表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイスクリーム転生  作者: 斉藤くるお
1/1

プロローグ

「こ、ここは?」


気がつくと、真っ白な空間いた。ポツンと一人、知らない場所だ。自分の身に何が起こっているのか分からなかったためとりあえず記憶を整理しようとしたところ、あることに気がついた。自分が誰なのか思い出せない。日本に住んでいたということは思い出せるが、それ以外の詳しい住所、名前、生年月日など自らを形成する核となる部分が思い出せない。そして、それが原因であるかどうかは定かではないが、心にポッカリと穴が空いている。しかも世界が色をなくすレベルの大きさだ。まあ、心に空いた穴なんて視認できるものではないからあくまでも体感での話だが。そんなことを考えていると、


「こんにちは」


声が聞こえた。あまりにも急に聞こえた自分以外の声にドキドキしつつも目をそちらに向けて見ると、そこには目を閉じてはいるがそれでも綺麗な顔の女性が立っていた。その女性は、よく似合うカラフルな服を着ていて、背中の方には立派な翼も見える。それになんだか女性の周りが金色に光っている…気がする。一眼見てこの女性が女神であることを悟った。それと同時に


「色、普通に見えるじゃんか!!!」


思わず声に出してさっきまでの自分に突っ込んだ。心の穴は思っていたよりも大きくなかった。だって、カラフルな服がカラフルに見えるんだからそういうことだろう?どうりで案外冷静だったわけだ。傷心していた自分が恥ずかしい。自分のことなど案外自分でも分からないものだな、と思った。


「???……え…?、あ…、こ、こんにちは!」


女神はしばらく呆気にとられていたが我を取り戻し、もう一度そう言った。


「あ、こんにちは」


今度はちゃんと返事をした。


「どうも、女神です。」


やはりそうだった。悟ったことは正しかった。この真っ白い世界に放り出されてから少し時間が経ち、さらにひとりぼっちではないことから心に余裕が出てきたため、もしかしてこれが第六感(シックスセンス)ってやつ!?などとくだらないことを考えていると、

 

「とりあえず、伝えなきゃいけないことを伝えますね。あなたは残念ながら死にました。」


薄々、死んでしまったから自分についての記憶をなくし、こんな場所にいるのだろうか、と考えてはいたが、あまりにもあっさりと告げられたその事実は、色が見えて少し埋まった気がする心の穴をまた広げた。


「えっと、あの、続けますね。」


こちらの様子を気にしながらも女神は話を進める。


「死因は自殺です。心中です。」


「…!」


驚いた。死んだと言われたからてっきり病気で死んだとばかり思っていた。しかも心中ということは、生前、自分には、愛し愛してくれる人がいたのだ。しかし、それと同時に心中はハッピーエンドではなかったことを物語っている。


「本来ならば、死んでしまった人の魂は天に昇り、記憶を綺麗に洗われ、器を割り当てられて、次の生を歩むのですが、特例に当てはまる場合は変わります。」


「とく…れい?」


わざわざこんな話をしているということは自分はその特例とやらに当てはまっているのだろう。


「ええ。この宇宙には地球以外にも生き物の住む星が沢山あります。そしてどの星の生き物にも長さは違えど寿命があり、死ぬ運命にあります。老衰、病気、事故など、それらはあらかじめ決定づけられて起こっています。しかし、自殺というのは地球という星でのみ起こる運命に抗う行為なのです。わかりやすくいうと、魂ごとにに長さは違いますが円形に敷かれたレールの上を走ります。レール一周が器一回分の生で、一周するごとに器が変わります。しかし、自殺をするとこのレールから外れてしまいます。つまり、」


「次の器が与えられない、ってことですか?」


つまり、レールを一周できていないから器を新調できないということだろう。


「そうです。脱線して転倒しているみたいな感じです。」


「えっと、じゃあ、どうなるんですか…?」


「ここからが本題なのですが、レールに魂を戻す作業が必要になります。具体的には数ある星のうちの一つを救う、あるいは劇的に発展させてもらいます。」


「はあ…」


レールに魂を戻すという作業がなぜ星を救ったり発展させたりというものになるのかしっくりこない、なんとなくそれはレールや器をグレードアップさせる作業であると感じる。しかし、そんなことを気にかけても仕方ないので続きに耳を傾ける。


「救う、もしくは発展させる星は生前の性格や趣味嗜好を鑑みて決定されます。記憶はなくても、人となりは魂に自然と染み付いているので意外と向き不向きがあるんですよね。洗濯しても落ちない汚れみたいなもんです。だから生まれ変わっても性格は結構変わらなかったりします。」


そうか、心に大きな穴が空いていると勘違いして傷心にはたるところとか思わず自分に突っ込みを入れるところとか死因を告げられても案外冷静なところとか魂に染み付いたものだったのか。うーん、どんな反応したらいいのか分からない。


「また、星を救う、発展させる時の姿はその星に適した姿を与えられます。俗に言う、異世界転生ってやつですね。しかも姿が変わる感じの。人になる場合もありますが、あなたの場合は違います。あなたには…」


きた。女神と話し始めてから何故か終始ドキドキしっぱなしだったが、それがより一層強くなる。生前、異世界転生ものの小説が好きだったかどうかは分からないが、いざ自分の姿が人以外のものになるとなるとドラゴンとかエルフとかそう言うファンタジーなものを少し期待してしまう。


「はい…!」


自ずと体に力が入る。果たして何になるのか……、


「………アイスクリームになってもらいます。」


「へ?」


加工食品だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ