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番外編 世界旅行2(2)

 曇天の下、林を切り裂くように、舗装された道路がどこまでも真っ直ぐ延びていた。前にも後ろにもただひたすら真っ直ぐで、近くには看板も他の車もなく、遠くには山も見えない。ただ、道に引かれた白い破線が見たことのない間隔なので、日本ではないことだけはわかる。

「初回からいい感じだねぇ」

 少し進むと、青色の車に追いついた。車種はわからないし、ナンバープレートにはモザイクがかかっている。右側通行であることはわかったが、まだまったく絞れない。

 さらに進むと、何やら宣伝の文字が書かれた車が走っていた。あまり近付けなかったが、「inter cafe」と書いてあるように読めた。絢音は「irder cafs」ではないかと言ったが、確かにそんな風にも読める。もっとも、そうだとしたら、さらにわからない。

「これはやばいね」

 絢音が困ったように笑った。どこまで行っても、ただひたすら真っ直ぐで、左右の景色も一向に変わらない。

 やがて、シカの絵の描かれた注意を訴える看板があり、下には「1.6km」と書かれていた。ここから1.6km区間、動物注意ということだろう。

 絶望したので、一度スタート地点に戻って、反対側に行ってみることにした。

 こちらもひたすら真っ直ぐだったが、やがて800m先にガソリンスタンドとレストランがあるという看板が現れた。どちらかと言うと、こっちが正解だったようだ。

 さらに進むと、看板のガソリンスタンドが姿を現した。「KULIKOWSKI」と書かれている。これが店の名前なのかガソリンスタンドの名前かはわからないが、とりあえず「SKI」で終わるのは北欧だ。

 そう主張すると、絢音が可笑しそうに頬を緩めた。

「GeoGuessrのプロみたいな発言だった」

「時間がなくなってきた。とにかく文字を探そう」

 ガソリンスタンドから奥に行くと、民家がポツンポツンと立っていた。白い壁に赤い屋根。どの家も平屋かせいぜい二階建てくらいの高さだ。

 そしてその集落の中に、いかにも地名ですという面構えの緑色の看板があり、「Stare Modzele」と書かれていた。ひとまず検索の第一候補にする。

「それにしても、読めないね。ステアー・モドゥゼーレ」

「Stareは、Stateっぽい響きがない?」

「ないねぇ」

 集落にはそれ以上ヒントが無さそうだったので、一度ガソリンスタンドまで戻って、走ってきた真っ直ぐの道を進む。今度は、同じような面構えの緑の看板に「Wygoda」と書かれていた。

 通り越して反対側を見ると、同じ文字の看板に、赤色で斜線が引かれている。「ここからがWygoda」と、「ここまでがWygoda」という意味だろう。他に、日本なら「売り物件」とでも書かれてそうな白い看板に、「PRZYJME ZIEMIE」と書かれてた。また反省会に使いたいので、とりあえずメモを残す。

 さらに進むと、今度は緑の看板に、直進が恐らく「Zambrow」、左が「Kotoki Koscielne」と書かれていた。若干文字にモザイクがかかっていて見にくい上、文字の上に装飾があるので、よくわからない。

「ダイアクリティカルマークだね」

 絢音が得意気に言った。アルファベットの上に書かれた装飾記号のことで、アキュートやらウムラウトやら、色々ある。

 時間はすでにロスタイムに入っていたので、移動するのはここまでにする。直進が長すぎてだいぶ時間をロスしたが、それなりに地名らしき情報は得られた。

「まあ、短いけどWygodaの方が無難かな」

 絢音の意見に賛同する。Zambrowは本当にそう書かれているかもわからないし、何キロ先にそれがあるのかもわからない。日本だって、大阪から東に走れば、「こっちが東京」という案内がある。距離のわからない情報は危険だ。

 そういうわけで、別ウインドウでGoogle Mapを開き、大体北欧くらいに移動してから検索窓に「Wygoda」と打ち込むと、ポーランドに同名の地名が現れた。Bialystokという大きな街のすぐ近くで、ベラルーシとの国境近くに位置している。

 それっぽい直線の道がないのは気になるが、これ以上時間をかけられないのでクリックすると、正解から73km離れており、4760ポイントだった。

「意外」

 絢音が難しい顔で呟いて、考えるように顎に指を当てた。探偵仕草だ。

 別ウィンドウに戻って、正解の位置を拡大すると、確かにWygodaという地名があり、ガソリンスタンドがあって、Stare Modzeleもあった。日本で言えば、平和町という地名が全国にあるようなものだろうか。より大きなWygodaという場所に引っ張られたが、73kmしか離れていなかったのは、むしろ運が良かったと言えよう。

 他の文字で検索したらどうなっていたかはまた反省会に残し、次のゲームに進むことにした。


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