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24. A級魔法士の過去

 狩り尽くされた魔物の死体が転がるなか、アルマデスが呟く。


「わたくしの慢心だったようだ。ダークスライムがかのような技を隠し持っているとは聞いたことがあるだろうか、いやない」


 高潔なアルマデスが失態を嘆く。

 しかしかける言葉がない。

 なぜなら俺も同じように、自身が持っている情報だけを頼りに油断していたからだ。

 だからまだ希望はあると安心させるしか出来ることはない。

 彼は死んでしまうにはまだ早すぎる。


「だけどニャリアがギルドセンターに向かっている。毒の回復魔法を持った魔法士を連れてくるはずだ」


 長身の男は虚ろな顔で首を振った。


「わたくしは孤独だ。この街でパーティーを組んだことは数少なく、誰からも友好的に思われてはいないのは明白。もちろん力こそ認められ求められているものの、人々は本当の意味で近づこうとはしない」


 力を持つ者だからこそ敬遠される、か。

 ダレットは力がないと剣士の未来を嘆き、だからこそ剣士だけで徒党を組んだ。

 その意味では逆説的に納得がいく。

 

「もっとも、わたくしが近寄らなくても良いと早く切り捨ててしまった節もあるであろう。強者が弱者を救う、これはわたくしの信念だ。そして強者同士がお互いを補完し合う、これが理想」


「なるほどな。もしかして、だから俺にA級冒険者まで上り詰めてみろって言ったのか? 同等の力を有してこそ仲良くなれると」


 アルマデスは痛みを気にしながらも話す。


「うっ……。ゆえにD級ごときの冒険者にこうして挑んで、力を試そうとしたのかもしれないな」


 だがかく理想があるなら余計に疑問が残る。


「ではなぜこの街に? 例えば王都なら上級の魔法士はわんさかいる」


 わずかに心当たりがあるが、聞くのが一番だ。

 アルマデスは壁に背を持たれかけながら語る。


「そなたになら言ってもいいであろう。

 わたくしがこの街にいる理由。それはクレッシェ嬢の存在だ。そもそもこの街はわたくしが王都を目指す上での道程に過ぎなかった。されど彼女と出会ってその目的はどうでも良くなったのだ。彼女から依頼を受け、彼女に依頼達成を告げる。この程度の関係で幸せといえるほどなのだ」




◇ ◇ ◇ ◇




「この街で一番報酬がもらえる依頼はどれであろう。わたくしひとりで受注したいと思っている」


 王都道中で意外に資金が足りてないことに気づいたので、小さな街のギルドセンターに足を運んだ。

 単独で高難易度の依頼に挑む。それがどれだけ異常な行為なのかは重々承知しているし、その不安を払拭できるだけの実力は有している。


 だけど皆こう言うのだ。「さすがにお一人様に高難易度といわえるAランククエストはお勧めできません」と。


 「若さからいけると思うかもしれないけど、ダンジョンはそんな甘いものじゃない」と強く忠告も受けたことがある。


 もちろんリスクマネジメントは有用だ。

 ギルドセンターの窓口はただの雑務ではない。

 クエスト達成の助言に限らず、冒険者の死を回避するために無理なクエストを避けるように伝えることも仕事であろう。

 そのリスクマネジメントで自身がAランクであろうと問答無用でひとりでのAランククエストは受けられなかった。


 しかし彼女は違った。


「Aランククエストの二十階層主、シャドウオーガの討伐が一番需要と報酬があるわね。冒険者もその強さに恐れてまだ倒してないのよね」


「……もう一度確かめたいんだが、ひとりだけで受注することも可能であろうか」


「ひとりね……。うーん二人ならいいわよ」


「いや何を言っている。わたくしはひとりだ。影魔法のことを言っているのか? それとも仲間をつくってこいというのか?」


「違うわよ。昼から窓口交代だし、二人で行こうってことよ」


「な……」


 初めてのことだった。

 若くしてダンジョン経験は多いが、いつもひとりだったから。

 回復も援護もなくとも、受ける前に魔法で殲滅するセオリーが今まで通用していたから仲間は必要なかった。

 

「よろしくね。名前はなんていうのかしら」


「わたくしはアルマデスだ」


「そう、アルマデスくんね、わたしはクレッシェよ」


「くんづけはやめていただきたい。やりづらさが増すだけではないか」


「そう、こだわりがあるのね。改めてよろしくね、アルマデス」


「よろしく、クレッシェ嬢」


 今日の目的は王都までの資金調達である。

 ふたりだと調子は狂うが、魔法をぶっ放すだけでいい。

 戦闘の邪魔にならなければいいものだ。

 

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