5話 その6
ルル姉は僕を背負って特異点に向かった。
「はぁはぁ…お、重い…だが、この私がこれしきの事で負けてたまるか!ウンギャー!」
ルル姉は僕の重さに耐えきれず何十回も倒れ傷だらけになっだ。
勿論…僕もだ…い、痛い…。
「ああー!倒れる!あわわわ!」
ルル姉のフラつく体は後ろに傾いた。
「る、ルル姉!危な…かっ!」
そして…僕の後頭部に何か硬い物が当たる感触がして目の前が真っ白になった。
そうだな…これは…意識が吹っ飛ぶ感じだ。
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ルルは諦めずに特異点に到着した。
「はぁはぁ……や、やっと着いた!」
原点に着いた時…微かに光る丸い発光体がルルとハルトに近づいて来た。
「あ?…お主ら…まだ成仏しとらんかったか?」
[私達の息子を宜しくお願いします…]
「心配症だな…分かっておる!誓って立派な男に育ってみせよ!」
[はい…信じております]
「うむ…輪廻の巡りにまた会えるよう祈ろう…」
[元気に頑張って…ハルトちゃん…ゲームで無駄使いしたのは後でお仕置きよ」
ハルトの両親の魂は空を向かって飛びながら消えて行った。
「行ったか……ふふふ…ハルト君…長生きしないと母君にお仕置きされるよ?しかしだな…あの着ぐるみ…本当に普段着だったのね…死に装束まで……すげー!」
その後…ルルは何もない森の方に向けて話しかけた。
「そこに居るであろう!門番…ガウルヤヌースよ!」
「はい…ここに」
空間が歪んで…そこから黒づくめの鎧姿で顔半分の仮面を付けてる不気味な男が現れた。
「……いつからこの世界に来た?」
「貴方様がここに飛ばされてから主神の命ですぐに…」
「なるほど…貴様も長年の退屈だったであろ…亀裂の維持…大儀であった」
「いいえ…長くはありましたが退屈ではなかったですよ」
「ん?」
「ここを通らないよう…人々を脅かしていたのですが…次々来る人が増えて…まあー♪それはそれは本当に楽しい時間でしたよ♪」
「あ?ハルト君が言っていた…心霊スポットの原因は…貴様だったのかい!」
「それに神々も恐れる破壊の女神様の転ぶ姿…その必死な表情!2000年程払う価値がありました!いやはや…記録して何回みても飽きないほどでしたね…」
カウルヤヌスは腹を抱えて笑った。
「見てたなら助けろや…この外道め!」
「主神の命で[手助け禁止]と厳命されておりまして…」
「ちっ…相変わらずだな!あの鬼め…もういい…帰る!道を開けろ」
「御意…」
「あと少しだ…ハルト君!頑張れ!フンギャーアア」
ルルはまたハルトを持ち上げて原点の入り口に向かった。
「おや?その少年も連れ行かれるですか?」
「ああ…文句あるか?」
「私は関係ないし、構いませんが…主神は激怒するでしょうね……」
「ふん!その程度!慣れておる!」
「あはは…そうでしたね」
ガウルヤヌスは納得した表情でルルを止めなかった。
「到着場所は分かるか?」
「いいえ…場所はランダムです」
「ふん!だと思った…」
「良い旅を…ではお気をつけてお帰り下さい…ククク」
カウルヤヌスはルルの後ろから不気味に笑った。
「……ああ」
ルルはハルトを抱き上げたまま原点にに飛び込んだ




