1話 その4
早まった!ああぁ…この人と朝まで付き合うのは精神的に無理だ!どうしよう?
彼女は僕が何を考えているのか気付いた様子で…怖ーい顔してその顔に近付けて来た。
「君…私の事…痛々しい厨二病の女とか思ってるんじゃないか?イヒヒ」
「いや…その………ちょっとだけ……」
だが彼女の怒りの顔はすぐ虚しさに変わってため息をした。
「そうだな…この世界には神の信仰も存在すら薄いでな…当たり前か…」
その壮大な自己紹介はどうあれ、彼女の落ち込んだ姿に少し胸が痛む僕だった。
それで僕はハンバーガーとフライドポテトを取り出して話を合わせる事にした。
話を合わせる事ぐらいは何とかできる!
「あのルルさん…一緒に食べながらその何ちゃら大陸の話ししてくれませんか?」
「うん…?ルルさん?」
「ルナファナリールカさんって長いし呼び難いじゃないですか?ですから略してルルさんで…」
そう…舌を噛みそうだ。
「フッ…まあ悪く無い呼び名だ!なら、ルル様で良い」
様?まあ…いいけど。
「はい!ルルさん!」
だが…断る!
「お、おぅ…君、顔に見合わずに根性座ってるな…まあ良い好きにせい…」
「はい!ルルさん」
「って!なんちゃらってなんだ!私の世界バカにしとるんかい?あん?」
その地名、一回聞いて覚えられる訳ない。
「まあまあ…冷める前に食べながらね!」
僕はハンバーガーとフライドポテトを手に取って差し出したが…彼女は何故か困った顔をした。
「ハンバーガー嫌いですか?すみません…」
「いや君が謝る事はない…嫌いではない!そもそも口にした事もないんだ…むしろ食べて見たいぐらいだよ……」
「では…なぜ?」
「ああ…それはな…食べられないからだよ…触る事さえ出来ない…ほらね…」
ルルさんの手はベンチの背もたれを掴もうとしたが…すり抜けて掴む事が出来なかった。
それにベンチから浮いて飛んでいた…。
びっくりして心臓が飛び出して…喉に詰まって窒息死するかと思った。
あの時…僕が見たお尻の跳ね上がる姿はベンチに座ってるように見えて…実は浮遊していた事に気づいた。
紛らわしいよ!僕のアンビリバボの気持ち返せ!よく考えたら…んなわけ無いよな…
胸が躍った自分が恥ずかしくなった。
「ん?…という事は!えーー!ルルさんって…幽霊だったんですか!」
「ゆ、幽霊?貴様ぁぁ!女神だというておろうが!無礼にも程があるわ!そんな未練ダラダラ残し彷徨うようようなものと私を……」
怒り出したルルさんは急に黙り込んでくの字になった。
「うん…そうね、私も女神のチカラを失い3000年以上この地を彷徨う立派な幽霊じゃないか…あはは…もう幽霊でいいです…」
彼女は呪いを吐くようにぶつぶつ独り言を始めた。