2話 その1
魔王国の魔都べヘイゼルで獣人、翼人、魔人族の魔王国三元老が集まっていた。
元老員は其々広い自治領を持つ大領主であり…魔王すら無下に出来ない権力者である。
「魔王テスラがもうすぐ港都パマールに着くらしいが…イルヨラス、タグマイ…対策が必要じゃないか?」
「まさか…あの司祭の報告が本当だったとは…女神様の帰還、聖魔戦争の勝利…カストーイラ…君と出兵に反対した私達の立場が…」
元老は破壊の女神の帰還を戯言と言って魔王の召兵に拒否した。
それに聖魔戦争に負けて宿敵のカランティア聖王国が滅ぶなど…魔王は各領主や亜人達に今かつでない信頼を寄せている。
「ふん!形だけの勝利などどうでもいい!我々元老員が居なければ何も出来ない名ばかりの魔王などに何を恐れておる?」
腕を組んで魔王を貶す獣人族の男…。
元老タグマイ。
魔王国の最大の領土を持って魔王にも屈しない経済力と兵力を所有している。
魔王テスラを王と認めず、国の政策の協力要請も拒否するばかりで魔王の座を狙っている人物だ。
「しかし…タグマイ…女神がお戻りになられたからには…」
「はぁ?それがどうした?その女神が何かしてくれるか?神など所詮、空から見下ろすだけの存在…当てにならん」
「た、確かに…」
「何の利益にもならない昔の戦争を終わらせたと言ってもね…自己満足だ!そう思わぬか?カストーイラ」
「それより…我が国ね一緒に来訪すると聞いた女神の使いとは…何者だ?何故か気になるな…」
「女神の使い?どうせ、神殿からの派遣された神官かなにかだろう!来ても何か変わる訳が無い…」
「だといいがな…」
「そうだ!グラドニをその使いやらにぶつけて見るか…どう思う?イルヨラス」
「獣人将を?ははは!それはいいね!魔王の怖気付いた顔が見れなくて残念だね」
「ワシらもそのお顔を拝見しに行って見るか?あははは!」
「………タグマイ、イルヨラス…まあまあほどほどにしな」
(さあ…どう出る?魔王様よ?ククク!上手く行けばその座から引き摺り降ろして貰うぞ…ふふふ)
その使いの詳細を知らずに…元老タグマイは獣人将を利用して挑発に乗った魔王を廃位させようと企んでいた。




