19話 その11
赤いローブの女性が僕をじっと見ながら向かって来た。
敵視されてる感じはなかったので安心した。
(神獣をいとも簡単に…この少年がラネースから報告があったハルト殿か?)
彼女が僕に近づいて来たその時…死んだと思ったフロトスの上半身がリリヤに飛び込んで大きな口をあけて噛み砕こうとした。
「リリヤ!!危ない!」
「きゃーっ!は、ハルトさん?」
僕は身を投げてリリヤを押し倒して庇った。
ぺっちゃー!!
その瞬間…馬の足のような物がフロトスの顔面に当たって…その上半身は見事なトリプルアクセルを決めて地面に落ちた。
そして、フロトスはそのまま動かない…死んだようた。
「ツッ!……」
馬の足が飛んで来た方向にはバルトゥールが立っていて…それと凄く残念な表情をしていた。
「バルちゃん…ちょっといいかな?」
「うん?なぁに?お兄ちゃん?」
僕はバルトゥールに近付いてその耳に静かに喋った。
「悪ふざけは…ダメだよ」
「うーん?なんの事ぉ?分かんない…ょ?」
惚けているが…僕ははっきりと見た。
フロトスの上半身がリリヤを襲う前に邪悪に笑っていたバルトゥールを…。
それに正確にリリヤを狙って馬の足を投げる姿を見た。
僕が身を投げてリリヤを救おうとしたのはフロトスの攻撃ではない!
リリヤならそれぐらい余裕で避けれる…。
でも!バルトゥールの攻撃は別だ!あれを普通の人間は当たっても、掠っても、運が良くても、悪くても……きっと即死だ!
それが偶然、タイミングよくリリヤに襲いかかったフロトスに当たったたけの事だ。
「二度やったら、怒るからな!」
「テヘッ!ばれっちた……」
「まじ!やめてよ!僕の仲間だからな!」
この子、本当に恐ろしい…もう!




