたころはもう昼だったので、まずは昼食となった。

 荷物はとりあえずまとめて置いておいて、集会室での昼食だ。食事は各自で用意してくることになっている。


 父子家庭の俺は今日も当然のことながらコンビニで調達してきたが、今日はごみのことも考えて弁当ではなくおにぎりにした。

 着いてからコンビニで買おうかとも思ったが、朝買ってきて正解だった。

 ここは駅前もそしてこの周辺にもコンビニの「コ」の字さえ存在しそうもなかったからだ。


 集会所といってもこれも今にも崩れそうな平屋の木造で、畳というか茣蓙ござというかが敷かれている広い部屋だ。

 当然のこと、冷房などない。ただ、風通しはよかった。


 ここでも電車の中の延長で、それぞれの昼食を食べながら円座になってわちゃわちゃと大騒ぎだ。

 青木先生もいっしょだけど、浮いているかと思いきや自然と俺たちの中に溶け込んでいる。


「この後、何をするんですか?」


 俺はおにぎりをかじりながら、島村先輩に聞いてみた。


「青木先生の化学の授業」


「え?」


 俺が一瞬ひきつった顔をしたので、みんなが一斉に笑った。


「んなわけないだろ」


 青木先生も笑いながら言うので、ひとまず安心した。


「まずはテントの設営と、バーベキューの準備だ」


 島村先輩の言葉に、また歓声が上がった。


 テントはキャンプ場から借りられる。

 テント設営など俺は生まれて初めてだったが、青木先生と島村先輩、そして悟がペグの打ち方から始めみんなを指導して、三人用のテントが四基、次々にできていった。

 そこに各自の荷物を運びこむ。

 女子が二つ、男子が二つだ。

 青木先生と島村先輩そして悟が一つのテントに入ったので、俺は新司と大翔の一年生二人と一緒だった。


 それからバーベキューの準備となる。

 機材もすべてキャンプ場で用意してくれるので、あとは組み立てて火を起こして食材を焼くだけだ。

 火を焚く場所はコンクリートのブロックで作り付けで設けられていた。


 まきはやはり管理室のおじさんから購入し、それをなたで割る作業から始まる。

 もちろん焚き付け初心者の俺が手が出る作業ではなく、島村先輩が見事にたきつけ用の薪を割った。

 こんなものにどうやって火をつけるのかと思っていたけれど、やはり先輩はものの見事に火をおこす。

 最初は新聞紙を丸めてなんてそんな素人ぽいこともせずに、薪木だけで棒のような着火ライターを使って見事に火をつけたのだ


 あとは青木先生が背負ってきた巨大なリッュクの中にあった食材を切って焼くだけだ。

 調理器具もキャンプ場から借りられる。


「手の空いた人から順番に一人ずつシャワー浴びてきたらいいよ。明るいうちに」


 島村先輩が言う。

 シャワー室はブロック塀で仕切られたて立っていて、男女は分かれているけど中はそれぞれ一人用だ。だから一人ずつ順番にと先輩が言ったのも納得できた。

 シャワーといってもシャワーじゃない。

 シャワーの高さに水道の蛇口があるというのに等しく、栓を回すと一本の水が勢いよく流れ落ちる。

 もちろん、お湯なんか出ない。

 シャワーを浴びるというよりも、水をかぶっただけで出てくる感じだ。もちろん石鹸もシャンプーもない。

 だから一人ずつといっても、一人数分で出てくる。


 全員がシャワー((水浴び))を終えたころに薄暗くなり始め、バーベキューが始まった。

 薪が燃える匂いが、キャンプ場独特の雰囲気を感じさせる。


「さあ、どんどん焼いて」


 美貴が声をかける。


「まずは玉ねぎからね」


 チャコもそう言うが、下準備はほとんど女子がやってくれた。男子は焼くだけ。

 こうしていると、なんで学校では男子も一緒に家庭科の調理実習やってるのかなって思ってしまう。


 だいたいいい焼き加減なので、まずは乾杯……というところだけど、なんとジュースとかの大きなペットボトルを担いでくるのも荷物になるというので、キャンプ場から借りた大きなやかんで沸かした麦茶を紙コップに入れてだった。

 着いてすぐに美貴とチャコが沸かしていたからもう冷めてはいるけど、もちろん冷やしてはいなかった。

 集会室の冷蔵庫は、先生のリュックに入っていた肉をずっと入れていたからだ。


 美穂が持ってきたインコのクンちゃんも、鳥かごの中に入ったままバーベキューに参加していた。

 時々美穂から生のレタスなどをもらっている。


「男子! 肉ばかり食べてないで、野菜もお食べ」


 美貴が命令口調で言う。


「はーーい」


 とぼけた口調で真っ先に返事をしたのが青木先生だったから、みんな爆笑だった。

 その先生も、本当ならビールでも飲みたいところかもしれないが、俺たちに合わせて麦茶で付き合ってくれている。


「ククククク、ワレは天使ゆえ、肉などいらぬ。四足の肉など男子が食らうといい」


 天使ケルブは自分の割りばしで、一年生男子の方へ肉を寄せていた。

 新司が嬉しそうに礼を言う。


「あ、結衣ちゃん、ありがとう」


「ってか結衣じゃなくてケルブとお呼び!」


 それから俺や悟、そして島村先輩と青木先生に対しては急に表情が変わる。


「先生や先輩方も、お肉どうぞ」


 その満面の笑顔と甘えたような口調がおかしくて、俺を含めてみんなが笑っていた。


 こうしてかなり暗くなり、そして満腹となったところでバーベキューはお開きとなった。


 夜は花火で楽しんだ。

 なにしろ近くに民家はないし、大声ではしゃぎ放題。

 花火も打ち上げから手で持つタイプ、そして線香花火まで思う存分皆で楽しんだ。


 そして早々に各自のテントで休むことにした。

 なにしろテントの中は電気がない。

 照明は懐中電灯と、必要あれば各自のスマホのライト機能だけだ。

 そのスマホの充電は集会室でないとできないしコンセントの数も限られているから、なるべくバッテリーを消耗しないようにあまり見ないで早々に下半身だけ寝袋に入って休んだ。

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