13. 小金持ち
ギルドセンターに入るや、クレッシェが怒涛の勢いで詰めてきた。
窓口の美貌エルフは畳み掛けるようにまくし立てる。
「アインくん! 話は聞いてるからね! ダンジョンのどでかい穴にあなたが関与してるって話を!」
「またまた仕事量増やしてしまったみたいで申し訳ない」
頭を抱えながらもクレッシェの表情は柔らかい。
「まったく本当にもう。でも推定六十階層からよくもこんなに早く帰ってこられたわね。命があっただけでもマシよ」
「まぁそれは秘密ってことで。この調子だとA級冒険者の肩書もすぐってもんだ」
「A級といえば、この街で唯一のA級魔法士のアルマデスって人には会ったかしら? ダンジョンを見に行くと言ってさっき外に出て行ってしまったけれど」
先ほど漢たちとの一触即発から救ってくれた人のことだ。確か名前もアルマデスと言っていたしな。
「一応会話はしたがそれがどうしたんだ?」
「ううん、あの人はギルドでも贔屓にしてるし、この街で過ごすなら顔くらいは合わせたほうがいいから聞いただけよ。彼にはダンジョンに空いた大穴を塞ぐ計画にも念のために参加してもらうつもりだし。また話が決まったらアインくんにも報告するわ。当事者だから参加は強制よ」
「面倒だ。金は弾むんだろうな……」
「ギルド直轄の依頼だから報酬はかなり期待していいわ。出来高制だけれどね」
ニャリアは金の話を聞くや目を輝かせている。
「また伺うよ。じゃあ俺は素材と魔石を換金してくる」
手を振ってギルドセンターを後にした。
「どれくらいのお金になるんですかね!」
ニャリアはわくわくとステップをきざんでいる。
今日は疲労困憊だと思ったが、上質な素材と魔石ということもあり期待しているのだろう。元気だ。というか子供っぽい。
「魔石の輝きも今まで見たものとは段違いだ。特にバジリスクの魔石と皮は一級品だろうな。やつのスキルも手に入ったら最高だったんだけど」
「それは高望みしすぎってもんですよ〜! 今はバックパックにぎっしりつまってる宝を売り捌くときです!」
そうこう話していると俺は街の一角にある小さな店を訪れていた。
「こんな夜にやっているんでしょうかね」
「大丈夫だ。ここのおやじは金目のものには目がない。おいっ! おやじー! 生きてるか〜!」
暗い店にランプが灯される。
店の奥から現れたのは太った行商人。
移動する最中にお世話になった人だ。
「お? その声は僕ちゃんですぞ?」
「ご名答。さっそくその【鑑定】スキルで素材と魔石の値段を見繕って欲しいんだ」
そう言ってパックパックからジャラジャラと集めたアイテムを台の上に出す。
「わくわくしますね!」
老眼鏡をかけてまじまじと見定める行商人。
「ほほう」だの「うーむ」だのぶつくさ言いながら一品一品精査している。
「なぬ! 僕ちゃんがこれほど良い素材を持って来るとは思いもしませんでしたぞ。例えばこのダークアルラウネの花は上質なポーションの材料ですぞ。ダークアルラウネなんてA級魔法士がパーティーでかなりの時間をかけないと倒せない強敵と聞いてますが、僕ちゃんとその可愛い子ちゃんでこの大量の素材を手に入れたと仰るのですか?!」
「まぁ工夫してやってみたら意外といけちゃったって感じだ。過程は詮索しないでくれ。大切なのは大量の素材があるという結果だろ? いくらなんだ?」
ニャリアが隣でゴクリと生唾を飲み込む。
「しめて……金貨五枚ですぞ!」
「き、金貨五枚?! そんな大金を一夜で稼いだなんて?!」
猫耳少女は興奮を止められないようだ。
たしかに金貨一枚あれば一月は衣食住に困らないだろう。
べらぼうな大金だ。
「値下げしたりカマをかけたりなんてしてないよな?」
「ええもちろんですぞ。ぜひここで換金してもらうのが理想ですが、他の換金所や行商人に話を持ちかけてもらっても構いませんぞ」
「いや、他の人はあまり信じられない。まだオヤジの方が比較的マシだ。換金して欲しい」
「つんつんですな〜僕ちゃんは。いいでしょう、金貨を用意してきますぞ」
そう言って小太りはぴょんぴょんしながら貨幣をとりに行った。
「やりましたね! アインさん! これで一気に小金持ちですよ! 王都の資金も安心できそうですね」
「どうやらひとまずの目的は達成できそうだ」
大金を粗悪ながま袋にしまう。
宿屋に向かう足取りも心なしか軽かった。




