1話 その5
僕は初めて見たスピリチュアル的な存在に出会って興奮してしまったというか…魔が差したというか…好奇心で落ち込んでるルルさんに近付いた。
「ルルさん…ちょっとこっち向いて下さい」
「後にしてくれないか…ちょっと、今の自分の置かれた状況に軽く絶望してるとこ…ん?」
ルルさんが顔を向けた瞬間…僕は長いフライドポテト二本を両手で持って構えた。
「はぁーっ!二刀流突き!せいやーっ!!」
「くは!ぬうおーー!」
僕はフライドポテトをルルさんの鼻の両穴に奥深く見事にぶっ刺してしまった。
「おほふ…信じられない…め、女神の鼻にこんな物をぶっ刺すとは…くぅ…この罰当たりがぁー!ああ…もう幽霊だっけ?ふふふ…もういいです…どうでもいいや…」
ルルさんはフライドポテトをブラブラと鼻に刺さったまま…また…くの字になった。
本当に見事に刺さってしまった…。
すり抜けると思ってやった…。
本当なんだ!信じてくれ…。
……ん?
「ルルさん!ルルさん!!ポテトが鼻に刺さってますよ!!」
「分かっとるわい!!お前が刺したんだろがー!!ん??えっ?」
ルルさんもやっと気が付いたか…驚いた表情で鼻に刺さったポテトに震えながら手を向けた。
そして…それを思い切り握り取った。
「と…と…獲ったどぉぉーーー!」
ポテトを両手で取って空に向け叫ぶ彼女は…物に触れた事が凄く嬉しいようだ。
「ルルさん!もしかしたらハンバーガーも食べられるじゃないですか?」
僕はルルさんにハンバーガーを差し出した。
「うむ…試して見よう…(ごっくり)」
目をつむりながらハンバーガーを取ろうとしたが僕の顔にその手が近づいて来た。
「あの…ルルさんそっちは僕のオデコの方ですけど…」
「あっ!すまん!緊張して手元が狂った……えいっ!!」
そして、ハンバーガーは僕の手からルルさんの小さくて綺麗な手に渡った。
「う、う、嘘見たい…長年あれほど物に触れようとしたが…叶わなかったのに…こんなにもあっさり…」
ルルさんは信じられないような表情でハンバーガーを見つめていた。
「食べて見ませんか?美味しいか分かりませんが…僕は好きですよ?マックストルネードバーガー……」
「ああ…食べたら口が引き裂かれそうな名前はどうあれ…頂きます!!」
へぇ…ルルさん……突っ込みうまい!
「うん!美味しい…うううう…」
嬉しいのか美味しいのか…よく分からないが…涙目でハンバーガーを食べてるルルさんの姿に、僕は彼女を揶揄った罪悪感で顔を反らしてしまった。
そして、彼女の話しが…全て本当の事なら…気が遠くなるほどの長い時を一人でどれだけ孤独や寂しさに耐えていたか…僕には想像がつかない。
「君!これ、美味いな!もう一個寄越せ!」
「あ…は、はい…どうぞ」
…余計な心配をしたと後悔した。
ルルさんはハンバーガーを5個を軽く食べ尽くしてまだ足りないような表情だった。