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「師よ、その姿…俺も合わせようか?正直…話し難い」
「おっ!なんかそれ…面白そうでいいね!」
変身の達人でもあるロキは一瞬でナイア兄さんと同じ年齢の姿に化けた。
その姿は元の姿とは考えられないほど美形だったのでみんなはともかく自分の娘にまで違和感が半端ない表情になった。
「ロキ…自分の少年期の姿でいいぞ?」
「失敬な!これでもヨトゥン随一美少年と言われてアングルポザは俺にぞっこんだったぞ」
「えーーー!あのプライドの塊の母上が父上にぞっこん?信じられない」
「娘よ…お前とヘルが生まれる前にアングルポザがどれほど俺のこの美形にベタ惚れしたか兄のフェンニルはよく見ていたから知っている」
「へぇ…し、しかし…何故元の姿にはその面影など一欠片もないじゃないですか!」
ヨルちゃんは父のその姿を何故か認めたくないようだ…。
「娘よ…父が美形でなにか不都合でもあるのか?」
「だって…父上や母上の面影どころか兄様は狼で私は蛇の姿だし…ヘルだけは母上に似てましたが」
「それでかよ…拗ねるな!娘よ…我らヨトゥンがどう誕生したのかは知ってるだろ?」
「はい…」
「兄フェンニルとお前が生まれた時は世が乱れ過ぎて負の力が強過ぎた」
ロキの返事にヨルちゃんは渋々納得したような表情をしたがナイア兄さんはまだ納得してない顔だ。
「今と昔とあまりにも違い過ぎるな…ちょっといじってないか?」
「師よ…俺が師より美形で嫉妬してる?」
「ふっ…ここで誰がもっと美形か思い知らせてやる必要がありそうだな…ここは公平に女性の厳しい審査で白黒はっきりしようじゃないか」
「ほう…それはいい!待っ…!」
「女性陣はロキと私…どっちがもっと美形だと思う?」
バムとレヴィは言うまでもなく…それに父の姿を認めたくないヨルちゃんまでナイア兄さんに投票した。
公平のかけらもない投票だった。
「ふふ…圧勝だな、なんか気持ちいい」
「汚ねぇ…でもそれでこそ我が師!」
「で…元の姿にはその面影など一欠片もない理由は?」
「残念ながら我らヨトゥンは成人になると歳を取るたび貫禄のある姿に激変するんだ」
「なるほど…ドワーフ達と同じだな」
「あいつらと我らヨトゥンを同じにするのは不快だけとね…」
「うむ…そうだったな、すまん」
ロキが元巨人であるドワーフとヨトゥンを同じように言うと嫌う理由がある。




