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5話 その2

僕は心を鬼にしたその隙に棍棒を取り上げて川沿いに捨てた。


「ぽいっ!」


「あっ?私のミョルニルが!!あぁあぁあぁ!」


捨てた棍棒を取り戻そうとして…ルル姉は橋から川に飛び込もうとした。


ちょ!ちょ!まじかよ!


僕はギリギリ阻止してルル姉を引き摺って店に向かった。


「ああぁぁあああ!私のミョルニル!離せ!この鬼!うううう」


鬼…お兄ちゃんとか言ったら離したかも知れないが…。


ふぅ…まさか…冬の川に飛び込もうとするとは…凄い執着だ。


「むぅ!美味しくなかったら口聞かないからな…」


そのせいか…口あたり膨らんでご機嫌斜めなった。


食欲魔人様には美味しい焼きカニを捧げますのでどうかお怒りを鎮めて下さい。


「出来ましたよ!」


「むむむ…なんかキモいし…これ食べづらい…」


カニ食べた事が無さそうだった。


「あっ!ちょっと待てて」


僕は丁寧にハサミでカニの殻を切り取り…食べやすくしてルル姉に渡した。


「ん?もくもく……ほぅ!はむはむはむはむ……むぅ?なにじっとしてる!はよー切らんか!」


「はいはい…」


まだ機嫌は悪いけどその表情を見ると美味しいらしい。


「うーん♪もくもくはむはむ…」


お気に召したようで…いつもの無邪気な笑顔に戻った。


よし…機嫌治ったな!チョロッ!


あっという間に山の盛りのカニ殻の山が出来た…。


ルル姉は満足したような顔でお茶を啜っていた。


その幸せそうな表情を見ると僕も嬉しくなった。


「次はどこに行くんだ?随分あちこち行ったが…」


「ええ…最後に両親の墓参りして温泉で一泊して終わりって感じです」


葬式のあとから僕は一度も墓参りに行ってない。


僕のせいで事故が起きたと思い込んで両親の前に合わせる顔がなかった。


でも…もう大丈夫!誤解も解けて…それに僕の隣にはルル姉もいる。


早くお父さんとお母さんに元気になった僕とルル姉を会わせてあげたい。


「ふむふむ…そうか!今までの旅でなにか変われた気がしたか?」


「ち、力が溢れて…戦闘力が50万ほど増えました」


「おおおっ!旅ってすげーな!おい…真面目に答えんか…」


「あはは…特に変わってないですが、でも…生きているって悪くないと…思うようになりました」


「悪くないか…上出来だ!生き物として生の執着は何かを成し遂げる為の糧になる…ハルト君一皮むけたね!」


ルル姉はニコニコして僕の成長を喜ぶ顔で見つめていた。


何か母のような眼差しで…複雑な気分だ。

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