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5. 初の三階層


 『ダンジョンには魔物が住まう』


 英雄譚の名高い台詞だ。


 文字通りゴブリンやらゴーレムが蔓延るというわけではない。

 油断や慢心から死に陥るという箴言だ。


「いや、仲間ですら魔物になり得るのかもしれないな……」


 三階層で蛾のモンスター、キラーモスを剣でいなしながらあの日の出来事をかみしめる。


 即死魔法は一撃必殺。

 最強だからといって甘えてはいけない。

 せっかく剣士のスキルも賜ったのだ。

 即死魔法がなくとも戦えるくらい強く在りたい。


 キラーモスの麻痺粉を避けつつ、剣で斬り裂いた。


 ガマ袋に粉を詰めて、小さい魔石もしっかりしまう。


 周りには魔法士もいるが、前の街に比べたら武器使いが多い。

 少しは気が和らぐものだが、パーティーを組む者ばかり。

 ソロで挑むのは俺だけか。


「依然として悪目立ちするのは変わらないな……」


 と敵を探していると何やら揉めているのに気が付く。


 昨日ギルドでダレットに続いて自己紹介してきた漢エリクソンのパーティーだった。


 頭に包帯を巻いた緑髪の少女が囲まれている。


 何事だ?


 岩影に隠れ、いざこざを見守る。


「あのなぁ、剣士だからって女にもかかわらずパーティーに入れてやったのに何だその剣筋は。俺様にはわかるぞ。お前、剣士スキル持ってないだろ。持ってるだなんて嘘っぱちこきやがって」


「そうだそうだ! 親分の言う通りだ! せっかく今日限りで入れてやったのに」


「こっちが守ってやってんのにちびっころはアイテムを拾うだけ。帰っても一銭もやらないかんな!」


「そ、そんな、横暴です! わたしだって剣士スキル持ってます……。ただ、まだ魔物と戦ったことがなくて……その……、今日だって三階層に来ること知らなくて……」


 漢は苛立ちを込めるように、剣を岩壁に突き刺す。


「あぁん? 聞こえねえな! はっきり喋ってくれや!」


 やけに威圧的だ。

 怯えた少女に寄ってたかって恥ずかしくないのだろうか。

 がっしりと拘束されている少女は身動きが取れないようだ。

 

 少女と目が合う。


 仲間に裏切られた思い出がフラッシュバックする。


 ……仕方ない。


 いくしかないか。


 颯爽と漢の前に姿を現す。


「昨日ぶりだ。エデルソン、だよな」


 漢は若干驚いたようだったが、こわばった顔は崩さない。


「よぉ、昨日の小僧。こんなところでどうしたよ。俺様たちは今お取り込み中なんだ」


 少女は黙ったままだ。


「……その子をどうするんだ?」


 俺は偽善者じゃない。

 彼の返答によっては見過ごすつもりだ。

 少なからず少女の自業自得もあるだろうしな。


「どうするってか。あんまり言いたくないが、小僧も俺たちの『仲間』だ。特別に教えてやるよ」


「助かる」


「身ぐるみはいでここに捨て置くさ」


 

強く剣を握った俺は深く地を蹴った。





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