檸檬と日記
8月15日
病室の窓の外の空模様は、昨日とは一転して快晴だった。
暖かな太陽の光が、窓の下に差していた。
不意にコンコン、とドアを叩く音がした。「どうぞ」私が返事をすると、ドアが開いて見慣れた顔が一人ひょいと私の病室に入ってきた。
「おはよう、どう?」笑顔で私に聞いてくる高校生は、私の友人の晴だ。
「大丈夫。毎日来てくれてありがとうね。」私の申し訳なさそうな返事に気遣って、「いいんだ、夏休みで暇なんだ。」と彼は返してくれた。
彼は椅子に腰かけると、続けて口を開いた。「いつ退院できるとかは、まだ分からないのか?」
「うん。まだ先だと思う」私が答えた。退院の目途は立っていない。
「そうか」しばらくしてから彼が返事をした。
一か月前に同じ質問をされて、同じ返事をしている。
「そうだ!はちみつレモン作って来たんだ。この前美味しいって言ってくれたやつ!」わざと明るい口調で喋りだした彼を見て、悲しくもないのに涙が出そうになったのをこらえて「ほんと!ありがとう!」と返事をした。
彼ははちみつレモンの入ったパックと私が退屈しないようにと貸してくれる本を数冊置いて帰った。
気づくと、空はすっかり夕方を呈していた。