11. 心からの打ち解け
『……なるほど、そのような手段で強襲したか。勇者様も言っておった。狡猾な戦略はあらゆる魔法にも勝ると。我を地に落としたのはれっきとした事実であろう。よい、我の背に乗るが良い』
空いた穴にたどり着くまでに作戦の全貌を話すと、鳳凰は納得したようだった。
「鳳凰様、ありがたいお言葉です。では乗せていただきます」
俺はひょいっと乗り、ニャリアを手引く。
二人が乗ると『では参ろう』と真上に飛翔した。
ニャリアは鳳凰との一戦で恐ろしい速さで駆けで俺を助けた。
あれは単なる人間のなせる技ではない。
獣人でないとなせないスピードだ。
俺も少しモヤモヤするし、ニャリアも浮かない顔でいたので勇気を出して話しかける。
「なぁ、さっきの【迅速】を使えるってことはニャリアは獣人なのか?」
「はい、そうですよ。もちろんアインさんには伝えてないです。わたしは自分が獣人だとバレるのが怖かった……。そんな独りよがりな考えでアインさんに伝えず、窮地に追いやってしまいました。事前に知らせていれば、もっと早く難なく達成できていたのに」
この世界で獣人が奴隷として扱われているのは歴史的事実だ。今も獣人は辺境の村に住み、人間から忌避するように過ごしている。エルフは人間にかなり許容されたものの獣人への拒絶を表す人々は多い。
ニャリアが頭の包帯をめくると、立派な猫耳が姿を表す。
彼女が包帯をしていた理由なのだろう。
鳳凰はドヤ顔で呟く。
『我は知っておったぞ。娘が獣人であることも。【迅速】とやらには注意すべきだったな』
だから鳳凰はニャリアを眷属と称したのだろうな。合点がいく。
「俺は別に獣人を差別してない。同じ人間だと思っているし、それに……」
ニャリアは俺を遮るように話す。
「優しいのですね。私の村がターゲットにされたのは獣人の村だったからです。その時、経験した幾度ない暴言や暴力は忘れることができません。なんとか資金援助で奴隷だけは避けられましたが、裕福な村でもなく……。そこで唯一【迅速】をもつ存在だったわたしがダンジョンにお金を求めて挑んだのです。でも辛い過去からパーティーの人には打ち明けられず、助けてくれたアインさんにもだんまり。一人で、いいえ人間に言わせると、一匹で頑張るしかなさそうですね。ごめんなさい、わたしのせいでこんな面倒なことに巻き込んでしまって」
ニャリアは顔を下に向けて潤んだ目で謝る。
罪悪感や悲しさを含んだ切ない表情だ。
「もう一度言うが、俺は獣人を差別してないし嫌いでもない。むしろ好きだ」
「え?」
俺は鳳凰の体を片手でしっかり掴みながら、ニャリアの猫耳を撫でる。
「だってこんなにも可愛いじゃないか。猫耳も尻尾もひたすらに可愛い。しかも【迅速】を持っているとなれば可愛くて強い。かの勇者様だって強かったけど、可愛いは成し遂げられていないんだ。そう考えると凄くないか?」
これは本心からの思いだ。同情などではない。
『人間よ、勇者様はカッコよかったし、たまにお茶目で可愛らしさもあった。そのような娘と同列に語るではない』
空気を読まない頑固者が一羽いた。
水を差されてしまったが、ニャリアは少し笑ってくれている。
「鳳凰様の言う通りです! 勇者様はカッコよくて可愛くて強いんです! そしてアインさんは強くて優しくて優しくて優しすぎます! ほんっとに。英雄譚に記されてなくても、わたしの頭の中にはしっかりとアインさんについて書かれていますよ」
どうやら少しずつだが気持ちを許してくれているようだ。
本当の仲間というのはこうして作られていくのだろうかと珍しく思ってしまう。
ちなみに鳳凰が『勇者様の優しさには勝てない』とこれまた空気を読まない発言をしていたが、ダンジョン脱出のために相槌を打っておいた。




