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9. 鳳凰との交渉


 鳳凰。勇者が乗っていたという伝説の鳥。

 魔王による魔法で敵となってしまい、最終的にこのダンジョンに閉じ込められたという。


 五十九階層では鳳凰が主ということもあり、ガルーダやヤタガラスが巣食っていた。

 うまくサンドストームで砂煙をあげながら即死魔法を酷使する。


 頭痛がひどいな……。

 サンドストームも併用しているからだろう。


「大丈夫です?」


 ニャリアは優しく気遣ってくれる。


「あぁ、ありがとう。そろそろ階層主だし、気を引き締めるぞ」


 辺りに広がる紫色に輝く石畳は階層主がいる証。

 英雄譚にあるような鳳凰ならば話ができない相手ではない。

 もし、いまだに魔王の魔法に侵されて人格が変わっていれば即戦うことになるが。

 緊張しながら足を進めると。


『……人間か。久しく見てなかったな』


 紅い羽を広げた鳳凰が目前に神々しく君臨した。


 一か八かの賭けに出る。


「話が通じるようで助かります。いきなり失礼ではありますが頼みがあるのです。勇者に仕えし神聖なる鳳凰様ならば、話を聞いていただけると思い参った次第です」


 言葉遣いには細心の注意を払う。


『頼みと。確かに我は勇者様に全てを捧げた身。だが、人類に見方をしているわけではない。今はこのような辺境に閉じ込められ自由がきかず、ここに来る者は我を見ると逃げて話にすらならない。いくら魔王軍によって勇者と敵対してしまったとて、我は人類のために働いたというのにおかしな話ではないか』


 やはり英雄譚にあるような勇者を慕う人柄だ。

 少々お怒りのようだが、魔法が解けているのは何より。


「その者たちのご無礼は恥じるべき行為です。ですが、私の頼みをきいていただければ、あなたの自由も保証します。この地下の牢獄から解き放つすべがあるのです」


『ほう……。お主が我を解放すると申すか。聞こうではないか』


「六十階層のバジリスクが開けた大穴が三階層までつながっています。ひとまず鳳凰様の飛翔でそこまで行くのです」


『以前聞いた轟音はそれだったのか、ふむ。ではそこからはどうする、人間よ。かの勇者様は賢明なお方だ。一階層の床とその天井はこの世で最も硬いと言われる黒曜石で作られている。突き破ることはできまい。出口や階段も狭く通れず、我が行けるのは三階層、あるいは二階層までのように思われる』


「もちろんその通りです。そしてここからがわたしの番なのです。まずはこれを見てください」


『はて』


「ニャリア、少し近くに来てくれ」


「はい?」


 疑問に思いながらもニャリアは近づく。


「万物をだませ。ドルークヴェルト」


 ニャリアに向けて緑色のオーラを解き放つ。

 少女は「え!え!何なのですか~!」とオーラから逃れようと体をよじるも意味をなさない。


「姿を鳳凰様に」


 緑の神秘的な光に包まれたかと思うと、ニャリアがいたそこには巨大な紅の鳥がでんとたたずむ。


『考えたな、人間よ。変化魔法を使うとは』


「その通りでございます。三階層からは鳳凰様に人間と化してもらって、そのままダンジョンの外に出るのです。わたしは拙い魔力しか有していませんが、ダンジョン外の人目がつかない場所までは導いてみせます。何が何でも」


『面白いことを考える。良い案だ』


 よし、合理的な方でよかった。

 英雄譚では『理に通ずるも、頑固なこだわり』とあったから、一筋縄でいくとは思っていなかった。


『しかし、我に力を示せ。話に乗るのはそれからだ』


「「え」」


 変身した姿に「ほえ~」とのんきな声を上げていたニャリアでさえ唖然としているようだった。











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