8話 その7
彼女達は双子で同じく冒険者見習いだった。
顔はそっくりだが姉は活発で気が強そうに見える。
妹はおっとりして穏やかな感じだった。
双子も僕と同じく街周辺の依頼が無くてここに潜る事になったと話してくれた。
「しかし…女の子二人で危ないですよ」
「ですね…でも、お金が必要ですから…」
それは痛いほど分かる!たけど…。
「リリヤ、行こう…時間がないわ」
「お姉ちゃん!まだダメだよ!」
「大丈夫…まだやれるわ」
二人にはなにか事情がありそうな感じだった。
それに傷も完全に治ってない彼女達を放って置けなかった。
「待って!提案があるけど…聞いてくれる?」
「提案ですか?」
「僕とパーティー組んでここ潜らない?」
「お姉ちゃん、シムラハルトさん凄く強いですよ!オーク6体を一瞬で倒したよ!」
もう…褒め過ぎ♪ちょっとビビったけど…。
「私達と組んでもシムラハルトさんには何のメリットも無いと思いますが?」
むっ!そう来たか!まだ警戒してる…当たり前だけど…ちょっと傷つくわ!
僕も今日ダンジョンに入ったのは初めて重装備のせいで荷物はあまり持てないと言い訳をした。
この鎧…全く重さなど無いブリキだけどな…。
また三人だともしもの時…助け合うことが出来るからと彼女を説得した。
「うそ!同じ見習いだったの?なのに何なのその装備!それに高価な回復薬も!」
やはり…この見た目だけは神話級の装備に勘違いしていた…。
「うん?今日ギルドから見習い限定で買った装備だよ?あと薬はギルドのおじさんがらもらい物だよ」
「は?私達にはくれなかったのに……」
あっ…余計な事言っちゃった。
ごめん…おじさん。
「それに、その装備…初心者限定?まさか、あの子のあれを買ったの?」
双子もその鍛冶屋を知っているようだ。
「うん!そうだよー!凄い腕だったよ♪格好いいでしょ♪」
「あんた…頭の中…花畑なの?」
イリヤは僕の喜ぶ姿を呆れた目で見ていた。
「お姉ちゃん!失礼だよ!それに、私は賛成だよ」
「まぁ、酷い事言って悪かったよ…私もいいわよ!」
おおーー!まじで?
祝!脱ボッチー♪イェーイー♪
「決まったね……んじゃ分配は?」
姉のイリヤはしっかり者だった。
「三人山分けでいいよ!」
記念すべきの日!もう全部あげてもいいと思った。
でも…僕もお金は必要です。
「えっ?本当に?後でやっぱ無しとか言わないでよ!!」
疑い深いな…僕のガラスのハートにまた傷付けたわね…。
「それ以上疑われたら僕…泣きますよ…」
僕の泣きそうな顔に双子は笑ってしまった。
「ふふふ、ごめんなさい!分かったよ」
「では、宜しくお願いします、シムラハルトさん」
「んじゃここを片付けて…今日は出ましょう」
今日は切り上げる…。
なぜならイリヤの負傷とパーティーを組んだばかりでお互いを知らない。
「お姉ちゃん…シムラハルトさんの言う通りにしようね?まだ本調子じゃないし…」
「わかったわ…」
「明日は今日の分まで荒稼ぎしますから!」
「うん……」
「お姉ちゃん……」
何か焦るイリヤは仕方なく帰る感じで渋々僕の後ろに付いて来た。




