if 二つの幸福が重なる場所①
『172.愛している』からの分岐ルートになります(二回目)
両手に花ルートになるのでご注意を。
イルミネーションの輝きが、俺たち三人の影をくっきりと映していた。
冷たい空気を肺いっぱいに吸い込み、震える唇を無理やり動かした。
「俺は、答えを出した。一人を選んで、もう一人を失う……それが正しい選択なんだってずっと思っていた。でも、それは違う」
葵と瞳子が驚きに目を見開く。
二人は予想に反する答えに、どんな感情を抱いたのか。けれど、まずは俺の気持ちを全部言わなきゃならない。
「……俺には、前世の記憶がある」
俺は前世のこと、タイムリープしてからの自分のことを話した。
知っていた葵は静かに、初めて耳にしたはずの瞳子は意外にも穏やかに事実を受け入れてくれた。
どうやら瞳子は俺と葵に前世があるという話を聞いてしまっていたようだった。そのうえで受け入れてくれたのだ。
それならいい。後は俺の答えを口にするだけだから。
「前世で後悔ばかりだった俺が、今世で得た一番の宝物は、二人と過ごしたこの時間だ」
俺は一歩、前に踏み出す。
「瞳子を愛している。そして、同じように葵も愛しているんだ。どちらかを切り捨てるなんてできない。片方を諦めることが誠実さだというのなら、そんなものは捨ててやる」
俺は左右に立つ瞳子と葵の手を、それぞれ強く握りしめた。
「身勝手で、傲慢な願いなのはわかっている……。それでも、俺は二人と一緒に幸せになりたい。葵と瞳子、どちらかが欠けた未来なんて俺には想像できないんだ。法が、世界がそれを許さないというのなら、俺がそれを許される場所を作る。二人を一生守り抜くから、俺を信じてほしい」
言い切って、息を吐く。
この短い言葉を口にするのに、とてつもない力が必要だった。脱力しそうになる体を叱咤して、葵と瞳子を見つめる。
しばらく静寂が続いた。その間にマイナスな想像ばかりが浮かんできて、俺をこれでもかと不安にする。
「……本当に、救いようのない欲張りさんね。でも、俊成が選べなくて泣きそうな顔をしているのを見て、少しだけ安心している自分がいるわ」
最初に口を開いたのは瞳子だった。俺の手を優しく包み込んでくれる。とても暖かくて、安心感を抱かせる。
彼女の青い瞳には、呆れたような、それでいて深い慈愛の色が浮かんでいた。
「トシくん……」
葵が俺の手をぎゅっと握り返してくれる。その手は、驚くほど熱かった。
「私も、瞳子ちゃんがいない世界でトシくんと二人きりになっても、きっとどこかで彼女を探しちゃう。私たち、三人で一つなんだもんね」
瞳子と葵は顔を見合わせ、俺に向き直った。
「俊成ったら仕方ないわね」
「トシくんはしょうがない人だね」
二人の答えは、相談せずとも同じのようだった。
重なる声が、俺の心を震わせる。
「「私たちを一生離さないって覚悟、できてる?」」
胸が、熱くなる。
俺にとって、二人との時間が宝物だ。
だけど、それは俺の独りよがりなものじゃない。葵にとっても、瞳子にとっても、この三人で過ごす時間こそが宝物だったのだ。
「ああ、もちろん。絶対に離さないからな!」
力強く頷き、二人の感触を確かめる。
夢でも幻でも、前世という過去でもない。
葵と瞳子はここにいて、俺との未来を約束してくれた。
だから、俺がやることは一つだけ。たった一つを守り抜くために突き進むだけだ。
──三人で幸せになる。その願いを叶えるためなら、俺はどこまでも強くなれる気がした。
「瞳子、葵、二人ともありがとう……愛してるよ」
「あ」
「んっ」
二人の手を引き、両手を広げて受け止める。
宮坂葵と木之下瞳子。どちらも美しく強い女性だ。
ただ可愛いだけじゃなく、たくさんの面を持っている。強いところも弱いところも、二人の好き嫌いやこだわりだって知っている。
そうしたことを知ることができたのは、俺たちが幼馴染だからだ。
幼い頃からの思い出があり、どんな風に成長してきたかを間近で見てきた。
だからこそ愛情が育まれてきたのだ。それは大きく育ちすぎて、切り捨てるなんてできないほどに。
「俊成……」
「トシくん……」
きっと、それは二人も同じだったのだろう。
鼓膜を震わせる甘やかな声が、瞳子と葵の感情を明確に表していたから。
「……あのさ」
二人の耳元で声を振り絞る。
ここまできて勇気を奮い立たせることがあるのかと思われるだろう。だが、あるのだ。今日という日を最高のものとするために、大事なことが。
「トシくん?」
「俊成?」
体を強張らせている俺に気づいたのだろう。二人が心配そうに顔を覗き込んでくる。
ええいっ! 気持ちは確かめ合ったのだ。こんなところで固まってどうするんだよ!
俺は二人の目を見つめて、言った。
「夜景の綺麗なホテルを予約してあるんだけど……行く?」
葵と瞳子が驚きに目を見開く。
「「うん!」」
そうして、その意味を知ったうえで、彼女たちは満面の笑みで頷いてくれたのだった。
二人と手を繋いで歩く。まるで幼い頃に戻ったかのようで、でも確かに変わった関係を確かめるかのように深く握り、絡ませ合った。
──その夜、俺たちの運命は一つに溶け合った。
次回はエピローグ的な…(予定)
あと『B型女子はとっても可愛い』という短編ラブコメを投稿しました(報告)
https://ncode.syosetu.com/n8843lv/




