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8. ニャリアとの打ち解け

 手際良く簡易的な飯の準備をしながら、話に興じる。


「ほう、田舎からダンジョン攻略をしにきたと」


「はい、わたしの家族、いえ村自体が飢饉で苦しんでます。そのためにわたしは一攫千金にダンジョン攻略を選んだのです。幸いにも剣士スキルを持っていたので、活かすほかないと思って」


長い緑髪を指にくるくると巻きながらニャリアは話すも、「ですが……」と暗い雰囲気に。


 俺は焼いた肉を頬張るのをやめた。


「わたし、覚悟を決めて挑んだと思ったものの、魔物が怖くて怖くて、傷つけるのが怖くて怖くて、パーティーの足手まといになってしまいました。エデルソンさんたちが怒るのも無理はないです。だって、だって……、死と隣り合わせにある戦いのなかで、怯えてにげていたのはわたしですから……!」


 俺はニャリアにひょいっと肉を手渡し、食べるよう促す。


「確かに戦場において役割を果たさないのはいただけない。だが、そのパーティーである仲間がその事情を汲まないで、ましてや捨ておこうなどとするのは論外だ。だから助けたんだ」


「アインさん……」


「それにな。ニャリアは俺がバジリスクに喰われる寸前、剣を手に救いに来てくれたじゃないか。あの時の闘志は冒険者、いや剣士そのものだったよ。俺の方こそありがとう」


 少し恥ずかしくなって来たのでガブガブと肉を頬張る。うまい。


「その言葉に救われます。わたしが剣士として一歩踏み出せたのはあなたのおかげです」


「あー、やめてくれやめてくれ。褒めあっても恥ずかしいだけじゃないか。今はどうやってここを脱出するか考えよう」


「むー、感謝を伝えることは打ち解けるために必要なんですよー! 村長が言ってましたもん!」


「へいへい、村長の話は地上に出てからゆっくり聞くから」


 ニャリアはぷんぷんと怒るが、俺は意に介さず作戦を伝える。


「五十九階層の主については知ってるか?」


「あー、えーと、あれですよね、うん。ちょっと忘れてしまいましたけど」


「はぁ、無知は罪だぞ、まったく。階層主は鳳凰だ。冒険者は今までその強さのあまりにスルーして来たが、それが今回は功を奏しそうだ」


「まさかその鳳凰ってのがレアなアイテムでも落とすんですか⁈」


 指を横に振る。


「その鳳凰に乗って三階層まで飛んでくのさ。な、簡単だろ?」


「なっ、何を言ってるんです! そんなの無理に決まってます!」


「まあまあ落ち着け。六十階層の主にここまで連れてこられたんだ。五十九階層の主なら逆に上まで連れて行ってくれるかもしれないじゃないか。一層ずつ地道に上がってもいいが、時間的に食料が尽きる。起死回生の一手を打つしかないんだよ」


「……自信があるならついていきます。無理そうだったらすぐ安全な場所まで逃げましょう。待っていれば助けが来るかもしれません」


「助けはこないだろうな。この街でそこそこ有力なやつに喧嘩を売っているんだ。しかも俺たちはただのE級冒険者、いなくなったところでダメージはないに等しい」


「そ、そんな……」


「まぁ見てろ。俺の作戦は成功するはずだ。ニャリアが成長したように、俺も成長しているんだししな」


 俺はそう言って手を高くかざす。


「轟け! サンドストーム!」


 渦巻く旋風が砂と土をまといながら壁をえぐる。


「えっ! それはギガントゴーレムの土魔法じゃないですか!」


「あれだけ敵を倒したんだ。スキルをゲットしてもおかしくないさ」


 ドヤ顔で魔法を披露してみたが、意外と盛り上がってくれて助かった。

 少しはホッとしてくれただろうか。


「よし! これで百人力ってやつですね! 今すぐお見舞いしちゃいましょう」


 想像以上にノリノリだった。

 よかったのか……?


 ニャリアには伝えていないが、もうひとつとっておきのスキルをゲットしている。

 お披露目はもう少し後になるが。


 にやりと笑うと「なんで笑ったんですかー」とうるさいニャリアだった。








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