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第54話 文化祭2 4(1)

 翌朝、いつものように駅で私を待っていた奈都に「おっす」と手を上げると、奈都は驚いたように目を丸くした。

「今日はワイルドだね」

「1秒で奈都を新しい世界に引き込む」

「色んなチサが見れて楽しいよ」

「文化祭、どうなった?」

 歩きながら昨日のHRの結果を尋ねると、奈都は無難にカフェになったと答えた。伝統のニーヨンカフェは今年も継続するようだ。

「何を売るかはこれからだけどね。まあ、誰か決めてくれるでしょ」

「奈都はクラス展示に対して熱意がない」

「部活優先なのは否定しない。そっちは?」

 特に話すことはないと言わんばかりに自分の話を打ち切って、奈都がそう促した。

 とりあえず今年も実行委員になったと伝えると、奈都が呆れたように眉尻を下げた。

「目立ちたくなかったんじゃないの?」

「推薦されたから仕方ない。どうせ暇だし、文化祭に関わること自体は嫌じゃない。人間関係が面倒なだけ」

「何やるの?」

「カジノ。具体的には何も決まってないけど」

「楽しそうな響き。チサ、好きそう」

 奈都がくすっと笑う。カジノが好きそうというのは喜ぶべきところだろうか。アナログゲーム好きという解釈をしよう。ギャンブル自体には良い印象はない。

 実行委員の顔触れを教えた上で、昨日帰り道がずっと恋愛トークで大変だったと伝えると、奈都は「それは大変だったね」と全然興味がなさそうに言った。

「川波君って、去年チサのこと好きだった子でしょ? まだ好きなの?」

「そうみたいだね」

「早く諦めてくれるといいね。迷惑なことはされてない?」

「根は悪い人ではないよ」

「チサは涼夏とアヤのものだから」

「正妻は奈都だってば。璃奈先輩、今年も占いやるの?」

「話が飛んだね。聞いてないから知らない」

「正妻発言を楽しんでたって聞いたから。なんか、正妻って言うと瑠奈先輩を思い出す」

「今年は受験生だし、去年やったし、今年はやらないんじゃないかな」

 ぐだぐだと情報交換をしながら上ノ水で降りた。電車の騒音がなくなったので、絢音の誕生日プレゼントの話でもしようと思ったら、久しぶりに奈都のバトン部の後輩に捕まった。

「先輩方、おはようございます。ご一緒してもいいですか?」

「チサと行くからちょっと」

「もちろん」

 何故か断ろうとする奈都を制すると、富元さんは良かったですと微笑んだ。夏休み前より少しだけメイクが濃くなった気がするが、私も人のことは言えないので、大した理由はないだろう。

 クラス展示は何をするのか聞くと、怖くないお化け屋敷をやるそうだ。

「怖くないお化けって?」

「可愛いクマと同じです。お化けの可能性を広げようと頑張ってます。まだ始めたばかりですけど」

「富元さんはクラス展示も手伝ってるんだ。この人、クラス展示には全然興味がないって」

 奈都を指差してそう言うと、奈都は静かに首を振った。

「興味はある。手伝う気はあんまりないけど」

「見損ないました」

「一撃で見損なわないで。私がやらなくても、誰かやってくれるから」

「見損ないました」

「人と人がわかり合うのは難しい」

 奈都が無念そうに息を吐いたが、よくわかった上で見損なわれた気がしてしょうがない。

 せっかくなので学校まで富元さんのクラス展示や夏休みの話を聞いて、校舎に入ったところで別れた。奈都がまた「チサと喋れなかった」と拗ねていたが、悪意のない後輩に嫉妬するのも、それに応じた私を責めるのもやめていただきたい。

「今度、絢音の誕生日プレゼントを買いに行くからね」

「空いてたら」

「空けて」

 喋りたそうだったので二人で会う機会を提案してあげたのに、相変わらずよくわからない子だ。

 今年の誕生日も涼夏がパーティーを企画してくれている。文化祭で忙しいし、お金もそんなにないので、恐らくまた涼夏の家で遊ぶ流れになるだろう。

 無理に新しいことはしなくていいと伝えてあるが、どうなるだろうか。こちらは祝われる側なのでノータッチだ。

 私は文化祭の企画を頑張ろう。


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