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番外編 記念日(3)

※(2)からそのまま繋がっています。

 次はどうしようか。一覧を眺めていたら、涼夏が「『トマトの日』と『トマトアンドオニオンの日』の重複は認めない」と送ってきた。宣言通り、私の企画を家で楽しんでくれているらしい。部員の鑑だ。

 どこかの島から出航して、マグロを釣って缶詰にして一気に4枚抜きたいが、随分時間のかかる「一気」だ。現実的ではないが、どうすると一度にたくさん達成できるか考えるのは楽しい。

 恵坂に戻る途中で、可愛い女の子のイラストのポスターが貼ってあったのでツーショット写真を撮った。これで「萌の日」を達成する。特に何のときめきもないが、私が萌えるかどうかより、一般的に萌える対象であるかの方が大事だろう。

 恵坂に戻ると大型の楽器店に行って、ドラムを背景に写真を撮った。一応ポコポコと叩いておく。これで「ドラムの日」を達成して12個。喉が渇いたので野菜ジュースを飲んで、「充実野菜の日」を達成する。これで13個。

 ちなみに、いかにも立て続けに達成しているかのようだが、一つ一つに10分も15分もかかっている。秋の夜はつるべ落とし。日はすでに沈んだ後だ。

 最後は自動達成の「ふとんの日」があるので、そろそろ食べ物を買って帰るフェーズに突入してもいいだろう。

 駅に戻って自宅の最寄り駅まで帰り、スーパーに寄る。そこでツナ缶とうどんの麺、おかずにポテトサラダを購入した。コッペパンと野菜ジュースも入れると千円をオーバーしたので、パンケーキは見送る。食べたいのはお店で出てくるようなものなので、他で20個達成できそうなら無理に買うこともない。

 家に帰るとすでに母親が帰ってきていた。相変わらず変な遊びをしていると、最大級の褒め言葉とともに千円札を渡される。これで今日の遊びは無料になった。

 ツナ缶とネギとごま油、そして卵で作る簡単レシピのうどんを作り、家にあったトマトを切ってポテトサラダと並べて写真を撮る。これで「まぐろの日」、「缶詰の日」、「うどんの日」、「トマトの日」、そして「ポテトサラダの日」の5つを達成して18個になった。

 一人で食べていたら、涼夏から「ゲームはともかく、そのうどんをパパッと作れるようになったことを褒めたい」とメッセージが飛んできた。将来一緒に住むにあたり、私と絢音がどれくらい料理が出来るかというのを、涼夏はそれなりに気にしている。

 もちろん、全部自分の分担になるのではないかと心配しているのもあるが、純粋に私と絢音の健康を心配してくれているのもある。なるべく涼夏がいない時にも、自炊出来たらとは思う。

 味の感想を送ってからリストを眺めると、他にもまだ、「アメリカンフライドポテトの日」とか「おもちの日」など、達成しやすそうなものがあった。結局おでんも食べていないし、朝からだったら30個くらい行けたかも知れない。

 ご飯の後、部屋の片付けをしていたら、グループに絢音が合流していた。

『色んな千紗都の写真があって可愛い』

『あんまり自撮りしない千紗都が、一人で写真撮りまくってると思うと胸熱だな』

『うどん美味しそう。サブ涼夏として頑張って欲しい』

『絢音も作って』

『誠意を見せる。千紗都が来ない』

『お風呂かな。お風呂の写真期待』

『入浴の日』

『銭湯の日っていうのはある。お風呂で代用可にしよう』

『全裸待機する』

『全裸待機してる絢音の写真送って』

 ひどい会話だ。とりあえず「お片付けの日」を達成したと、部屋で写真を1枚撮って送った。最後に、ベッドに座って頭から布団を被り、引きこもりのような写真を撮って「ふとんの日」を達成する。これで20個だ。

 写真を送ってからグループ通話を繋ぐと、とりあえずおめでとうと祝辞を頂戴した。

『「じゅうじゅうカルビの日」はやらなくてよかった?』

「焼肉とパンケーキはその内みんなで行きたい」

『「球根の日」は? 求婚してくれていいよ?』

「字が違うから。おでん食べてないし、DXは進めてないし、デジタルには触れてないし、ポテトも食べたいし、時間があれば30は余裕だった」

『プレミアム・アウトレットで古紙回収して2枚抜き』

『プレミアム・アウトレットで古紙回収はしてないんじゃないかな』

 それからしばらく、同時達成の方法で盛り上がり、その内みんなでもやってみようという話になった。二人のおかげで一人でも退屈はしなかったが、3人ならもっと楽しめるだろう。

 練習がてら明日の一覧を見ると20個弱しかなかった。

『まず朝、クラスで千紗都と付き合ってるって宣言して、「カミングアウトの日」を達成する!』

 涼夏が意気揚々とそう言ったが、それは切り札なので出来たらやめて欲しい。

 二人は初心者なので、「ハンドケアの日」くらいから挑戦するのはどうだろう。

 私は記念日達成のプロなので、二人に優しく教えてあげられたらと思う。


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