12話 その6
この都市は衛兵隊の数も多く巡回も早かったので僕達は出番がないまま何事も無く朝日が昇った。
「総員!出発!」
何のアクシデントも起こらずヒューデンを出てしばらく経って国境を越えて深い森に入った。
「ここから無統治区域だ!魔物の襲撃に警戒して進め!」
「はっ!」
無統治区域?
聞き慣れない言葉だったので依頼主に聞いた。
「無統治区域ってなんですか?」
「え?あ、はい、どこの国にも属してない無開拓地の事で…この密林も一角に過ぎません」
「へぇー!なら開拓し放題じゃないですか!」
なんと胸が踊る話しだ!さすが異世界!
「いいえ…そうでもありません…強い魔物達の住処になり果てて開拓は混乱です…我が国も開拓は何回か行いましたが魔物の襲撃が休む間も無く続き…甚大な被害を受けて放棄しました。」
まじか…うん…さすが異世界…。
しかし!勿体ない!…ルル姉の件が終わったら開拓でもしようかな?
「国内もまだ対処出来ず…資源採掘や流通に困ってるのが現状です…」
「大変ですね…」
森の中を深く進むほど馬車は激しく揺れて来た。
車輪が石を踏んで大きい揺れたせいで依頼主は体勢を崩して僕に飛んで来た。
「きゃっ!」
「おっととぉ!」
彼女の体を抱き受け止めて揺れから守った。
「も、申し訳ありません…」
依頼主のお姉さんから凄くいい香りがした…。
それに今までフードを被っていたので気がつかなかったが…近くで見ると本当に見惚れてしまうほど綺麗なお姉さんだった。
「あっ、怪我してませんか?」
「はい……」
「お嬢様!!怪我はございませんか?」
マリーヌさんが心配で馬車に馬を近づけて来た。
「ええ…大丈夫です」
「この先は道が悪くてしばらく揺れます…申し訳ありませんがしばしご辛抱を…」
「ええ…気にせずに進んで下さい」
「はっ!」
揺れはもっと酷くなって依頼主は僕の腕を掴んで来た。
揺れと密着のコラボがファンタスティックな感触を増して戸惑いと…僕の心臓は今オーバーヒート瞬前だ。
やばい…血圧が!
ムラムラして鼻血出そう。




