7話 その6
ゲームから出て来たのような光景を目にするとワクワクして来た。
しかし…みんな顔が怖いから…びびった。
剣、槍、斧を持った人や弓や短剣を点検する人…杖を持ってじっと座っている人…そんな人が沢山集まっていた。
戦士、スカウト、魔法使いって感じだ。
それより…まず登録だったけ?登録…登録…あそこかな?
受け付けのようなカウンターに立っている女性に向かって話しかけて見た。
「あの…」
「はい!ご用件伺います!」
丁寧で笑顔の女性だったので僕は安心して登録を進めようとした。
「初めてですが…登録…」
「ギルド登録は隣にどうぞ!はい!次の方!」
あ?まだ話し終わってもないよ?
これは営業スマイルか…どこの世界にもあるんだな。
僕は渋々隣の受付けに行った。
「んだ坊主?登録か?」
あはは…典型的なオチだね…
モヒカンのマッチョー!こえーよ!
ムキムキな筋肉…針を刺したら破裂しそうな筋肉だった。
「ど、登録をしたいですが…」
「…………悪い事言わねー、帰りな」
はいはい…帰れるなら帰りたいです!くそ!
しかし、彼の表情は面倒とかバカにしてるとかの目ではなかった。
心配してる目…優しそうなお爺さんの目だった。
「心配してくれてありがとう…おじさん、でもこっちも事情がありますよ」
宿の費用ところか食費さえない…挙句にダンジョン最深部まで行かなかん…あー…また憂鬱になって来た。
「……ふっ!中々いい目をしてる坊主だな…無茶するなよ…登録するぞ」
「はい…」
顔に似合わずいい人だった。
「名前と年齢は?」
「志村晴人…17歳です」
「シムラハルト… 坊主…17だったか!14になったばかりと思ったわい」
この世界の方々が老け過ぎだと思います…それにみんな顔の雰囲気がアレだよ。
北極神拳に出て来るひゃっはーと叫んで群れて来る方々のような雰囲気だ。
「冒険者見習いで、よし…出来た」
「早っ!」
「仮のギルドカードだからな…正式な冒険者と認めて貰えるようになればまた発行してやる」
「分かりました」
次から次へと問題は山積みだ。
「早速ですがなんか私が出来る仕事ってありますか?」
おじさんは僕の左右を見てから依頼書を取り出した。
「武器も防具もないなら討伐仕事はやれんな…薬草や材料採取の依頼あったかな…どれどれ……あった」
ですよね!素手で魔物のタマ取ってこいとか無いよね。
内心期待してたのに…でもちょっとホッとした。
「村を出てすぐ森が見える…そこで黄色葉の花を沢山取ってこい!この辺じゃ黄色葉の植物はそれしかないからな…すぐ分かる」
「おおー!回復薬の材料ですか??」
「は?いや……痔の薬だ」
ん?今何と?……聞き間違いかな?
「この街は事務仕事が多いでな…痔で悩む人も多い…買い取り額ははずむぞ!…実は隣の彼女も痔のせいで機嫌が悪い、頼んだぞ!」
おじさんは僕の耳元でコソコソ喋った。
…要らない情報、ありがとうございます。
「坊主、これ持って行け」
おじさんは採取用の袋を貸してくれた…本当に親切な人だ。
「はい…ありがとうございます!行って来ます」
初仕事は…痔の薬の材料採取です。
いかん!落ち込む訳には…物は考えようだ!
僕は…痔に悩む人々の勇者!メシア…!
んな訳ねぇ…。
しかし…所持金が1円もない僕は生き抜く為、痔の薬の材料採取に行くしかなかった。




