17話 その17
か、か、勝った…。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ…」
「ハルト！やったね……ぅぅ…」
「ハルトさぁぁん！」
激戦が終わったと思うと安心感と嬉しさに僕達全員…泣いてしまった。
僕は双子の肩を両腕で包み込んで感謝の気持ちを伝えた。
「イリヤ、リリヤ…ありがとう！本当にありがとう…二人のお陰で……」
「…………」
「……ああ…」
しかし…二人の表情が急に硬くなった…。
まさか！
倒したと思った主がが背後に立って僕達を見下ろしていた。
「炎魔よ…廃にせい！」
「リガール！全方位防御だ！」
ガガガガガーーーン
ドームの形になったリガールは双子達まで見事に守り切った。
その攻撃によってイビルゲート全階層と…ナズーラ村中央部まで吹き飛んでしまった。
それに…主の凄まじい爆発に耐え切れずリガールは亀裂が入って割れてしまった。
「ああ！リガール…！ごめん！」
主は健在だった…いや…更に強くなっていた。
最初より数十倍以上の強さを感じた。
「へぇ…人間風情がアレに耐え切るとは…面白いね！」
先と違ってしっかりと喋って…理性もあった。
冗談がキツすぎる…。
なにこの馬鹿げた力の感じは……どうにかなるレベルじゃない。
例えるなら…赤ん坊とニミッツ級空母と戦争をするようなもんだった。
その圧倒的な力の差に…意思が折れそうになった。
「ふーん…人間…お前達が核を壊してくれたか？…おかげで力も意識も戻って自由になれた…」
主は胸元に残った核の残骸を払ってから殺気を込めた冷たい視線で僕達を見つめていた。
「殺気丸出しのお礼…あまり嬉しく無いわね」
「お姉ちゃん…ハルトさん」
双子も本能的に敵う相手ではないと分かったか絶望的な表情だった…。
でも、諦める訳にはいかない！僕はもう挫けないと決めたんだ…二人を守るんだ！！
僕は立ち直っては主に向かい立った。
「ん？お前から先に死ぬ……」
その時…何故か主の凄まじい殺気が消えて僕をただ呆然と見つめているだけだった。
攻撃して来る素振りもなく…急におとなしくなった。
「あ…あ……あっ！」
「ん？…あ？」
主は奇跡を目にしたように呆然とした顔で何かを求めるように…幻を掴もうとするように…手を差し伸べて僕にゆっくりと近づいて来た。
ごっくり…来るか！
「あぁ…そんな！お、お……」
なに？お？お？？
「ぅぅ…おにぃぃちゃんーー！」
…………えっ？
「本当に帰って来てくれた！おにぃちゃぁーん！」
はっ？何を言ってる？
最深部の主が僕に抱き付いて来て泣いていた…。
僕はこの状況を飲み込めずにただ固まってしまった。
