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第58話 対決 3(2)

 次はバスケットコートが空いていたので、3オン3をすることにした。いよいよ本格的な対戦スポーツだ。

 2対2の総当たり。プライエチームは、アヤナツチームとは豊山さんと牧島さんが、私たちとは牧島さんと戸和さんが戦うことになった。

「私、別にそんなに動ける人間でもないんだけど」

 牧島さんがため息をつく。もし私と奈都と涼夏の3人チームだったら、私が牧島さんの立場になっていただろう。豊山さんと戸和さんは牧島さん経由で繋がった。ちなみに、絢音と牧島さんは豊山さん経由で知り合っている。

 ジャンケンの結果、初戦は私たちとプライエチームでやることになった。「勝つぞー」と張り切っている涼夏にバスケの経験を聞くと、授業でやったくらいだという。もちろん、私もその程度だし、戸和さんも同じだった。

 牧島さんは中学時代、時々友達と遊んでいたらしい。強敵だ。

 2戦目はアヤナツ対プライエになったので、私たちは休むことができる上、その後疲れているアヤナツチームとの対戦になる。ここで全力を出しても問題ない。

 ダムダムとドリブルをして、戸和さんを抜き去ってシュートしたが、入らなかった。せっかくノーマークだったのに残念だ。

 ボールを奪った戸和さんがこっちのゴールにシュートしたが入らず、涼夏からもらったパスをゴール目掛けて投げたが、これも弾かれた。

「そもそもボールが入らない!」

 悲鳴を上げる私から牧島さんがボールを掠め取り、まっしぐらにゴールに駆ける。しかしこれも入らず、リバウンドを取った戸和さんも外し、私がパスを回した後、ついに涼夏が1本目を放ったが、これも入らなかった。

「なんて低レベルな戦いなんだ!」

 外野から奈都の声がした。勝敗が同点の場合は得点で競うことになっているので、何とか点数を積み重ねたいが、まったく入る気配がない。

 最初に点を入れたのはやはり牧島さんで、その後は涼夏だった。

「猪谷さん、意外と動けるよね」

 牧島さんが感心したようにそう言うと、涼夏がのんびりした調子で答えた。

「動かないのと動けないのは違うな」

「動いてよ」

「走るとか文明人のすることじゃない。走ってる猪谷さんはレアだから、目に焼き付けるがいい」

 涼夏がそんな威勢の良いことを言ったが、その後は得点出来ず、どうにか私も1本入れたが、牧島さんにさらに2本入れられて負けてしまった。

「やっぱり弱いぞ、このチーム。下馬評通りだ」

 涼夏がどっかりと座って汗を拭く。その隣に座って、私もジュースを一口飲んだ。

「止まってるとシュートも入るけど、人間が全力で向かってきたり邪魔してくると全然入らない」

「そこは強靭な精神力でカバーだね。私が見本を見せるよ」

 奈都が偉そうにそう言ってコートに入る。無惨に敗北するがいいと思って見ていたが、やはり運動部員の動きにはキレがあり、絢音もキビキビと動いて、二人合わせてシュートを12本も決めるワンサイドなゲームになってしまった。

「流石絢音。小学生の時、バスケ部だっただけはある」

 戸和さん同様、1本もシュートを入れれなかった豊山さんが疲れた顔でそう言った。絢音も奈都もまだまだ余裕そうだが、休む時間は与えない方が良い。それに、コートが空くのを待っている人もいる。

「よし、すぐやろう。さあやろう」

 すっかり元気な涼夏がコートに入ってボールを弾ませた。二人が呼吸を整える暇もなくゲームを開始して、慎重に投じた1本を決めたが、その後、絢音のロングパスを受けた奈都があっさりと返した。

 アヤナツチームに4本目を入れられた後、ようやく1本入れた涼夏が言った。

「シュートの前だけ集中すればいける気がする」

「ずっと集中して」

 奈都がもっともなツッコミを入れるが、そういう意味ではない。まあ、シュートが入る奈都にはわからないのだろう。私は涼夏のアドバイスに従って、その後3本、涼夏もさらに1本決めて、試合には負けたが、得点でプライエチームを上回り、2位になった。

「さすがに疲れた」

 絢音がぐったりと立っている豊山さんの足に寄りかかる。まだ2ゲーム目だが、全力を出し過ぎではなかろうか。

「やっぱり対戦はきつい。アーチェリーとかやろう、アーチェリー!」

 戸和さんが元気にリクエストするが、空いているだろうか。ぐったりしている時間がもったいないので、豊山さんの足にしがみついている絢音を引っ張り上げて、次のゲームを探すことにした。


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