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番外編 インバウンド(6)

※今回、話の切れ目ではないところで切っています。

 正午はとうに過ぎ、さすがにそろそろお腹が空いてきた。しかし、繁華街に行ってご飯にし、インバウンドの気持ちでショッピングに興じたら、恐らく夕方になり、それで今日が終わってしまう。帰宅部の遊びとしてはそれでもいいのだが、訪日旅行としてはいささか寂しい。

 そこで、予定通りこれから動物園に行くことにした。閉園までまだ3時間もあるし、園内で軽く食事をとっても、十分楽しめるだろう。

「Culture Tripによると、100種類以上の動物、花でいっぱいの庭園、コースターや観覧車のある遊園地が楽しめるって」

「何回か行ってるけど、遊園地を意識したことはないね。記憶にないほど小さい時は知らないけど」

 奈都が園内を思い出すように目を細めてそう言った。先ほどの美術館と違い、こちらは動物があまり好きではない絢音も含めて、全員行ったことがある。そうなると、やはりインバウンドらしい楽しみ方に徹するべきだろう。

「もしオーストラリアの動物園に行ったら、カモノハシとかウォンバットとか、日本では見れないか、見るのが難しい動物が見たいな」

 涼夏がそう言って、私も頷いて賛同した。つまり、日本人には馴染み深いが、海外の人には珍しい動物こそ、今回の旅にふさわしい。

「なかなか難しいね。動物園って、海外の珍しい生き物を展示するっていう側面もあるし」

「ニホンカモシカかな。ニホンリスも日本にしかいなさそう。名前にニホンってついてない動物はわかんない」

 絢音が公式サイトの動物一覧に指を滑らせながら言った。

 美術館から動物園までの移動中、暇だったので、4人がかりで手分けして検索した結果、他にはエゾヒグマ、ホンドザル、ホンドタヌキなど、如何にも日本的な名前がついている動物は日本固有のようだった。ツシマヤマネコはモンゴルや中国にもいるらしい。

 バスと地下鉄を乗り継いで動物園にやって来る。満喫するには少し遅いが、それでもチケット売り場は列になっていた。もちろん家族連れが多いが、カップルはもちろん、自分たちのような女子グループもいた。動物園は普通に友達との遊びにも使えるようだ。

 こちらも一日乗車券で割引を受けて入園する。今日はまだ一日で千円ちょっとしか使っていないので、とてもリーズナブルなトラベルだ。

「顎を落とすこともない」

 私がそう言うと、奈都が怪訝な顔をし、絢音は満足そうに頷いた。最初の和訳から持ってきたネタだが、その話をしていた時、奈都はいなかったので仕方ない。

 入園するとすぐ右手にサイ、少し行くと左手にゾウとトラが待ち構えているが、まずは食事だ。これ以上空腹が続くと、死を覚悟しなくてはならない。

 フードコートには我がシティーのグルメが並んでいて、これにはインバウンドも再びにっこりである。

「私はこの牛すじ味噌焼きそばにしよう。インバウンドじゃなかったとしても食べてみたい」

 私がメニューを指差してそう言うと、奈都が「取られた!」と絶望的な表情をした。別に同じものを頼んでくれて構わないが、面白いから放っておこう。

 結局奈都は味噌かつ丼、絢音はきしめん、涼夏はソールフードのラーメンと、コアラの顔をしたチョコレートアイスを注文した。

「月に一度は食べてるラーメンも、インバウンドの気持ちで食べるとまた違って感じるな」

 涼夏が満足げにそう言いながらラーメンをすする。私の方は大体想像通りの味だったが、こってりしていて美味しかった。奈都と少し交換したが、味噌かつ丼も美味しかった。基本的に何でも美味しいし、空腹なのでさらに美味しい。


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