16話 その2
ナズーラ村の冒険者ギルドでおじさんが憂鬱そうに依頼書を整理していた。
「坊主が居ないとつまらないのは分かるが……」
受け付けの前でイリヤとリリヤがおじさんをずっと睨み続けている。
「おじさん!いい加減にハルトがどこに行ったか言いなさいよ!」
おじさんはイリヤの刺々しい質問に困った表情とため息をした。
「この三日間…ずっと…ふぁ……あのな…嬢ちゃん達は信頼してるが…方針上それは出来ん!冒険者の端くれなら分かるよな…」
「…ふん!」
例え同じくギルド員同士でも依頼の詳しい情報は教えられない…。
イリヤもそれを分かってるが飲み込めずに拗ねている。
「お姉ちゃん…ハルトさんならきっと大丈夫だよ…信じて待ちましょう」
リリヤはそう言ってお茶を啜っていた。
でも…その顔は寂し気な表情をしていた。
「はぁ~そうね…あいつはきっと…元気で女の子に囲まれてニヤニヤ青春満喫してるかもね…ふん!」
バッキッ!
「…………」
リリヤのティーカップの取っ手が折れた。
「オホホ…最近の焼き物は脆いね…不良品かしら……(やばっ!地雷踏んだ!)」
イリヤは焦りながらリリヤがこぼしたお茶と濡れたテーブルを拭いていた。
リリヤは只ならね雰囲気で受け付けに向かっておじさんの前に出た。
「おじさん……」
「ん?…な、なんだ?」
「依頼をしたいんですが……」
「は?ど、突然だな…何の依頼だ…?」
リリヤは真剣な顔で依頼書を作成ながらおじさんに詳しい内容を伝えた。
「そうですね…まずハルトさんの日常…一日中何人の女性と会ってどんな関係か…どのような事やったか…何時間一緒いたか…親密度、相手の名前、年齢、家族構成、血液型!を調べて下さい…依頼料は金貨300枚!!…必要経費負担で!」
ドーン!!
リリヤはバックから盛り盛り膨らんでる金銭袋を取り出した。
(この子の目…まじだ!…怖っ!それに姫さんより高額を出しやがった!)
おじさんは冷や汗を掻いて…益々困った顔になった。
「受けて貰えます?」
「う、ふむ…うちは冒険者ギルドだ…残念だが、そ、そ、そんな依頼は受け付けしないんだ」
「へぇ…とこに行けば調べて貰いますか?」
「知らない!自分で調べたら?」
闇ギルドならお金さえ払えばなんでもやってくれるがおじさんは諦めさせようと知らないふりをした。
「あっ!そうですね…自分で調べた方がきっと………手間が掛からなさそう…あっ!このお金は慰謝料で使います…ウフフ!ありがとう!おじさん!」
(手間ってなに!慰謝料?なにする気だ!ハルトぉ!この子まじヤバイぞ!)
「もう…リリヤたら…冗談、上手くなったな!」
イリヤはリリヤの背中をパンパン叩きながらぎゃらぎゃら笑った。
ハルトの居場所を教えてくれないからイタズラしていると思っていた。
「ウフフ!!……はぁ?何言っての?本気に決まってるじゃん…もうお姉ちゃんたら…」
「……あぁ、そう?…そうか…本気なんだ」
イリヤは姉として妹の豹変に複雑な気分に落ちた。
ドカァァーン!
その時、爆音と共にギルドが揺れた。
「きゃっ!今のなに?」
「地鳴りじゃないな…この衝撃音の方角は村の外…森辺りだ…ギルドからの依頼だ!足が速い嬢ちゃん達は先に調査を頼む!」
「リリヤ行こ!」
「分かった!お姉ちゃん」
双子は調査の為に爆音がした場合へ向かった。
.
.




