1話 その3
何かのジョークか今流行りのギャグか分からなくてスマホで検索までした。
検索結果…0件
オーケー…この場合は普通に返事しよ!
「僕、視力だけはいい方です…すれ違った女性のお尻の形とサイズまで分かります」
よし!普通で最高の返事出来た!
「へぇ…君…凄いね?まあ…そんな事は聞いてないが」
彼女は自分のお尻を手で隠しながら僕を変態を見る目で見て…微妙に距離を取った。
視力の良さを詳しく説明しただけなのに…。
「まあ…いいわ…君の名前は?」
彼女は何か言いたい事がありありそうな表情だったが…すぐどうでもいいような顔に変わって話をすり替えった。
「僕は志村晴人です…年は今日で17歳になりました。」
今度は普通に自己紹介が出来た気がする!
これでまたゴミを見る目をしたら立ち直れなさそう。
「うむ!良い名だ!それと、誕生日おめでとう!志村君!この先君に幸あらんこと祈ろう…」
この反応!僕はまだ廃人レベルまでは至ってないようだ
それに彼女の優しく微笑む笑顔を見て…顔が熱くなった感じと胸がドキドキした。
初めて会った人に形だけのお祝いの言葉だが彼女の言葉には真心と暖かい気持ちを感じた?
僕は嬉しくさとはずかしさに彼女から背を向けて礼を言った。
「あ…ありがとうございます…」
「ぷっ!照れてる照れてる可愛い可愛い!あはははー」
「揶揄うの…やめてもらいません?」
腹を抱えて笑われたが…嫌な気分にはならなかった。
彼女の笑顔は本当に見惚れるほど綺麗で無邪気な笑顔だったからだ。
「うむ…誕生日なのに悪いが…今しばらく付き合ってもらえないだろうか?」
「は、はい?何をですか?」
「……最後の夜は楽しく誰かと語り合って過ごしたいのだが…だめだろうか?」
先までの彼女の笑顔が寂しくて切ない表情に変わった。
早く帰ってやっと出たゲームの新キャラの育成をしたかったが…僕はその顔の前にして何故か断る事は出来なかった。
「いいですよ!どうせ待ってる人いませんし……朝まででも付き合いますとも!今年最後の夜、二人で過ごすのもいいですね!」
夜に女の子を置き去りして帰るのも気が引ける…本当は偶然な出会いにちょっと萌えている!
「おーー!本当か!ありがとう!…しかし…大晦日の夜…一人寂れたこんな所で…君…ボッチかい?」
むっ!そうです!その余計な一言で心のダメージを受けているボッチです。
「あの…否定はしませんが…流石に傷つきます…それに危ないんじゃないですか!こんな暗い場所で女の子一人…ん?……って貴女も同じボッチじゃないです?」
「あはははは!すまん!すまん、ふむ!私も自己紹介をしなければならんな!」
彼女はベンチから立ち上がり凛々しく自己紹介を語り始めた。
「心して聞くがよい!そして光栄に思え!私の名はルナ、ファナリー、ルカ!そして!」
「へぇー!外国の方だったんですか?日本語が流暢で分かりませんでしたよ!すごい!わーい!パチパチ」
「………」
思わず…話の腰をポキっと折った僕の顔に彼女はグーを出して来た。
丸くて柔らかそうな手…殴られても痛くなさそう…。
「おい、君…人の自己紹介は最後まで聞かないと、どっかの怒り狂った女子に殴り殺されるーとかなんとかの話し親御さんに教わらんかったかね?」
「その様な話は初耳ですが…今後から気を付けます!続きをお願いします」
「ふんっ!許す!改めて名乗ろう!」
彼女は真剣な顔でもう一度自己紹介をやり直した。
「私はルナファナリールカ!そして!私はこの世界の者ではない…」
そうだな…最近ヘッドホンでボリュームMAXでゲームをやっていたせいか耳が悪くなってる?…それか日本語を間違えているのか?外人だし…。
「私はこの世界と異なる…ダースアクリア, マムンティア, レガリスという3大陸が存在する別世界の16の大神の一柱!破壊を司る女神である!」
………おう!どっちも違った。
「えへん!人の前に自己紹介は2000年ぶりだよ!なんか照れるなーウフフ♪」
何言ってるんだこのお姉さん?何大陸?女神?2000年?
あまりも壮大で痛々しい自己紹介に僕は体がガチガチ固まって言葉も出なかった。