7話 その5
ナズーラ村の人々は皆んな朝が早い。
日が昇る前から人々の声が賑わってく来た。
「う、うるさい…」
この宿の壁は防音性が全くなくて…隣の宿泊客のイビキ声でほとんど眠れなかった。
「眠いわ……はっ!ルル姉…!」
目バッチリ覚めた僕は慌て器の在り処を確認した。
失くしたら殺される!
「あった!はぁー…夢じゃなかったな…」
昨日の出来事は全て夢であって欲しかったが…この器と外の景色を見ると認めざる終えない。
現実を直視して覚悟を決めた僕は出掛ける準備をした。
行くか!冒険者ギルド。
街は早朝から一気に賑わって益々人が増えて来た。
「痛た!」
「小僧!余所見すんな!」
「す、すみません!」
ちょっと余所見するとすぐ人に打つかる。
しかし…冒険者ギルドってとこ?
気合い入れて出たが…ここは日本ではない。
場所も分からないし…交番もない。
宿屋で聞いてから出れば良かった。
沢山の人がいる…聞くしかあるまい。
だが…みんな顔がこぇーよ!
チキンと自負している僕には彼らに声をかけることなど無理だった。
それで…優しそうな従業員がいる宿屋に走って戻る事にした。
「すみません…!」
「あら?どうしました?忘れ物ですか?」
宿屋の主人の娘が厨房から出て来た。
「いいえ、あの……冒険者ギルドが何処にあるか教えて下さい…」
「冒険者ギルド? そこならうちから出て右から4番目の建物だよ!大きい建物だからすぐ分かるよ」
「ありがとうございます!」
礼を言って宿から出た。
ガラスに映る自分の顔は何故かいい笑顔だ。
「グッドチョイス」
それにしても…異世界なのに話し通じてるのが不思議だった。
神様的な何かの力が働いてるのかな?
僕は冒険者ギルドの前に着いて深呼吸した。
ここから僕の異世界ライフが始まる…気合い入れて行こう!
ドアを開けて入って行った。




